GDP2期連続マイナス、日本「テクニカルリセッション」入り
2月15日発表の本邦2023年10-12月期の実質国内総生産(GDP)前期比-0.1%と、+0.3%程度の結果を見込んでいた市場予想に反してマイナスとなりました(図表1)。前期の同年7-9月期の修正値-0.8%に続くマイナスでした。
2期連続のマイナス成長となり、一般的な解釈では「テクニカルリセッション」とされ、景気後退に陥ったと定義される状態。消費と設備投資の弱さが足を引っ張ったといいます。
この結果2023年の日本のGDPは年後半の失速からドル換算で約4.29兆ドルにとどまりました。これは10-12月期GDPが前期比-0.3%となりながらも7-9月期が-0.1%から±0.0%へ上方修正されたことで「テクニカルリセッション」入りをどうにか回避できたドイツの2023年GDP約4.7兆ドルに抜かれ、世界第3位から4位へ転落する事態につながっています。
ちなみに1位は米国の約27.97兆ドル、2位は中国で約18.56兆ドル。日本は今回約4.11兆ドルのインドに2025年には抜かれ、5位へさらに順位を下げるのではないかともいわれています。
日銀の緩和解除が先延ばしとの見方で円安
こうしたなか浮上した思惑は「景気後退入りで日銀のマイナス金利解除が先延ばしになる」というものです。金融緩和で拡大した景気を抑制するための金融引き締め方向への動きに転換するのは時期尚早との見方です。
これにより円安地合いが根強いものになっています。米インフレ指標の強さも相まって150円台を回復していたドル円は足もとで、149円台へ下押す場面を挟みつつも150円台へ戻す底堅さを示しています(図表2)。
円買い介入の後ろ盾となる異次元緩和解除あるか
ただ、ドル円相場が150円付近で底堅く推移するなか、本邦通貨当局が一層の円安進行阻止を狙った円買い介入が行うのではないかとの観測も強まっています。「米有力金融機関のレポートにおいて150-155円ゾーンで円安が加速した場合、日本政府の円買い介入が実施される可能性があるとの指摘が目立ってきた」(市場筋)との声が聞かれます。
しかし介入を行うためにはマイナス金利を続ける異例の金融緩和状態を放置しておくわけにはいきません。金融政策と整合性のとれない為替操作のような円買い介入は国際的な理解を得難いのです。
そこで求められるのは「テクニカルリセッション」入りした景況と矛盾があるようでも、マイナス金利解除など異次元緩和の状態を脱する方向へ動き出すことです。円安による輸入物価の引き上がりが物価高を後押しする状態を放置しておくわけにはいきません。
こうした流れから、本邦通貨当局が円安阻止の介入に動く一方、日銀が異次元緩和の解除へ動く展開が想定できます。もっとも「異次元」状態の解除へ向かったとしても政策金利をゼロ近傍にとどめ、ガイダンスにより緩和的な金融状況を維持する措置は続くと考えられます。
異次元緩和の解除と円買い介入の組み合わせでドル円が円高方向で押し戻される場面を視野に入れて臨むべきかもしれません。ただ、「異次元」の領域からの揺り戻しがあっても世界的にみて日本の金融政策は依然としてかなり緩和的との評価にやがて落ち着きそうです。その意味で円安の地合いは大きくは崩れないかもしれません。
円安基調が転換するとしたら、根強い米インフレ基調が次第に緩和してドル相場が軟化するパターンがより想定しやすいでしょう。マイナス金利解除・円買い介入での円高方向の動きは一時的、米インフレの落ち着きによるドル安がじわじわ効いてくるとの流れが想定しやすいといえます。