中国新興AI企業ディープシークが低廉なAIモデルをリリース。米AI関連で株急落となる銘柄が目立ち、マーケットのリスク回避を誘いました。「中国ネタは長続きしない」との声はよく聞かれますが、好調だった米AI関連の調整を誘う材料だけに注意が必要です。
「ディープシーク・ショック」でリスク回避・円高
中国の新興AI(人口知能)開発企業ディープシーク(DeepSeeK・深度求索)が低コストなAIモデルをリリースすることになりました。これまでAIセクターをけん引してきた米半導体大手エヌビディアといった従来のAIリーダーの優位性を揺るがすとの見方を強めています。
週明け27日のNY株式マーケットでは米国など先進国の半導体ほかAIインフラや関連企業の株安が進行。ハイテク株主体のナスダック総合指数は3%を超す大幅な下落となりました(図表1)。
エヌビディアが16.67%安となったほか、ブロードコムが17.40%安、オラクルが13.79%安、スーパー・マイクロ・コンピューターが12.62%安となるなどハイテク株の急落がマーケットのリスク回避姿勢を強めました。為替はリスク回避の円買いへ傾き、27日の東京タイム終盤に一時156円前半で推移していたドル円は153円後半までドル安・円高となりました(図表2)。
ディープシークのAIモデルは米ハイテク関係者からも評価を得ていて、米メタ社など米国の既存AIモデルに並ぶ、あるいはそれ以上の性能ともされています。加えて、モデル開発費用はこれまでの数十億ドルといった水準に対して約560万ドル(現在レート換算9億円未満)と10分の1以下、使用料も20-50分の1にとどまるといいます。
「中国ネタ」巻き戻し入りがちだが、好調だった米AI関連の調整を誘う材料だけに注意
27日の「ディープシーク・ショック」とも呼ばれる下振れに対し、28日午後に入ったNY株式市場では、前日の大幅安に対する反動もあったようで、ギャップをともなって売られた値幅を7割ほど取り戻しています。ドル円は156円台回復をうかがうなど、同材料を受けたリスク回避で下落した分をおおむね取り戻す流れとなりつつありました。
「中国ネタは長続きしない」と囃され、中国関連の材料で動いた値幅がほどなく巻き戻される流れにも見えます。ただ、中国の政治ネタや喧伝のような経済・景気対策による動きと今回は、少し基調が異なる可能性も警戒して臨んだほうがよいかもしれません。
中国発の材料ではありますが、過去2年ほど堅調な米株マーケットをけん引してきたAI関連株、このところも米大統領へのトランプ氏就任で公表された大型AIインフラ投資計画「スターゲート」への期待も押し上げ要因になっていました。トランプ関税もあって、全般的な競争力についても中国に対する米国の優位性は揺るがないとの安心感も高まっていただけに、AI開発シーンが様変わりしかねないニュースを受けて過度な楽観に冷や水が浴びせかけられた事態ともいえます。
為替も、米連邦準備理事会(FRB)が当初の想定より緩やかなペースになりそうだとはいえ利下げモードにある一方、日銀が利上げへ動いているなかでも円安地合いになりやすかったことへの揺り戻しが入ってもおかしくありません。リスクセンチメントをにらんだ神経質な推移をたどることになりそうです。