私たちの生活の中で、あまり馴染みの薄い企業かもしれませんが、日本の産業を支える中核企業はたくさんあり、投資先としてもポートフォリオで欠かせない存在となっています。「日清紡HD」は繊維産業のリーダーとして、「信越化学工業」は化学分野での高度な技術を持つ企業としてそれぞれ異なる強みを持つ企業ですので、今回は2つの銘柄について紹介していこうと思います。
日清紡ホールディングス(3105)
日清紡ホールディングス株式会社(以後、日清紡HD)は、1906年に関西で紡績会社として誕生し、エレクトロニクス、ブレーキ、精密機器、化学品、繊維、紙製品、不動産といった多岐にわたる事業を展開する大手BtoB企業にまで成長しています。特に、無線・通信を中心とするエレクトロニクス事業や、世界トップクラスの自動車用ブレーキ摩擦材が主力の事業となっています。
また燃料電池セパレータや触媒の開発にも力を入れており、長年にわたる技術の蓄積を活かした「モビリティ」「インフラストラクチャー&セーフティー」「ライフ&ヘルスケア」の3つの分野で戦略的な事業展開を進めています。
2023年10月現在の株価は、約1090円となっています。6月の中間決算に向かって株価は1250円台まで上昇しましたが、その後は、比較的落ち着いた値動きになっています。
日清紡HDの株主優待
株主優待の内容は変更される可能性もありますが、2023年10月現在、権利確定月は12月の年1回になり、株主名簿に記録された1000株以上保有する株主に対し、自社製のクッキングシートの詰め合わせ(3000円相当分)が贈呈されます。もしくは環境保全の募金寄付(3000円相当分)を選ぶことが可能です。
日清紡HDの利回り
配当金がもらえる権利月は6月と12月の年2回です。前期の6月の中間配当は17円、期末も17円で年間では34円となっていました。今期の中間配当は、同額の18円期と1円増配の実績となり、年間配当では36円(年間で2円増配)になる見込みです。
例えば1株1090円で100株購入した場合、投資資金は10.9万円ほど必要となり、配当金は3600円になります。配当金による利回りは約3.3%になり、株主優待を含めた総利回りでは、約3.6%となります。
日清紡HDはやばい!?将来について
日清紡HDの株式がやばいと言われた理由ですが、平均年収は720万円で、一般の平均年収440万円に比べて非常に高いことが原因です。業績の悪化も懸念されましたが、2020年には一時的に減収となったものの現在は業績が上向いている状況です。
また繊維メーカーとして長い歴史を持っており、エレクトロニクス、ブレーキ、精密機器、化学品、不動産など、さまざまなビジネス領域での事業を進めています。特に、エレクトロニクスや自動車関連のブレーキ摩擦材などの先端技術分野での取り組みは、成長の鍵として注目されている分野になります。
ただ一方で、繊維産業自体は多くの競合や競争で市場変動があり、経営環境は厳しい面もあります。そのため、日清紡HDは先端技術の開発と環境対応、そして事業の多角化を進めることで、新しいビジネスチャンスを探るとともに、持続的な成長を目指す方向性を進めています。また配当の面では2期連続の増配予定でありながら、40年間以上に渡って非減配株(「減配」をせず、「配当維持」もしくは「増配」している銘柄)である点も、長期等保有の面では大きなポイントと言えます。
信越化学工業(4063)
信越化学工業株式会社は化学メーカーとして、日本最大の規模を誇っています。主要な製品として、「塩化ビニール樹脂」や、自動車からヘルスケアまで幅広く使われる「シリコーン樹脂」、そして先端技術分野で不可欠な「シリコンウエハー」と「レア・アースマグネット」を取り扱っています。特に「シリコーン」においては国内トップシェアを保持しており、耐熱性や耐候性、電気絶縁性などの特性から、様々な産業で幅広く使用されています。
また事業の領域としては、「生活環境基盤材料事業」、「電子材料事業」、そして「機能材料事業」という3つの主要セグメントを中心に置いています。海外へのビジネス展開も積極的で、全販売の約74%をグローバル市場での販売が占めています。2021年度の営業利益は約6,763億円を計上し、国内の化学メーカーとして首位の地位を維持している企業です。
2023年10月現在の株価は、約4250円となっています。今年の年初頃は3200円台で推移していましたが、ゆっくりと株価を上げてきています。2023年1月には1:5の株式分割を発表し、必要額は5分の1に減少し一時的な買いが集中した点も部分的に影響しています。
信越化学工業の株主優待
現在、信越化学工業は株主優待制度を行なっていません。
信越化学工業の利回り
配当金がもらえる権利月は3月と9月の年2回です。今期の中間配当は50円で、期末も同額の50円の予定になり、年間で100円の見込みとなっています。株価分割の調整を反映すると前期と同額になります。
例えば1株4250円で100株購入した場合、投資資金は42.5万円ほど必要となり、配当金は年間で10000円になり、配当利回りは約2.6%になります。
信越化学工業の将来性
信越化学工業は、特にシリコーン樹脂やシリコンウエハーの分野で顕著な技術革新を進めており、半導体産業など様々な分野において中心的役割を果たし、更に今後の需要増大が予測されます。
また世界各地に強固な販売ネットワークを持っており、特に海外市場でのビジネス展開を積極的に進め、さらなる市場を拡大できる伸び代を持っています。
ただし、世界経済の動向や貿易の状況など、為替や原料入荷と言った影響を受けやすい側面も持ちあわせているため、外部環境の変化に適切に対応する戦略が不可欠になります。
配当の面では前期と同水準の維持ですが、日清紡HDと同様こちらも40年間以上に渡って非減配株である点も投資ポイントになります。
まとめ
今回は「日清紡HD」と「信越化学工業」を紹介しましたが、いかがだったでしょうか?両銘柄とも40年以上に渡り非減配銘柄で長期保有に適した企業の印象です。ただし「信越化学工業」は株価分割後も、高値水準で推移していますので、現在の株価では割高感が否めません。今期の12月決算の業績に注目しながら検討してみてはいかがでしょうか?