23日「日米中銀トップ発言」、日銀総裁は閉会中審査に出席
23日の「日米中銀トップ発言」が今後の金融マーケットの行方を左右する大きなポイントになりそうです。植田日銀総裁は柔軟な政策選択の余地残す無難な発言が予想されます。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は「利下げ示唆」が規定路線でしょうか。この流れなら緩やかな円高・ドル安方向への動きが想定できますが、どのようなパターンになるか注視することになります。
植田日銀総裁は8月23日午前、衆議院の財務金融委員会が開催する閉会中審査に出席する予定です。閉会中審査は、国会閉会後も引き続き調査が必要とされる重要案件を対象に審査を行うものとなります。
植田総裁は8月22-24日開催のカンザスシティ連銀主催によるワイオミング州ジャクソンホールにおける経済シンポジウム、いわゆるジャクソンホール会議を欠席して閉会中審査に臨みます。主要各国の中銀総裁が一堂に会する恒例の国際的シンポジウム出席を取りやめ、乱高下となった株価動向を受けて開催される閉会中審査へ鈴木財務相とともに参考人として出席することになります。
今回の委員会出席において植田総裁は、利上げや国債買い入れ方針の変更、利上げ継続を示唆したとされる7月30-31日開催の金融政策決定会合後の会見における発言について見解を求められるでしょう。利上げや国債買い入れ方針の変更については、「現状にふさわしい選択だったと考えている」などと述べるのではないでしょうか。
一方、株安を誘った大きなポイントとされる利上げ継続示唆と受け止められている発言については、「経済・物価見通しが実現していけば」という条件のもとであれば、「引き続き政策金利を引き上げる」ことができるといった一般的な見解を述べたなどの説明が想定できます。
懸念されるのは「河野デジタル相が円安是正のため、日銀に政策金利を引き上げるよう求めた」と報道されたような経緯や、自民党の次期総裁有力候補である茂木幹事長の「段階的な利上げの検討も含めて金融政策を正常化する方針をもっと明確に打ち出す必要がある」などの発言からうかがえる政府サイドの圧力に押されてハト派(金融緩和派)からタカ派(金融引き締め派)に転じたとされる植田総裁が、不安定な推移となった株価動向ついての責任をなすりつけられるような展開です。
もっとも、利上げや植田総裁の利上げ継続示唆とされる見解で急落した株価が下落幅を取り戻しているなか(図表参照)、後日の内田日銀副総裁の火消しのような「金融市場が不安定な状況では利上げをすることはない」との発言もあったとはいえ、一方的に日銀会合局面での責任を追及することにも難しさはあります。
いずれにしろ、マーケットの注目は株価動向や、影響を与える円相場に関わる今後の政策運営が、タカ派姿勢維持と受け止められる内容か、再びハト派的な方向へすり寄るか、どのような示唆がなされるかでしょう。状況に応じて適切な政策を選択するとの無難な回答に収まりやすいとみます。
日米金融政策姿勢で決まるドル円の方向性
23日、ジャクソンホール会議のパウエルFRB議長講演では、7月30-31日の連邦公開市場委員会(FOMC)で示された「利下げに近づいているという感触を得ている」「9月FOMCで利下げが選択肢になる可能性ある」との姿勢に関する変化の有無を見定めることになるでしょう。労働市場の減速などを理由に、一段のハト派姿勢進展などが確認されれば、米金利低下・ドル安方向への動きが進む要因となります。
「利下げの是非について真剣に議論が行われた」とされるFOMCの後を受け、マーケット参加者は講演の文言から米景況やインフレに関するFRBの現況判断を推し量ることになります。こうしたFRBを取り巻く状況を考慮した米金利見通しと、日銀の政策姿勢、「日米中銀トップ発言」を吟味して、ドル円の方向性が決まりそうです。
・「日銀 状況に応じた政策選択を主張」+「FRB利下げ示唆」=やや円高・ドル安方向
上記パターンが想定しやすいかもしれません。
・「日銀タカ派姿勢示唆」+「FRB利下げ示唆」=円高・ドル安急進
のパターンは、政府・日銀サイドは回避したいところ。そのための閉会中審査開催ともいえるでしょう。
・「日銀 金融市場が不安定では利上げないと主張」+「FRBハト派姿勢後退」=円安・ドル高
となると、本邦当局にとって少し前まで大きな懸念事項となっていた円安が進み過ぎてしまうリスクも出てきます。
少なくとも
・「日銀 状況に応じた政策選択を主張」+「FRBハト派姿勢後退」=やや円安・ドル高
程度に収めたいところでしょうが、時間的に日本時間の23日23時に行われるパウエル議長講演の影響を予め断定することはできません。閉会中審査での「日銀タカ派姿勢示唆」は少なくとも回避すると考えられます。