日本専売公社という言葉をご存知でしょうか?1985年に民営化された現在のJT(日本たばこ産業株式会社)です。実はこの会社の大株主は政府になっています。
正確にいえば、財務大臣が約37%の株式を保有しており、同じような企業を調べてみると「INPEX」の銘柄が出てきました。こちらは経済産業大臣が、筆頭株主になっています。今回は政府が保有している銘柄は長期保有に向いているかどうかについて、紹介していこうと思います。
INPEX(1605)
株式会社INPEX(インペックス)は、埋蔵されている原油や天然ガスの調査から販売まで一貫して手がける企業です。具体的には、資源を見つけるところから始まり、その埋蔵量を調査、更に生産体制を整えている会社になります。
また掘り出した原油や天然ガスを取引先に販売し、エネルギー業界の一連の流れを全て行っており、近年は、アジアとオセアニア地域での開発と供給強化に取り組み、新たな需要の開拓を進めています。
2023年6月現在の株価は約1600円になっています。過去1年間の株価を見ると、1300円から1600円の間で推移しており、大きな変動はなく安定した印象です。前述の通り、筆頭株主は経済産業大臣で、2023年6月時点で約21%を保有しています。
INPEXの株主優待
株主優待の内容は変更される可能性もありますが、12月の年1回の権利確定月になっています。400株以上、かつ1年以上保有している株主にQUOカードが贈呈されます。例えば400株以上を1年以上保有している場合では年間1000円相当となりますので、詳しくは下記のイラストをご覧ください。
また100株以上保有で、新潟県直江津にあるLNG基地の見学に申し込みができます。こちらの優待は6月と12月の年2回実施されています。
株主優待の注意点
購入単元数は100株からですが、QUOカードが受け取れる優待は400株ですので、ご注意ください。
INPEXの利回り
配当金がもらえる基準日は6月と12月の年2回です。前期の2022年には6月の中間配当は30円、12月の期末配当も32円で年間62円となっていました。今期の中間配当は32円と予想されており、期末も同様で年間64円の増配になる見込みです。
例えば1株1600円で100株購入した場合、投資資金は16万円ほど必要となり年間で受け取れる配当金は6400円になり、配当金のみの利回りは約4.0%になります。株主優待を加味した総合利回りでは、400株1年保有の場合で約4.2%となり、3年以上保有している場合では約4.5%となります。
INPEXの将来性
INPEXは探鉱から生産、そして販売まで一貫して手掛けており、この分野の参入障壁が高く、安定した事業を行っている要素が大きい印象です。エネルギー需要が急速に増えているアジアとオセアニア地域で事業展開を進める機会に恵まれています。
株主の視点からも高い配当と2020年度から現在に至るまでの連続増配はとても魅力的に映りますので、長期保有で安定した株主還元を期待したい銘柄になります。
ネガティブな面を見れば、前期は2.3兆円の売上高に対して、今期は2兆円を割り込む減収の見込みです。大きな変動を見せない株価ですが、数ヶ月単位で小さな波がありますので、できれば1400円から1500円台の株価をターゲットに検討してみてはいかがでしょうか?
JT/日本たばこ産業(2914)
日本たばこ産業株式会社(JT)は、その会社名の通り、たばこ製品の製造・販売を手がける会社で、世界第3位のたばこメーカーです。昨今の日本のたばこ離れの影響を受けている部分もありますが、実は海外の売上構成比率が高く「海外たばこ事業」だけで、1兆5000億円と約66%を占めています。
またJTは、たばこ事業だけでなく、医薬品の抗HIV薬研究開発・製造・販売を行っています。一方で、加工食品事業も手がけており、冷凍食品や調味料などの製造・販売など、多種多様な製品を供給しています。
2023年6月現在の株価は約3200円になっています。権利月の翌月1月は2500円台でしたが、現在は約30%の株価が上昇しています。配当利率の高い銘柄は権利月の直後は暴落しやすいのですが、過去5年間の推移をみても、現在の株価はかなり高い水準に戻っている印象です。こちらも前述の通り、筆頭株主は財務大臣になっており、約37%の株式を保有しています。
JTの株主優待
大変残念ながら、2022年12月分で株主優待制度が廃止されました。それ以前は「冷凍うどんセット(10食分)」もしくは「冷凍お好み焼きセット(6食分)」が贈呈されていました。
JTの利回り
配当金がもらえる基準日は6月と12月の年2回です。前期の2022年には6月の中間配当は75円、12月の期末配当は113円で年間188円となっていました。今期の中間配当は94円に増額されますが、期末も同額予想となり年間188円と配当額は維持される見込みです。
例えば1株3200円で100株購入した場合、投資資金は32万円ほど必要となり年間で受け取れる配当金は18800円になり、配当金の利回りは約5.9%になります。株主優待はないもののかなりの高利回りの銘柄になっています。
JTの将来性
JTはたばこ事業で世界約130カ国以上でビジネスを展開しており、安定した収益を生み出す構造を持っていることが特徴となっています。ただし、たばこ事業は規制環境の影響を受けやすく、製品に対する健康への懸念や、ニコチン製品に対する規制強化など、ビジネスに影響を及ぼす可能性があることも留意しておかなければなりません。
一方で、医薬品や加工食品の製造・販売の分野など、多様な事業展開を行っており、たばこ市場の変動に対する影響を緩和する一面を持ち合わせています。
高い配当を継続的に株主還元してくれている点は魅力的な要素になりますが、直近の株価の高騰が一時的なものなのか、それとも継続的な上昇を期待できるのか、判断が必要になるかと思います。
まとめ
政府保有銘柄を投資対象として考える場合、その安定した経営と高い配当は長期保有に適していると言えます。特に今回紹介した2銘柄はその特徴を持ち合わせていますが、政府が財政の政策としてこれらの銘柄を売却する場合があり、その結果、株価が大きく動く可能性もあります。これらの銘柄を投資対象とする際には、定期的にニュースをチェックし、需給面の動向には留意する必要があるでしょう。