著者は疲れた時にすぐに飲めるように、冷蔵庫にアリナミンを常備しています。アリナミンと言えば武田薬品の印象だったのですが、2021年に海外ファンドに2420億円で売却され驚きました。今回は「ポポンS」などでも有名な「塩野義製薬」と「武田薬品」の2銘柄の手堅さや将来性について解説していこうと思います。
武田薬品工業(4502)
武田薬品工業株式会社は、日本の大手製薬メーカーで、2023年現在、国内売上高では1位、世界の医薬品企業では売上高9位を記録しています。元々は1781年に大阪で近江屋長兵衞氏によって始められた和漢薬の商売が起源となっています。主力製品は「エンタイビオ」で、主要な研究領域は消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー、ニューロサイエンスの5つになっています。
本社は大阪市中央区にあり、新薬の研究開発にも積極的に行なっています。海外売上高の割合は63.8%であり、この数字も国内トップです。欧米やアジアに広い販売網を持っており、M&Aを活用して業績を拡大しています。
2023年10月現在の株価は、約4500円となっています。2021年頃は下降していき3000円台まで落ち込みましたが、2022年より徐々に上昇。現在は過去数年間の高値圏に位置し、回復傾向にあります。
武田薬品工業の株主優待
個人投資家にとってはささやかな楽しみである株主優待ですが、残念ながら武田薬品工業では行っていません。
武田薬品工業の利回り
配当金がもらえる権利月は3月と9月の年2回です。前期の9月の中間配当は90円、期末も90円、年間で180円となっていました。今期の中間配当は、前期より4円高い94円となり、期末も同額の94円、年間配当188円の増配となる見込みです。
例えば1株4500円で100株購入した場合、投資資金は45万円ほど必要となり、配当金は18800円になります。株主優待制度はないので、配当金による利回りは約4.1%になります。
武田薬品工業の将来性
2022年度の売上は初めて4兆円を超え、主力製品「エンタイビオ」の売上は7,020億円で、前年比15%アップし、武田薬品のトータル売上の約17%を占めています。 そして今期の業績予想では、営業利益は前期比28.8%減の3490億円になっています。これは製品の独占販売期間の終了やコロナウイルスワクチンの利益減少が要因と言われています。
また2019年にシャイアー社を6.2兆円で買収し、業界で最も多い借金を抱える状態になり、手元資金はマイナス3兆円といったネガティブポイントもあります。 シャイアー買収後の多額の借金と新薬の不足で、株価が低迷していましたが、前期より徐々に回復し、今期の年間配当は前期比8円増の188円と15年ぶりの増配を予定しています。
製品の面では、今期はアメリカで「ビバンセ」の特許切れ、日本で「アジルバ」の特許切れ、そしてコロナワクチンの政府購入終了の3つの試練が予想されています。 売上の大黒柱「エンタイビオ」は2032年まで安泰ですが、希少疾患向けの超大型新薬は現時点では見込みが期待されない点も指摘されています。
塩野義製薬(4507)
塩野義製薬株式会社は、大阪市中央区に本社を持つ製薬企業で、処方箋医薬品と一般用医薬品の研究開発、製造、販売を行っている会社です。 元々は1878年に大阪の道修町で創業者塩野義三郎が「塩野義三郎商店」を開業したことに遡ります。創業当初は和漢薬を取り扱っていましたが、西洋医学の普及と共に、1886年に洋薬専門の方針になっています。
1909年以降、自社の新薬「アンタチヂン」や輸入薬「サルバルサン」を販売の他、多数の製薬品を製造・販売してきました。さらに、アスピリンのライセンスを取得して「シオノアスピリン錠」として国内での製造販売も行っていました。
特に感染症薬の分野に強みを持ち、60年以上の研究開発の歴史があり、多くの感染症薬を提供してきました。抗コロナウイルス薬「ゾコーバ」の開発やコロナワクチンの開発にも取り組んでおり、抗HIV薬の特許切れ後も、自社医薬品による収益が期待されている企業です。
2023年10月現在の株価は、約6300円となっています。今年の年初は若干低迷しており、5800円台を推移していましたが9月の中間決算に向かって徐々に回復。現在は中間決算後の落ち込みが続いている状況です。
塩野義製薬の株主優待
残念ながら株主優待制度は塩野義製薬でも行っていません。
塩野義製薬の利回り
配当金がもらえる権利月は3月と9月の年2回です。前期の9月の中間配当は60円、期末は75円、年間で135円となっていました。今期の中間配当は75円と期末も75円の予定になり、年間では150円で増配の見込みとなっています。
例えば1株6300円で100株購入した場合、投資資金は63万円ほど必要となり、配当金は年間で15000円になります。株主優待制度はないので、配当金による利回りは約2.4%になります。
塩野義製薬の将来性
2022年3月期の売上高は約3,351億円、当期純利益は約1141億円と好調でした。製品ラインには日本でも有名な「ポポンS」や「セデス・ハイG」などがあり、世界中で利用されています。 近年の業績は増収・増益を続けていますが、2028年に特許切れを迎える予定で、抗HIV薬のロイヤリティが売上の大部分を占めていることから利益減少のリスクを抱えています。
この問題に対処するため、塩野義製薬は中期経営計画で「新製品/新規事業拡大」「COVID-19治療薬の成長」「HIVビジネスの伸長」の3つの柱を発表しています。 これらが成功すれば、主要なロイヤリティ収入に依存しない持続可能な収益構造を築くことができる見込みとなります。
長期投資をするうえで、目先の配当や利回りも、もちろん重要ですが、新しい治療法や医薬品を開発し続けるかがポイントとなります。
まとめ
今回は日本の有名な製薬会社を紹介しましたが、いかがだったでしょうか?「武田薬品」は、コロナ特需の落ち着いた事で利益減少の傾向になっています。シャイアー買収で決算的にはまだネガティブな要因は残っていますが、既存製品の売上が底上げした事で、増配への強気の姿勢を保っており利回りも4%を超えています。
一方、「塩野義製薬」は抗HIVを中心に今後もビジネスを伸ばしていく計画を発表しています。現在は2%台の利回りですが、連続増配が続いている事で経営の安定性が伺えますので、長期保有を検討してみてはいかがでしょうか?