日米金利差ほか「原油高」も円売り促す
9月26日にドル円は昨年10月以来、11か月ぶりとなる149円台まで上昇しました。同局面2022年の円安・ドル高水準以来の150円回復も視野に入ってきたともいえます。
日銀の金融緩和解除の思惑が高まった場面もありましたが、依然として経済がソフトランディングしつつある米国のタカ派的な側面を残す金融政策と方向性に差異があります。日米金利差が縮まりにくいところが円安・ドル高の方向性を生み出しています。
加えて原油を輸入に依存する日本にとって、「原油高」も円安を推し進める大きな要因になります。ドル建てで取引される原油の支払い額増加にともない、外貨を調達するためのドル転(ドル買い・円売り)が増えることになります。
原油価格は昨年5月に63ドル台で近年の底を打ち、94ドル付近へ上昇してきました。2022年3月に一時130ドル台と、2008年につけた史上最高値147ドル台も意識させた勢いと比較すればまだ可愛い水準と思う方もいるかもしれませんが、インパクトとして約1.5倍もこの面でのドル買い・円売り需要を増やしたことになります。
原油高の背景は米経済がまさにソフトランディングしようするなか、需要ひっ迫への懸念が高まっていること。米原油在庫の取り崩しペースが速まっているとの指摘もあります。そしてサウジアラビアやロシアが年末までは自主的な追加減産を継続する方針を示しているという供給側の要因も材料になっています。
「原油高」由来の円安が介入のツボ刺激するリスク
「原油高」は円売り・ドル買い需要の増加を促すほか貿易収支の悪化を招き、貿易黒字がかさんだ際に強まる外圧による円高催促といった圧迫感を高めにくい面もあります。ドル転需要やその他ファンダメンタルズに沿った円売りを進めやすくします。
そして原油相場の動向はリスクセンチメントのバロメーターとみなされることもあります。原油相場にカナダドルや豪ドルほか、エネルギー輸出国を中心とした資源国通貨の推移が連動。「原油高」にともないカナダドル円や豪ドル円などクロス円が上昇して円売りを誘うきっかけになったりします。
タカ派ムードを残す米金融政策を受けた日米金融政策の差異や、「原油高」・収支悪化による円売りから、ドル円はすでに昨年9月に最初の円買い介入が実施された145円台を突破。同年10月にドル円が152円台に近づいたところで再び介入を行った水準にはまだ若干距離感はあるものの、多くの人が介入の節目として強く意識している150円に迫っています。
予断を許さない状況のなか米金利動向を中心としたドル買い・円売りだけでなく、「原油高」を受けてゴトー日(5・10日)仲値などにドル高・円安を余儀なくされる状況が重なって介入のツボともいえる150円を刺激し、為替が荒っぽく振れるリスクを警戒しておくべきでしょう。