英労働党勝利は政治への期待高めそう
4日の英総選挙で見込まれる労働党勝利は「英政局への期待」を高めることになりそうです。一方で仏極右台頭などユーロ圏の政治の行方に対する不透明感は拭いきれません。為替市場ではユーロポンド相場がユーロ安・ポンド高方向への傾く展開が想定できます。
英現地4日に行われる英総選挙は野党・労働党が下院650議席の過半数を大きく上回る430議席前後を確保する歴史的圧勝となる見込みです。14年ぶりに労働党が政権に就くことになります。
労働党の地すべり的勝利はポンド相場にすでに織り込み済みとの見方もあり、為替相場には大きな影響を与えないとの声も聞かれます。しかし左派色を後退させ中道に舵を切った労働党スターマー党首の政治路線はフィナンシャルタイムズ、サンデータイムズなど英主要紙にも評価されており、経済活動の再活性につながるとみられています。
経済の安定につながるとの英次期政権の政策はポンド相場を大きく動かさなくとも、為替にとっても安定に寄与する材料となりそうです。対ドルでのポンド相場は、為替市場全体への影響が大きな米金融政策の動向を反映して振れることになりそうです。
仏極右台頭回避も政権は安定性を欠くか
一方で不安を残すのはユーロ相場に大きな影響を与える欧州政局の行方です。足もとでは仏下院選挙でマリーヌ・ルペン氏が実質的なリーダーである極右・国民連合(RN)が大勝したものの、単独過半数を占めるまでにならなかったことが目先的な安心感を誘っています。
6月30日の仏下院選挙第1回投票を迎えるまでの警戒を伴う過熱感が一服し、ユーロにはいったん買い戻しが入りやすくなっています。現与党連合と左派連合が第2回投票に向けて候補を一本化して、金融マーケットの同様にもつながる極右の台頭を抑えようとの動きもあります。
しかし「現与党連合と左派が選挙後も協力して安定した政権運営を維持することは難しい」(シンクタンク系エコノミスト)との意見もあります。協力して暫定的に政権を成立させても、政策の方向性を明確にした運営を行うのは難しいでしょう。
現与党・左派による連立内閣がどうにか成立しても、解散にともなう下院選挙1年以内は解散できないとの規定期間を経過した来年にも再選挙を行う可能性があります。極右政権誕生を回避した目先的な安心感は長続きせず、政局が安定しない状態は続きそうです。
ユーロポンドは英仏コントラスト反映へ
対ドルでの為替の行方は米金融政策の行方次第だとしても、比較的安定感が期待できるポンド相場と、仏ほかユーロ圏におけるポピュリズム(大衆迎合)的な勢力台頭が圧迫要因となりそうなユーロ相場にはコントラストがつきそうです。地理的な要因もあって対比されやすい両国・地域の動向を反映したユーロポンド相場はポンド高・ユーロ安方向へ傾きやすいでしょう。
ユーロポンドは4月の0.86ポンド半ばから、欧州政局への不安によるユーロ売り・ポンド買いが先行して、0.84ポンド割れまでユーロ安・ポンド高が進みました。その後は前述の仏極右勢力の台頭を懸念した動きが一巡し、足もとで0.85ポンド近辺までユーロ買い戻し・ポンド戻り売りが入りました(図表参照)。
しかし、英政局が比較的安定すると仮定できる一方で、仏政局が再び不透明感を強めると考えれば、再度ユーロ安・ポンド高方向を攻める相場展開が予想できます。再び0.84ポンド前後を試すことになり、下抜けて勢いづけば0.83ポンド台でユーロ売り・ポンド買いが進むことになりそうです。