「IMMポジション」円売りめどは10万枚超
為替マーケットの流れを把握する上で、IMM通貨先物の投機筋ポジション「IMMポジション」の動向が1つのヒントになります。IMM市場(International Monetary Market/国際金融市場)は、シカゴマーカンタイル取引所(シカゴ商業取引所、CME)の1部門で、金利・株価指数などとともに、為替の先物取引が行われています。
売り圧力が強まっている円の通貨先物も上場されており、統合通貨となりマーケット規模を拡大したユーロに次いで活発に取引されています。ここ1年の「IMMポジション」の動向からすると、1取引単位(枚);1250万円の円売りポジションと円買いポジションの差し引き(ネット)で、円売りポジョションが10万枚を超えたところで円売りの積み上げが一巡する傾向にあります(図表1 ※)。
※ネットポジョションのマイナスは、実需の裏付けのない投機筋の売買における差し引きの円売りポジションの量を示している。
145円台に差し掛かった足もとの円売りポジションは8万枚超。ここ1年ほどで円売りポジションが10万枚を超えたのは昨年11月頃、ドル円がそれ以前の112円台で上値が抑えられやすかった状況から、112円台をレンジ下限とする底堅い状態に移行した時期。そして、4月から5月にかけ2002年4月以来、20年ぶりの高値131円台をつけにいった局面です。現在の8万枚から、10万枚へ届くまでには、「IMMポジション」における円売りのネットポジション量からすれば、マーケットはまだ円売り余力があると考えることができます。
ただ、本邦通貨当局が24年ぶりの円買い介入を行い、円安進行に歯止めを掛けようとしており、より一層の円売りをためらわせている面があるようです。財務省が9月30日に発表した8月30-9月28日分の為替介入実績によると、過去最大規模となる2兆8382億円の円買い介入が実施されたことが明らかとなっています。
IMM市場で活躍するCTA(商品投資顧問)
「IMMポジション」は、アメリカの商品先物取引委員会(CFTC)によって、同週火曜時点のポジション情報が毎週末に発表されます。為替先物は金融マーケットの先物ですが、アメリカの先物のルーツとなる商品相場市場を管轄するCFTCが、債券や為替など金融に関する先物も含めて監督しています。そのため、為替も含めた金融先物マーケット参加者により報告された内容が、CFTCから公表されるのです。
シカゴIMM市場で活発に売買を繰り広げるマーケット参加者として知られるのが、CTA(Commodity Trading Advisor、商品投資顧問)です。呼称からすれば商品相場専門の投資顧問と捉えられそうですが、これは管轄組織のCFTC同様に商品相場に限らず、先物であれば為替や債券、株式指数も含めた取引に携わり、利益追求を行う機関投資家のことです。シカゴIMM市場で売買するCTA筋を、IMM筋、シカゴ筋と呼ぶこともあります。
海外の先物市場では、現物の受け渡し期限の近い期近限月が売買の中心で、ポジションを持ち越す期間は比較的短めです。そのためCTAはチャートなどテクニカル分析を駆使した短期売買を積極的に行う特徴があります。チャートポイントをブレイクした場面で、CTAがリード役となって先物価格だけでなく、関連した現物市場(為替ではスポット市場)の値動きが加速する連動性も観測されます。
マーケットの縮図「IMMポジション」
こうしたCTA筋が活躍するIMM市場の動向を通じた相場判断として、ポジションの積み上がり具合によって、将来ポジションを解消するための反対売買が強まることを予測する方法があげられます。円先物に関していえば、先ほども触れた「円売りポジションがめどとなる10万枚を超えたところでは、ほどなく円買い戻しが強まる可能性が高い」などです。
一方で「IMMポジション」の流れをマーケットの縮図と捉える向きもあります。ポジションが積み上がっている最中は、まだトレンドが持続しているとする考え方などがあげられます。ここもとの積み上がり限度めどとされる10万枚までまだ売り余地がある円先物の現状からすれば、「IMMポジション」ウォッチャーは、まだ円売りが進む展開を想定しているでしょう。CTAが円売り余地を埋めにいく圧力と、本邦通貨当局の円買い介入、どちらに軍配が上がるか注目しましょう。