中国「ゼロコロナ」抗議で荒れたマーケットの行方は?
「ゼロコロナ政策」による中国政府の締め付けへの抗議行動が活発となり、世界の金融マーケットがリスク回避姿勢を強める事態となりました。管轄の衛生当局が29日に政策の調整や問題修正を示唆したことからリスク回避のムードが緩みかける場面もありました。
しかし、依然として「ゼロコロナ」政策の行方や、この問題に絡む中国以外も含めた各国経済の先行きには不透明感が漂っています。一気にリスク回避が強まったことに対する反動のような調整の動きは想定できます。しかし、問題を克服して、金融マーケットが本格的に立ち直るとは確信しにくい状態です。まだ、リスク回避の株安・商品相場安ほか、マーケットが中国「ゼロコロナ」政策の行方に翻弄される局面が続くでしょう。
「ゼロコロナ」影響のリスク回避、幅広くマーケット・各国経済を圧迫
「ゼロコロナ」抗議が強まったきっかけは、24日に同政策による交通規制が原因で、新彊ウイグル自治区ウルムチの高層マンション火災の救助が滞り、10名が死亡する事態が生じたことです。これまで強権的な規制が長く続いていたことへの不満も爆発する格好となり、上海や北京などの都市に抗議の動きが拡大しました。
治安悪化の広がりを嫌気して、28日には中国株・香港株が大きく下落。欧州・米国の株式市場でも売りの流れが続きました。安全資産とされる債券は買われ、金利は低下。米10年債利回りは10月5日以来、約2カ月ぶりの水準3.619%前後へ下振れました。
為替市場では、ドル円が米長期金利の低下も一因に8月29日以来、約3カ月ぶりの安値137.50円まで下落。ただ、マーケット全体としてはリスク回避のドル買いの動きもみられ、ユーロなど主要通貨はドル高・他通貨安の動きとなり下落。クロス円も円高・他通貨安となって、ドル円の下落は、このクロス円の円買いに引っ張られた側面も大きかったようです。
中国経済が減速するとの懸念や、各国経済へ与える悪影響でエネルギー需要が後退するとの観測から、原油価格は急落。NY原油先物は年初来安値となる73ドル台まで下げました。
その他の主要商品価格も幅広く低下。豪輸出の主力産品である鉄鋼石に関する中国の需要への不安は、豪ドルを押し下げる材料にもなりました。地理的にオセアニア地域は中国経済の影響を受けやすいこともあり、豪ドル円はリスク回避の円買いも重しとなって、前週末の94円台での推移から92円台へ急低下(図表1)。米感謝祭明けであることや、サッカー・ワールドカップ開催中で積極的に取引を手掛けようとの意欲が乏しく、マーケットの流動性が低下気味であったことも、値動きを増幅した可能性があります。
「ゼロコロナ」緩和・継続いずれでも混乱は続くか
抗議活動の強まりに対し、政府は多くの警察官を警戒に当たらせ動きを抑制。加えて29日に衛生当局が会見で政策見直しについて「社会と経済への影響を軽減するため政策の微調整を続ける」「国民が指摘している問題点を迅速に解決する」との姿勢を示し、マーケットがリスク回避の動きを緩める場面もありました。
ただ、今回の抗議デモが規制による締め付けへの単なる不満だけでなく、政権への批判もともなっていることが心配されます。米ホワイトハウスが「抗議行動は誰もが持つ権利」として、政府の弾圧をけん制していることは、米中の対立を深める火種にもなりかねません。
中国の混乱は、同国へ進出している企業を多く抱える欧州の経済にとっても圧迫要因になります。商品相場の下落は、資源輸出に依存している国が多い新興国にとってもマイナスとなります。中国の悪材料が多角的に世界経済を痛めつけ、金融マーケットを揺さぶる要因となっています。
「ゼロコロナ」政策の緩和や維持の折り合いがついたとしても、1日当たりの新規感染者数が4万人台と過去最大規模の水準で推移する中国では、規制緩和が感染をさらに加速させるリスクもあります。一方「ゼロコロナ」が続いたとしても、経済活動が不活性なままで低迷が継続しそうです。八方塞がりの中国「ゼロコロナ」政策は、いずれの方向へ向かっても、しばらくマーケットを混乱させる要因となるでしょう。