「高市ショック(期待相場)」から「石破ショック」で株暴落・円急騰となったかと思えば、金融緩和継続に理解を示して「逆石破ショック」ともいえる株高・円安となるなど「政治ショック」に翻弄される状態が続いています。足もとの株高・円安の流れが、前言撤回癖があるのではないかとの不安も持たれる石破新首相の言動により翻るリスクにも注意して臨むべきかもしれません。
「高市期待」株高・円安から「石破ショック」で株暴落・円急騰
ドル円は日米金利差縮小観測で先月9月16日には年初来安値を更新しました。昨年3月以来の140円割れとなり、139円半ばへ下振れました。
しかし、その後はパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が9月18日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で利下げを急がない姿勢を強調した一方、同20日の植田日銀総裁による金融政策決定会合後の会見内容が「利上げを急がないややハト派寄りの姿勢を示した」と受け止められたことから日米金利差縮小観測が後退。中国の景気支援策公表を後押しとしたリスク選好もあって株高となるなか145円台へ乗せるところまで回復が進みました(図表参照)。
この局面で円安のダメ押しとなったのが「高市ショック」、ポジティブな受け止めとしては「高市期待相場」とされる高市氏の次期自民党総裁就任を材料とした動きです。高市氏は、足もとの不安定な相場推移のなかで日銀が利上げをするのは「アホ」と釘を刺す発言をしていました。
高市氏が自民党総裁選の第1回投票でトップとなり女性初の首相就任の実現性が高まると、日経平均株価は4万円回復を意識させる上昇となり、ドル円は9月3日以来の高値146円台まで上伸。しかし決戦投票で石破氏が勝利を収めるとドル円は急落しました。
これが「石破ショック」と呼ばれ、金融所得課税強化や金融政策の運営において日銀の政策正常化の意向を尊重した姿勢を示していた同氏が首相へ就任することになり、まさにマーケット(『市』市場)の水準を『高』めていた「『高』『市』相場」の巻き戻しが急速に進みました。
ドル円は146円台から142円台まで一気に急落。その後、株安が進むとともに同30日には141円台まで下落が進みました。
「逆石破ショック」で巻き戻すも前言撤回リスクの不安が
ただ、その後は石破氏が、裏金問題などに関する国民の真意を問うなどを理由に、戦後最短となる総理就任から8日後の解散・総選挙へ動いたことで、選挙での支持獲得を目的とした株式など相場の下支えに動くとの思惑が浮上しました。
そして10月2日、石破首相が植田日銀総裁と会談後、「追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」「これから先も緩和基調を維持しながら経済が持続的に発展することを期待」と述べたことで円安が加速。中国の景気支援策への期待によるリスク選好も高まっていたなか、ドル円は8月以来の149円台まで上昇しました。
「石破ショック」の巻き戻し「逆石破ショック」といえる動きで、「政治ショック」に翻弄される展開が続いています。さらなる「政治ショック」にさらされそうな状態にあることも不安を駆り立てます。
石破氏は、総裁選に臨む討論会の段階では次期衆院選の時期について、本当の意味でやり取りが可能として予算委員会の開催が優先事項として、解散・総選挙があるとしても11月以降とのタイムスケジュールを提示していました。しかし就任早々、いわゆる裏金議員の公認扱いも含めた前言撤回で今回の早期解散へと動いた流れは、石破新政権への不信感をつのらせる材料となっています。
選挙結果次第でしょうが、人気取りのために相場支援となる金融緩和寄りの発言をした姿勢を翻して、金融政策の正常化に前向きな植田日銀の姿勢を容認へと傾いていく可能性は否定できません。前言撤回で「逆石破ショック」リバースとなるさらなる「政治ショック」のリスクも視野に入れて相場展開を追うべきでしょう。