米利上げ「織り込み度」に一喜一憂
米国の中央銀行である米連邦準備理事会(FRB)は、現地7月26-27日に金融政策決定会合にあたる連邦公開市場委員会(FOMC)を開催する。政策金利であるフェデラル・ファンド・レート(FF金利)の誘導目標レンジを、現行の1.50-1.75%から何%引き上げるかが市場の大きな関心事となる。実際の金利引き上げを控え、市場はFF金利先物の動向が、同日の何%の金利引き上げを前提とした水準に達しているか=利上げ「織り込み度」の数値に一喜一憂する状態となっている。
市場はフェドウォッチ注視
FF金利先物の動向から算出される織り込み度は、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のFedWatch Tool=通称;フェドウォッチとして、過去データも発表されている。これによると、7月に入った時点で2.25-2.50%(0.75%引き上げ)を8割以上織り込んでいた。リスクシナリオとして、1割強から2割弱の確率で利上げが2.00-2.25%(0.50%引き上げ)にとどまると意識されていた程度(図表1)。7日には96.9%まで0.75%の利上げを織り込んだ。
1%利上げ織り込みドル円は24年ぶり高値
ただ、翌8日からは0.75%の利上げ確率が92.4%に低下した一方、今度は利上げが0.50%にとどまる確率ではなく、サプライズとして2.50-3.00%(1.00%引き上げ)のさらに大幅な利上げが行われる可能性が7.6%となり注目され始めてきた。
そして13日、米労働省発表の6月米消費者物価指数(CPI)が前年同月比9.1%上昇と、8.8%程度を見込んでいた市場予想を上回り、およそ40年半ぶりの高い伸びを記録。FRBが積極的な金融引き締めを進めるとの見方が強まり、1.00%利上げの可能性を8割以上も織り込んだ。ドル円は米大幅利上げの見方を好感したドル買いが翌14日まで続き、同日夕刻には1998年9月以来、約24年ぶりの高値139.39円をつけた。
1%利上げ期待はく落でドル軟化
もっとも、14日NYタイムに入るとウォラーFRB理事の「7月は0.75%利上げが基本シナリオ」「市場は1.00%利上げに関してやや先走った可能性」との発言が伝わった。前日8割以上も織り込んでいた1.00%利上げの確率は45%程度へ急低下。代わって0.75%利上げの織り込み度が55%程度に回復した。
その後も、15日に米ミシガン大学が7月消費者態度指数(速報値)に併せて発表された消費者の期待インフレ率が5年先で2.8%と、前月の3.1%から鈍化。1年ぶりの低水準を記録したことが1.00%の利上げ観測を後退させた。同指標はFRBが6月FOMCで0.75%の大幅利上げを決めた一因とされており、この結果が米金融引き締め加速への過度な警戒感の緩和につながった。同日、ボスティック米アトランタ連銀総裁も、「0.75%利上げは大きな動きであり、FRBは移行が秩序あるものになることを望む」「あまりにも劇的な動きは経済を弱体化させ、不確実性が増す可能性」と述べ、1%利上げに否定的な見解を示した。利上げが景気を悪化させるリスクや、インフレ抑制に効き始めてくるとの見方が浮上してきた。織り込み度は1.00%利上げが30%弱へ低下、一方0.75%利上げが70%強に上昇した。
FOMCまで「織り込み度」にらみドル上下
ドル円は1%の利上げ期待という強い材料を織り込んでの上昇が失速し、いったん調整のドル売り局面となった。0.75%の利上げも十分なドル買い材料ともいえるが、思惑の強弱を背景とした投機的な動きも交錯して、ドル相場は来週のFOMC結果公表まで、タカ派(金融引き締め支持)な材料とハト派(金融緩和支持)の材料を反映した「織り込み度」をにらみながら上下する展開が続くだろう。