RBAは3会合の金利据え置き、マーケットには利下げの思惑も
豪準備銀行(RBA、中銀)が3会合連続で政策金利を据え置き、マーケットでは利下げの時期を探るような節もあります。しかし金利据え置きのタイミングでいったんしくじり退任に至ったとも思われるロウRBA総裁の後を引き継ぐブロック次期総裁は、簡単に利下げへ踏み切れないかもしれません。様子見で金利を据え置いているとしつつも実は身動きがとれないまま、インフレ再燃や景気悪化に遅れを取る「悪手」を打つような政策対応を迫られるリスクがありそうです。
RBAは9月5日、市場予想通り3会合連続での政策金利4.10%に据え置きました。声明文では「金融政策の幾分かの引き締めが必要になるかもしれない」として、インフレを目標レンジの年2-3%に戻すために必要なことを行っていくとの見解を示しています。
ただ、マーケットでは内容に特段の大きな変化はなかったと受け止めで、発表直後の豪ドルの値動きは限定的でした。対ドル0.64ドル前半レンジの限られた値幅で推移しました。
その後はオーストラリアなどオセアニア地域と経済的に密接な関係にある中国景況の先行き不透明感を材料に売り優位の展開に移行。0.6350ドル台まで年初来安値を更新しています。
会合に先がけて8月30日に発表された7月豪消費者物価指数(CPI)が前年比+4.9%と、市場予想の+5.2%よりも弱く、6月の+5.4%から大きく減速。1年5カ月ぶりの低い伸びとなりインフレが想定以上に落ち着いてきたことも、豪ドル安を誘いやすい材料でした。
豪CPIは昨年12月に前年比+8.4%まで跳ね上がったところから現水準までおおむね順調に鈍化(図表参照)。昨年5月に政策金利を0.10%から0.35%に引き上げて利上げへ舵を切って以降、今年6月に現水準へ到達するまで大幅に引き上げてきた効果が出ています。
7月に金利据え置きに転じて以降もインフレ率の鈍化が続いていることから、RBAは利上げによる物価抑制効果と景況への影響を見定めるため様子見姿勢を続けることができると判断しているようです。マーケットでは利上げサイクルが終了して利下げへ転じるとの思惑も先行し始めており、豪ドルの上値を重くしている。
会合翌日6日発表の4-6月期豪国内総生産(GDP)が前期比+0.4%と、前期1-3月期の改定値+0.4%と並ぶ頭打ち状態。前年同期比では+2.1%と、前期の改定値+2.4%から伸びが縮小するなどさえない推移であることも豪ドルを重くする要因となっています。
金利操作失敗の轍踏みたくない次期総裁、後手に回るリスク高い
ただ、RBAは様子見が可能としつつも、サービス・不動産価格や賃金の上昇傾向によるインフレ圧力が残るなかでは、簡単に引き締めの手を緩めにくい状況と考えているようです。4月に金利をいったん据え置いた局面で、CPIに揺り戻しの反発が生じた経緯もあります。
一方で景気の頭打ちもあり利下げへ踏み切りたい面もある難しい状態。この局面で退任するロウRBA総裁からその座を引き継ぐブロック次期総裁はかなり困難なかじ取りを迫られることになります。
GDPが頭打ちから、中国経済の先行き不透明感もあって下振れへ転じる可能性があるなかインフレ再燃の懸念もくすぶっています。ロウ総裁が、物価の再上昇など金融政策の運営のまずさから事実上の更迭といえる状態で退任したこともあり、新総裁も簡単に引き締めの手綱を緩めにくいでしょう。
様子見で政策金利の高止まりが続くなか、状況を判断する局面としつつも身動きが取れないだけともいえ、利上げ打ち止めを見越したインフレ再燃と、高水準の金利維持を重しとした景気減速のリスクが共存しています。
RBAの見通しからインフレや景気が大きくブレなければ可能な限り金利据え置きを続けることになるかもしれません。しかしインフレ・景気のどちらかが想定以上に悪化した局面で、後れを取ってパッチをはめる「悪手」のような金利操作を迫られるリスクが高いといえます。