ジャクソンホール焦点はインフレ終息宣言の有無
毎年恒例、この時期の最注目イベントといえるジャクソンホール会議が8月24-26日の日程で開催されます。インフレ終息の判断が難しい状態のなか米金融政策の行方に関する示唆を明確にするのは難しく、「データ次第」とするどっちつかずの見解を繰り返すことになるかもしれません。
ジャクソンホール会議は米カンザスシティ連銀主催によるワイオミング州北西部ジャクソンホールで行われる経済・金融シンポジウムです。同イベントでの米連邦準備理事会(FRB)議長講演は、しばしば金融政策の行方や転換点を示唆する内容になることがあります。
焦点はFRBが物価高騰を抑え込むことができたとして「インフレ終息」を宣言するかどうかでしょう。「インフレ終息」宣言から「金利引き上げ打ち止め」、そして「利下げ」への流れが示されるとの思惑を抱く向きもあります。
米消費者物価指数(CPI)は2022年6月に前年比+9.1%で直近のピークを打ち、今年6月には+3.0%まで伸び率が鈍化。エネルギーと食品を除くコア指数では22年9月の前年比+6.6%にピークはやや後ずれしましたが、直近7月分の+4.7%まで鈍化が続いています(図表参照)。
「前年度効果」はく落の影響、判断まだ困難
一方でヘッドラインのCPIは前述した6月の+3.0%で伸びを最も落ち着かせた後、直近7月は上昇率を+3.2%へ小幅に広げました。単純に推計できる内容ではないのですが、強く上昇していた前年のCPIレベルとの比較により伸び率が低く抑えられやすくなる「前年度効果」が弱まり始めたところで伸び率縮小にいったん歯止めが掛かった状態ともいえます。
FRBがより物価動向の真の姿を反映していると考えるコアCPIについても、ピークから1年経過に相当する今年9月前後に「前年度効果」がはく落するリスクを視野に入れておくべきかもしれません。
インフレ指標としてFRBが最も注目する個人消費価格指数(PCEデフレーター)のコア(食品・エネルギー除く)指数は22年2月に前年比+5.4%でピークアウト後、同年9月に+5.1%で二番天井をつけたこともあり同12月にやや前倒しでいったん底打ち感を示しかけるなど形状はいびつですが、足もとで伸び鈍化の流れがおおむね続いています。
しかし2番天井レンジの推移に対する「前年度効果」はく落が1年後にあたる今年9月分前後の数値に影響を与えるリスクがあるとしたら「インフレ終息宣言」を躊躇(ちゅうちょ)したくなるでしょう。近年異例なペースで進んだインフレが足もとの加速度を示す前月比のCPIやPCEデフレーターの季節調整を歪め、思わぬ数字の振れにつながることも考えられます。
「前年度効果」はく落や季節調整の歪みがインフレ指標に与える影響は極めて不透明といえます。パウエル議長ほかFRB高官がさかんに「データ次第」と繰り返すように、FRBそしてマーケットもインフレの行方に確信が持てない一因といえるでしょう。
不透明感から「インフレ終息」を言明できなければ、パウエルFRB議長はジャクソンホールで利上げ終了や将来の利下げ示唆を明示できず、「データ次第」との見解を繰り返すだけに終わるでしょう。見せ場のない講演になるのか、転換を示唆できるのか日本時間25日23時5分のパウエル講演を待つ局面にあります。