日銀マイナス金利解除、異次元緩和からの脱却へ
3月19日、日銀は2007年2月以来、約17年ぶりに政策金利の引き上げを決定しました。銀行など金融機関が日銀に資金を預ける当座預金の一部に適用していた金利-0.1%を0.00-0.10%に引き上げることになりました。
いわゆるマイナス金利解除のほか、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)撤廃や、上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(REIT)の買い入れ停止などリスク資産買い入れの枠組みも変更。黒田前日銀総裁の任期中から11年ほど続いた異次元緩和を脱却する方向へ転換しました。
マイナス金利解除決定を前にドル円はタカ(金融引き締め)派方向への政策変更を見据えて円高推移となり、2月2日以来の円高・ドル安水準146円半ばまで売られました(図表1参照)。ただ、その後はマイナス金利が解除されてからも緩和的な金融環境が続くとして見直しが入り、円売り方向へ揺り戻されました。
さらに米連邦準備理事会(FRB)による利下げ開始時期の前倒しが回避との見方が濃厚になるにつれてドルが強含み、上値の節目だった2月28日高値150.85円を上抜け。151円台まで年初来高値を更新しています。
円買い先行後、昨年11月以来の円安・ドル高水準の動きへ転じたドル円相場の流れを鑑みれば、想定される政策変更などを織り込んだ後は、材料出尽くしによる反動の動きを見越しておくべきという「噂で買って(今回の場合は円買い)事実で売る」との格言がまさに当てはまる状況だったといえます。
「噂で買って事実で売る」折り返しで、テクニカルポイント突破を目前で回避
テクニカル面でも、今回のマイナス金利解除へ向けた当初の流れのなかで、前回分の本コラム「『確度』高めた日銀タカ派政策がドル円チャートポイント突くか」で指摘したドル円のテクニカル面のクリティカルポイントといえた2月1日安値145.88円(図表2参照)の下抜けを回避できたことも重要です。
もしここを割り込んでいたとしたら、押し目を買っていったん150円台まで利が乗ったポジョションを手放す投資家の投げ売りが加速して、相場が急落するリスクもありました。相場急落後に今度は同レンジが戻り売りの目安となるような水準になることも回避できました。ここから折り返したことで、逆に146円を挟んだレンジ前後の底堅さが確認できる格好にもなりました。
植田日銀、緩和的な金融環境を維持へ
考えてみれば、植田総裁は黒田日銀総裁時代の大きな副作用をともなう異次元緩和に否定的であった一方、安定的な物価上昇継続が確信しきれない状態において拙速に引き締めを進めることには慎重でした(2023年12月20日の本コラム第75回「『チャレンジングな状況』肩透かし、日銀マイナス金利解除を急がず?」参照)。マイナス金利解除へ踏み切ったとしても、緩和的な金融環境を継続することは想定内だったともいえます。
緩和的な状況が続くのであれば、一定の円安地合い維持に寄与しそうです。米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ開始時期も見計らいつつ、ドル円が行きつく水準を探る局面が続きそうです。