先週の「アメリカ大統領選挙・テレビ討論会」は民主党候補のハリス副大統領が優位と判断されたようです。マーケットは民主党後の政策に沿ったような反応を示しましたが、どの程度影響を及ぼしたかは不明瞭。為替は民主党政権持続ならドル安方向で、2期トランプ政権成立ならドル高方向も、けん制などにより不安定に推移しそうといったところでしょうか。
討論会はハリス優位の判定、マーケットの影響は不明瞭
米現地10日夜(日本時間11日午前)、11月のアメリカ大統領選挙へ向けて、民主党候補ハリス副大統領と共和党候補のトランプ前大統領による初の「テレビ討論会」が開催されました。6月に行われた当時の民主党候補だったバイデン大統領とトランプ前大統領によるテレビ討論会は、バイデン大統領が高齢による衰えを強く意識させる内容となり「惨敗」のレッテルを張られたりもしました。しかし今回はハリス副大統領が有利だったとするアンケート回答が6割ほどに達するなど、民主党が盛り返す結果となりました。
ただ、議論は政権成立後の政策をアピールして有権者を引き付けるような前向きなイメージはなく、互いのマイナス点を非難し合った感を残す内容でした。討論会の結果が主因と断定できる状況ではありませんが、金融マーケットは優位とされたハリス副大統領の民主党が政権を取った際に想定される政策から連想される株安・米金利低下・ドル軟調の推移となりました。
ドル円は米10年債利回りが3.6%近辺まで低下したことを受け、年初来安値となる141円割れ。その後も揺り戻しを挟みつつも140円割れまで安値を更新しました(図表参照)。
しかし、日銀審議委員による「金融緩和の度合い調整」発言や、米大幅利下げ観測の台頭がそれぞれの局面で後押しになっていたので、米次期政権後を見据えた示した反応ともいいきれません。
民主ならドル安、2期トランプ政権ならドル高も不安定か
仮に「テレビ討論会」で優位となったハリス副大統領のもと民主党政権が持続した場合、一方で上院では共和党優位が続きそうであるため、下院が民主党優位でも「ねじれ議会」により政策や改革が進みにくく、現状路線継続となりそうです。「金融マーケットの反応は薄いだろう」(シンクタンク系エコノミスト)との見方ですが、傾向としては富裕層やキャピタルゲイン減税で景気は上向きにくく、重い株価動向のもと金利は低下気味、ドルは上値が抑えられやすくなりそうです。
一方でトランプ前大統領の返り咲きで、共和党政権のもと上下院とも共和党優位となるトリプルレッドとなった場合は、減税による景気加速や関税の引き上げによるインフレ率の上昇が予想されます。アメリカの株と金利が並行して上昇し、為替はドル高となりやすいでしょう。
共和党政権となった場合、上記の効果で前回2016年のトリプルレッド成立時同様に10円ほど円安に傾くとしたら、現状からすれば150円程度までの円安も想定できます。ただ、「トランプ氏の情報発信にもよるだろうが、掲げている政策がインフレ的なので結果的に利上げ・ドル高との連想が働きやすいものの、彼自身はドル高を嫌っており、口先介入や為替操作国認定などを使ってくるかもしれない」(前出のシンクタンク系エコノミスト)との声も聞かれます。
総じていえば、大統領こそ代わっても民主党政権が持続した場合はドルが重くなりやすく、2期トランプ政権となった場合はドル高が進みやすそう。ただ、その場合は旧ツイッター(X)などによるドル高けん制が為替を不安定にするリスクも高まりそうといったところでしょうか。