週末の日銀総裁インタビューの内容を、データが「オントラック(想定通り)」であることを条件とした利上げ示唆と金融マーケット参加者が受け止め、円買いが先行する場面がありました。「オントラック」であるかどうかの判断も難しいところで、思惑が左右されマーケットが関連報道で上下する流れがしばらく続きやすいかもしれません。
日銀総裁インタビューで円高に
日経新聞が11月28日に行った植田日銀総裁へのインタビューが同週末29日(金)深夜(30日午前2時)にオンライン版に掲載されると、為替市場では円高が進みました。植田総裁が-徐々に次の利上げのタイミングは近づいていると言えるか-との問いに対し、「経済データがオントラック(想定通り)に推移しているという意味では近づいていると言える」と述べた点が早々の利上げ示唆と受け止められたためです。
ドル円相場は150円半ばへやや揺り戻されていましたが、149円半ばまで急落(図表参照)。その後12月3日に149円割れまで円高がさらに進んでいった流れを後押しする一因となりました。
「ただ米国の経済政策の先行きがどうなるか、大きなクエスチョンマークがある」とも述べており、やや前のめりに「12月会合にも利上げか」との思惑を織り込みにいきすぎたきらいもあります。総裁は「(トランプ大統領の関税措置など)当面、どういうものが出てくるか確認したい」などの見解も示していました。
「オントラック」の判断にらみ市場は神経質
とはいえ、同インタビュー後29日に発表となった11月東京都区部の消費者物価指数(CPI)が、重視される生鮮食品を除くベースで前月10月の前年比+1.8%から、市場予想の+2.1%を上回る+2.2%まで回復。同インタビューを受けた利上げへの思惑を高めやすい状況でもありました。
先行指標となる都区部CPIが、日銀の物価目標の目安となる2%を上回る強さを示しました。この強い流れが日銀のターゲットとする全国CPI次回11月分でも示されるか金融マーケットは注目しています。
11月22日に発表されていた前回10月の全国CPIは、同じく生鮮食品を除くベースでやはり2%目標を上回る+2.3%と、市場予想の+2.2%も上回りました。ただ、前々回9月分の+2.4%よりやや失速していました。
物価が2%を上回り「安定的に推移」することができるかまだ不安を残す状態ともいえます。国民の不安を煽る総体的な物価の急上昇を緩和するために円安抑制する行動などが作用しても2%目標を落ち着いていじできる余地を残すことも必要でしょう。
次回の全国CPI11月分の発表は12月20日となります。これは同18-19日開催となる今年最後の日銀金融政策決定会合後となります。
「オントラック」であるがどうか、スケジュール通りであれ判断は難しところですが、CPI発表す体である政府総務省とも当然つながりがあると考えられる財務相や経済財政担当相、またはそれぞれが指名する職員も、会合で議決権こそありませんが意見を述べることができます。政府の見通しあるいは漏れ伝わってくる裏事情から、「オントラック」であるかどうかの判断はできるのではないかとの見方も浮上しそうです。
こうした見方が円高進行の要因となりましたが、足もとでは一部通信社から「12月の金融政策決定会合で政策を据え置く可能性」との英文記事が流れ、円安方向へ切り返す動きも交錯しています・「オントラック」であるかどうかの行方をにらんで、関連報道で為替や株など金融マーケットが上下に振らされる荒っぽい動きが続きそうです。