「JOLTS」求人件数、21年5月以来の1000万件割れ マーケットにネガティブインパクト
4月4日 火曜日のNYタイムは、2月米雇用動態調査(JOLTS)求人件数が993.1万件と市場予想の1040.0万件を下回り、2021年5月以来の1000万件割れとなったことが金融マーケットにインパクトを与えました。米雇用統計に準ずる注目の労働関連指標として「JOLTS」をマークしておく必要があるようです。
労働市場の軟化は、経済活動の落ち着きや、賃金動向を通じたインフレの鎮静化を意識させる材料となります。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ停止観測を強める材料と受け止められました。前日43%程度へやや低下していた政策金利の据え置き見通しは、直後に57%付近へ持ち直しています。
米10年債利回りは3.48%台から3.33%台へ大幅に低下。米金融政策の動向や見通しと連動性が強いとされる同2年債利回りは4%台から3.8%台へ切り下がりました。
為替市場では米金利低下によるドル安が進みました。ドル円は133円台から131円台へ下落。一方でユーロドルは年初来高値をつけた2月2日以来の水準1.0970ドル台までユーロ高・ドル安となりました。ドルの総合的な強弱を示すドルインデックスも同日以来の低さとなる101.46ポイント前後へ振れています。
米金利低下が支援要因となることもある株式市場も、この日は売りが先行しました。雇用鈍化の可能性が経済活動の弱まりをより意識させたようで、ダウ平均は米現地時間の昼頃には200ドル安水準で推移していました。
米労働市場・先行指標として注目増す「JOLTS」
JOLTS(Job Openings and Labor Turnover Survey)は、米労働統計局による企業の月末時点における求人状況の調査内容で、予てより注目度の高い米雇用統計の先行指標との認識が、広く定着しつつあります。
雇用統計は依然として注目度の高い経済指標です。景気の行方を占う先行指標ともいえます。しかし、将来の景気動向を反映する株式市場など金融マーケットの参加者は「JOLTS」など、より先行性の強い指標を参考にしようと日々模索しています。
欧州などでは、マーケットにインパクトを与える経済指標として、ユーロ圏や各国の購買担当者景気指数(PMI)や、独IFO研究所公表の企業景況感指数が注目されています。独・ユーロ圏のEW景況感指数(先行指数)が、それらの先行指標とされています。
さらにその先行指標として、センティックス(Sentix)投資家信頼感指数に注目するマーケット関係者もいます。ただ、ZEWやセンティックスの指数は、結果の強弱が金融マーケットに直接インパクトを与えるような状態には、あまりなっていないようです。
しかし、4日の発表後の状況からもわかるとおり、「JOLTS」は米雇用統計に準ずる動意材料になりつつあるようにみえます。むしろ、ここ最近の米雇用統計は、従来から注目度が高いことも手伝って、事前に予想に沿った織り込みが進みやすく、思惑と大きく異なる結果にならなければ、マーケットが結果の強弱に沿った動きになりにくくなっている感があります。
米雇用統計が事前予想通りの強い結果となった場合なども、織り込み済みで出尽くし感からマーケットが弱い反応を示す場面があります。そこで、より強弱がマーケットの動きにわかりやすく反映される材料として、先行指標の「JOLTS」が注目を集めるようになってきているのかもしれません。
「JOLTS」が今後さらに注目度を高めた結果、雇用統計と同様に発表時には新規の動意材料としては陳腐化してしまうようなこともありえます。しかし、当面は強弱が比較的素直に反映される分かりやすい労働関連指標として、マーケットの注目を集めそうです。