米トランプ政権による高率な関税賦課や各国の報復関税の悪影響「関税ショック」にみまわれています。急速に進んだ負の流れに対し、報道などをきっかけに大きめな巻き戻しが入る場面もあるでしょう。しかし先行きの不透明感は簡単に晴れそうにありません。最終的にある程度の解決へ向かうにしても、楽観や失望を繰り返しながら荒っぽく上下する展開を想定して臨まなければならないでしょう。
「関税ショック」ドル円は一時140円割れ
米トランプ政権による中国をはじめ各国への高額な追加関税賦課がアメリカほか世界各国の貿易・経済や金融マーケットに悪影響を及ぼす「関税ショック」とされる動き。同材料を織り込んだ負の流れが大きく進みました。
4月初めまで150円台へ戻す場面を挟みつつ推移していたドル円は、「関税ショック」の影響が現れ始めると同3日には大陰線を形成して大きく下振れ(図表参照)。その後は揺り戻しを挟みつつも下値を探る流れが続き、今週22日には昨年9月16日以来、7カ月ぶり以上となる140円割れまで下落幅を広げました。
23日のアジア早朝には、中国に課した合計145%の関税が結局「大幅に下がっていく」とのトランプ大統領の見解が伝わり、米中貿易交渉進展の思惑が浮上。143円台へ急速に戻す場面もありましたが、早々に同日の上振れ分をいったんほぼ帳消しにする141円半ばへ押し戻されるなど動意は不安定です。
関税見直し観測による巻き戻し入っても状況不安定
トランプ大統領は当初から関税を交渉カードとして使っているとされ、結果的には「ふっかけていたほどの高関税にはならない」との見方もあります。しかし現時点で145%になる可能性が示唆されている中国への関税が、トランプ氏の主張する「公正な合意(≒アメリカにとって有利な合意)」として交渉で半分程度に引き下げられるのではないかとされていますが、それでもかなり高率なままといえます。
中国の米国に対する報復関税125%も、アメリカが仮に譲歩、あるいは中国側が歩みよれば相応の引き下げとなるでしょう。しかし高圧的なトランプ政権とプライドの高い習近平中国国家主席の歩み寄りはそう容易ではないでしょう。
トランプ大統領は自らのパフォーマンスが発揮できる首脳会談へのこだわりが強いようですが、習主席とのやり取りに関して「現時点で報告できることはない」としています。中国外務省サイドの反応もいまのところ「アメリカが一方で極端な圧力をかけながら、同時に合意を望んでいると言うことはできない」「これは中国に対する正しい対応の仕方ではなく、実現可能でもない」「アメリカは平等と互恵の原則に基づいて中国と対話を行うべきだ」とかたくななままです。
報道内容によって一時的な楽観は生じても、長続きしないと考える市場参加者は多いでしょう。これまで急速に強まった「関税ショック」によるマイナスが、反動もあって報道内容などを受けて急速に巻き戻される場面も確かにありそうです。
しかし急な反発への緩戻しも相応に大きくなる可能性があり、マーケット参加者が荒っぽい上下に振り回されるような動きが続くでしょう。不透明な「関税ショック」の」行方を見定めつつ、マーケットの変動率の大きさに翻弄されやすい局面といえます。