「粘着性」あるインフレ、FRB利下げ急がず
注目のインフレ指標の伸びは鈍化しつつありますが、米連邦準備理事会(FRB)高官が利下げを急いでいないこともありドル円は底堅さを維持しています。週末の米雇用統計がもう一段のドル高を促し、152円の節目突破につながるか注目の状況といえます。
先週末3月29日、FRBが金融政策を決定する上で重視している米個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の2月分が発表となりました。最注目の食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比+2.8%と、市場予想と一致しています。
予想通りのコアPCEデフレーターは、ドル相場の大きな動きにつながりませんでした。同週末、グッドフライデーで欧州が休場、米市場も株式・債券・商品市場が休場となるなか為替市場の取引参加者も限られたため、ドル円は151円前半から半ばでもみ合いました(図表1)。
ただ、コアPCEが予想通りの結果に収まり、前月の修正値+2.9%を若干下回ったとはいえ(図表2)、まだFRBのインフレ目標2%の安定的維持を強く確信できる状態ともいえないようです。パウエルFRB議長は同日サンフランシスコ連銀で開催されたイベントで「本日のPCEデフレーターは我々の予想とほぼ一致した」としながらも、「利下げを急ぐ必要はない」との考えを改めて強調していました。
コアPCEは低下傾向にあり、前述したように+2.8%と、前月分の+2.9%を下回ったとはいえ(図表2)、1月分が前年12月分の+2.9%並みに上方修正されたこと自体、しつこいインフレの「粘着性」を表す一面と受け止めることもできます。
パウエルFRB議長が「利下げを急ぐ必要はない」としたり、同日に今年の連邦公開市場委員会(FOMC)金融政策決定の投票権を有するボスティック・アトランタ連銀総裁が「経済が予想通りに進展すれば、10-12月期に利下げを開始するのが適切」としたりと、マーケットが6月の米利下げを6割方織り込みつつある(図表3)なかでもFRB高官から利下げを急がない姿勢が示される要因の1つが「粘着性」のあるインフレといえます。
他指標もドルを下支え、米雇用統計に注目
ドル円はコアPCEデフレーターへの反応こそはっきりしなかったものの、週明け1日以降は予想を上回る3月米ISM製造業景況指数などを手掛かりとして堅調に推移しています。3月米ISM製造業景況指数が50.3と予想の48.4を上回ったことが伝わると米長期金利の上昇とともに全般ドル買いが先行。152円の節目突破を試しに向かうような動きを再び示し始めています。
「粘着性」のあるインフレ状況と合わせ、ISM製造業景況指数のような経済指標の底堅さがドル円の152円台回復を後押ししつつあるように見えます。152円の節目にはリバース・ノックアウト・オプション(RKO)ほか、防戦の売りをともなう複数OP設定が観測されているようで突破も容易ではないのですが、もう一押しの材料があれば達成も可能でしょう。
その意味で注目となるのは週末4月5日の3月米雇用統計となります。ただ、マーケットでは非農業部門雇用者数については+20.5万人程度と、2月の+27.5万人より伸びが鈍化するとの見方です。しかし為替が予想比での結果の強弱に着目して、「予想ほど悪化しなかった」としてドル買いに動くことも考えられるため反応に注目しましょう。