「左派躍進」仏下院選挙、極右台頭回避も難しい政局の舵取り
フランス下院選挙では与党・左派の共闘で極右の台頭を防ぐことができました。しかし与党が支持を得られず棚ぼた式に左派が第1勢力に躍り出るサプライズとなりました。思わぬ結果がフランスの政局運営を困難なものとしそうで、為替ユーロにとってもどうにか回避した極右の台頭と同様に圧迫要因となりそうです。
7月7日に決戦投票が行われたフランス下院選挙は、定数577議席のうち左派連合・人民戦線(NFP)が最大議席となる188議席を獲得するサプライズとなりました。第1回投票で躍進した極右とされる国民連合(RN)のさらなる台頭を阻止するため、NFPとマクロン大統領率いる中道派・アンサンブル(ENS)が共闘する格好となっていましたが、エリート色の強いマクロン大統領が率いる政党は物価上昇や移民問題に不満を持つ一般国民の支持を得にくい状態が続いて議席数を161へ減らし、結果としてNFPの棚ぼた的な躍進につながりました。
極右RNの獲得議席は142議席と3番手にとどまり、3党ともに単独過半数を得ていません。次期政権の姿が想像できない状態で、為替市場では確信を持ってユーロを売ることも買うこともできない状態となっています(図表参照)。
選挙で協力したNFPとENSが連立内閣を組むのではないかと考えがちですが、左派といっても急進左派から中道寄りの左派も含む連合体であるNFP内の意見には異なる部分が多く、連合内で首相候補も絞れなかった状態です。単純にNFPとENSが政策をすり合わせて連立を組むことはさらに難しいといえます。
NFP全体としての今回の選挙公約には反マクロン行政的な部分が多く見られ、連立を組む難しさが感じられます。
例えば、
ENS・年金支給年齢を62歳から64歳へ強行に引き上げ
↑
↓
NF・支給を64歳から60歳まで引き戻し
その他、マクロン政権が基本としていたEUへの帰属や、それにともなう財政規律の順守に異を唱えています。また、富裕層への90%課税といった合意しにくい極端な政策採用案も浮上しています。
内閣成立しても安定しない状態は変わらず、引き続きユーロ圧迫要因に
左派で非多数派政権を発足するにも首相候補が絞れず、左派・旧与党連合の連立も政策がかみ合わない状態。1つ考えられるのが、解散にともなう下院選挙1年以内は解散できないとの規定期間を経過した来年までをめどとした、次期選挙へ向けた暫定的な管理内閣を取りあえず成立させるといったところでしょう。
ただ、その場合は従来からの構造問題や財政問題への対処、新たな課題への対応はどうしても疎かになります。こうした流れや、内閣が成立したとしても大統領と議会主流の勢力が相反する宙づり国会(ハングパーラメント)となることなども踏まえ、大手格付けS&Pがフランスの国債格付けを「AA」から「AA-」へ引き下げる動きもありました。
まだフランスの選挙結果を判断しきれていない為替ユーロも、先行きを踏まえれば圧迫されやすい状態といえるでしょう。米金融政策の行方をにらんだ対ドルでの上下に目を奪われがちかもしれませんが、政治の流れを追った国の評価が為替相場に反映されるリスクを無視できません。