日本の5大商社と「三菱商事」「三井物産」「伊藤忠商事」「住友商事」「丸紅」ですが、投資家の間では今年に入り、特に注目されています。投資の神様ウォーレン・バフェット氏がこれらの商社への投資比率を上げることを表明し、2023年6月現在、株価を押し上げています。今回は、特に投資初心者には押さえておきたい「三井物産」と「伊藤忠商事」の2つの銘柄について、解説していきます。
三井物産(8031)
三井物産株式会社は、日本を代表する大手総合商社で、様々な商品やサービスを取り扱っています。具体的には、エネルギー関連(石油や天然ガスの販売)、金属関連(鉄やアルミニウムなどの金属資源の確保から販売)、化学品(プラスチックや化学薬品の輸入製造)、機械(自動車や家電など輸出入)、食品や小売、ICT(情報通信技術)など、16の事業本部から成る会社組織となっています。
我々の衣食住の中で、三井物産の名前を聞く機会はあまりないかもしれませんが、例えばスーパーで見かける「日東紅茶」なども、子会社を通して三井物産が製造から消費者への提供に関わっていたりします。
2023年6月現在の株価は約5700円になっています。今年の年初は約3800円台でしたが、現在に至るまで約50%の株価上昇となっています。過去1年間でも大きな変動もなく推移してきましたが、ウォーレン・バフェット氏の追加投資の表明と、日経全体の株価押し上げの影響で、5月以降から急激に株価を上げてきています。
三井物産の株主優待
残念ながら三井物産は株主優待を行っていませんが、その代わりに一定の配当を支払う方針を継続しています。
三井物産の利回り
配当金がもらえる基準日は3月と9月の年2回です。前期の2022年には9月の中間配当は65円、3月の期末配当も75円で年間140円となっていました。今期の中間配当は75円、期末も同様で年間150円の見通しになっています。
例えば1株5700円で100株購入した場合、投資資金は57万円となり年間で受け取れる配当金は15000円になります。株主優待制度はないので、配当金による利回りは約2.6%になります。現在の株価急騰の影響で、配当利回りは芳しくない印象ですが、年初の株価基準(3800円)ですと3.9%を超えてきます。
三井物産の将来性
三井物産は、特にエネルギー・メタル・ICT等の領域など、高い需要が見込まれる市場に注力しており、2021年度(2022年3月)より売上規模は全体で10兆円を超えてきています。また食品分野や小売分野など、様々な事業領域を持っている点も、予想できないリスクを補える可能性が見込めます。
前期の売上高も14兆3000億円と好調な実績を出しているため、この規模感をどれだけ継続できるかがポイントになってきます。元々は配当利率も3%から4%で推移しており、また連続で増配を繰り返している点からも、投資対象としてはとても評価できる点ではないかと思います。
伊藤忠商事(8001)
次に、伊藤忠商事株式会社について紹介していきます。こちらも日本を代表する総合商社で、全世界にわたって、繊維から機械、金属、エネルギー、化学品、食料、生活関連商品、情報技術、金融といった多岐にわたる産業領域で幅広くビジネスを手掛けています。
食品分野では果物の「Dole(ドール)」、ミネラルウォーターの「エビアン」など海外製品を、我々の食卓に安定した提供を行っています。最近話題の「ユーグレナ」も食品としてだけでなく、燃料として取り扱っています。
2023年6月現在の株価は約5600円になっています。こちらも今年の年初の4000円から見ると、約40%の株価上昇を示しており、市場の影響とともに企業の収益力と成長力が評価されています。
伊藤忠商事の株主優待
伊藤忠商事も残念ながら株主優待を行っていませんが、連続増配で安定した配当金を提供してくれています。
伊藤忠商事の利回り
2022年度の配当金は、9月の中間配当が65円、3月の期末配当が75円で、年間140円でした。2023年度の予想では、中間配当と期末配当が共に80円で、年間160円の増配の予想となっています。
1株5600円で100株購入した場合の投資資金は56万円です。その投資金額に対して年間で受け取ることのできる配当金は16000円となります。株主優待制度はないので、配当金による利回りは約2.9%になります。
伊藤忠商事の将来性
伊藤忠商事も、総合商社としての強みを活用して、幅広い産業で事業を展開しています。エネルギー分野では再生可能エネルギーへの投資を増やすことで、企業としての収益源を確保している点や、また医療分野に注力している点が大きくなっています。
世界的に見ても、高齢化社会の進行に伴うヘルスケア需要の増加は明らかで、医師向けのプログラムや患者とのコミュニケーションツールの開発など、DX(デジタルトランスフォーメーション)事業に積極的に取り組んでいます。
売上高も前期より10兆円規模を超えて来ています。利益の面では今期は前期と比べて減益が見込まれていますが、連続増配を行っている点も大きな魅力となっています。
ただ配当利回りの面では平均して3%台だったところが、直近の株価高騰の影響で2%台に落ち込んでしまっています。現在は特にバフェット効果と原油価格と穀物価格の高騰で、株価を押し上げていますので、投資のタイミングには見極めが必要になるかと思います。
まとめ
今回は2つの商社の銘柄を紹介しましたが、いかがだったでしょうか?売上高、収益性、事業内容などでどちらも似通っている部分はありますが、長期保有するにはその将来性の見極めが必要になってきます。
強いて言えば、三井物産の方が、売上高が高く、収益性の面で効率のいい事業展開をしていることがうかがえます。一方、伊藤忠商事は、配当の面で投資家への還元率(配当性向)が高くなっていますので、これらの要素を総合的に検討してみていただければと思います。