「イエレン発言」けん制で、156円台まで再び円安・ドル高に
イエレン米財務長官による円買い介入へのけん制で、「政府・日銀は介入が困難になった」とみられています。米物価動向の落ち着きを反映して円安・ドル高の流れも落ち着き始めていますが、再び円安が強まるリスクも想定し、「イエレン発言」や本邦当局の反応を注視する状態は続きそうです。
5月13日、イエレン財務長官が通信社のインタビューにおいて為替介入について「まれな行為であるべき」「他国への伝達必要」と述べました。これにより、マーケットで本邦通貨当局が主要な貿易相手国である米国の許可を得ず安易に円買い・ドル売り介入を実施しにくくなったとの見方が強まりました。
これ以前も同4日、「比較的短期間にかなり動いた」と述べ、為替のボラティリテ(変動率)の過剰な高まり抑制に理解を示しつつも、「介入はまれであるべき」と同様の発言をしていました。1ドル=160円超えまで進んだ円安のさらなる進行を食い止めた4月29日の円買い介入に加えて、5月1日にも円買い介入の追撃を行ったことに釘を刺したと受け止められたようです。
本邦通貨当局が為替介入を行いにくくなったとの見方から、円の売り戻しが進みました。14日には、介入があった1日以来の156円台まで円安・ドル高が進んでいます(図表参照)。
円安一服も、再燃リスクあり引き続き「イエレン発言」注視
「為替介入はまれであるべき」との考え方は、ここ最近イエレン氏が為替介入へ頻繁に言及し始めた先月以来、ことあるごとに触れられていた言葉でもあります。ただ当初、今回の円安局面で最初の介入が行われた4月29日以前の25日には、為替介入は非常にまれであるべきとしつつも、「例外的な状況でのみ許容される」と、実施の可能性にも含みを持たせて語られていた感があります。
160円台まで進んだ円安・ドル高の抑制には一定の理解を示していたと思われます。しかし、「まれ」とはいえないダメ押しの介入追撃はやり過ぎと受け止められた可能性があります。
もっとも、14日に4月米卸売物価指数(PPI)が前月で市場予想を上回って156円後半へドル円が上振れた直後、前回3月分の数値が下方修正されたことでインフレが一定の落ち着きを示し始めたことを1つのきっかけに、ドル円はいったん頭打ちとなっています。米利下げへの意識が再び高まったことが押し下げ要因となりました。
13日のインタビューでイエレン長官は「異なる金融スタンスは為替レートに影響する」とも述べていましたが、日米金利格差が縮小するとの見方がドル円相場に影響した格好です。加えて「通貨は市場で決定されるべき」としていましたが、介入ではなく市場の自然な流れに沿って円買い戻し・ドル売りが進んだことになります。
このまま円買い戻しが進めば、本邦政府・日銀も一安心といったところでしょう。ただ、縮小へ向かうとしても依然として日米金利格差は大きいまま。円の先安観が根強く残る可能性も捨てきれません。
再び円安が進み始めた場合、「イエレン発言」によるけん制で円買い加入へ動きにくい本邦当局。円安再燃となった場合の「イエレン発言」、政府・日限の反応を注視することになります。