11月のアメリカの大統領選挙を経て誕生する政権と石破政権との関係性「日米新政権の親和性」は、為替など金融市場の行方に大きな影響を与えます。特に為替水準への追及が厳しそうなトランプ氏が政権についた場合、トランプ政権と関係性が築きにくいと不安視される石破政権のもと、日銀が米当局と緊密に連携して金融政策を進めにくくなるリスクが危惧されます。
日米新政権、当初は円安・ドル高抑制で一致か
日本では石破政権が誕生し、11月5日の大統領選挙を経てアメリカにも新政権が誕生します。民主党政権が続くにしてもバイデン大統領の退任が決まっており、民主党の候補であるハリス副大統領のもと新たな政権がスタートすることになります。
日本では足もとで米利下げペースが緩やかになりそうなことに加えて、日銀の早期利上げ観測が後退していることから円安が進んでいます。一層の円安進行を石破政権も警戒しているでしょう。
一方で米新政権は民主・共和どちらが勝つにしても、財政支出が拡大する方向になるとの見方。国債発行の増加による金利上昇がドル高要因になると考えられます。
中長期的な影響としては、より財政赤字を増やしそうなトランプ氏の政策がスタグフレーション(物価上昇をともなう景気後退)につながりやすいとして、やがて米国売り・ドル安を招くのではないかとされています。ただ、短期的な反応としてはまず債券売り・米金利上昇・ドル高が先行すると考えられています。
ドル高が先行した際の初期対応として、一層の円安進行を回避したい本邦新政権と、自国製品の競争力を損なうドル高を嫌気する米政権の方向性に相違はないでしょう。ただ、相応に円安抑制が進んだところでも、ドル高抑制がまだ不十分だとして、特にトランプ政権となった場合の為替市場への干渉が懸念されます。
一時は動きを落ち着かせていたドルの総合的な実力を示すドルインデックスが急速に水準を回復している動きも(図表1)、今後の回復状態次第ではありますがアメリカによるドル高けん制の意識を高めそうです。直近2022年9月のピーク114ポイント台と比較するとまだそれほどドル高の感はありませんが、同114ポイント自体が2002年5月以来の高水準でもあり(図表2)、長期的な視点で見れば現時点でさえ相応に調整余地があるともいえます。
トランプ政権と石破政権の関係性の下では日銀動きにくいか
そしてハリス民主党候補が僅差ながら優位に立っていた状況が変化しかねない点も不安をあおります。先週のテレビインタビューでハリス候補がバイデン政権下での政策活動の総括についてまともな回答ができず、大統領を勝ち抜くことができるか疑問を生じさせるような結果になったからです。
直近の世論調査では3ポイントほどハリス氏が優位に立っています。しかし選挙人制度による米大統領選の仕組みの複雑性もあって、ハリス氏が勝利するためには事前に5ポイントほど優位に立っていなければならないとの見解もあります。
もしトランプ氏が返り咲くとしたら、懸念されるのは石破政権との関係、「日米新政権の親和性」です。外交ベタとの見方もあり、トランプ氏と良好な関係性がある麻生氏を敵に回すような格好で総理の席についた石破氏が、トランプ政権との関係性をうまく築けないリスクがあります。
「日米新政権の親和性」が危ういなかでは、日銀も米金融当局と緊密に連携して金融政策を推し進めることが難しくなります。円安抑制にもつながる金利引き上げの方向性を示すことが困難になる可能性が高まります。
円安・ドル高抑制で当初の方向性が一致している局面で大きな問題は生じないかもしれません。しかし一層のドル安を求められ、為替操作監視対象以上のさらに厳しい扱いを受けるなど、本邦当局ではコントロールしにくい状況に陥ることも想定しておくべきかもしれません。
アメリカ大統領選挙の行方や石破政権とアメリカ新政権の関係性、「日米新政権の親和性」が為替など金融市場の先行きを見通すためにも重要な注目点となります。