FRB金利変更の確率算出ツール
来週9月20-21日に、アメリカの中央銀行にあたる連邦準備理事会(FRB;通称Fed フェド)の金融政策イベント・連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、政策金利フェデラル・ファンド・レート(FF金利)の引き上げ幅に対する予想がタカ派(金融引き締め志向)へ傾いています。
この動きを可視化したのが、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループ公表の「フェドウォッチ(FedWatch)」です。
「フェドウォッチ」はFF金利先物の動向から、FOMCでの政策金利変更の実現確率を算出するツールです。FOMC開催月に相当する先物限月の水準から、各会合の織り込み度を弾き出します。
数値はCMEのウェブサイトで見ることができます。
織り込み度タカ派へ傾斜
FRBは、前回7月のFOMCまで3会合連続で政策金利であるフェデラル・ファンド・レート(FF金利)の誘導目標レンジを引き上げています。特に直近2回の会合は0.75%の大幅な連続利上げを断行しました。
パウエルFRB議長は8月26日、米金融政策の重要なヒントが示されるイベントとして知られるカンザスシティ連銀主催の経済シンポジウム(通称;ジャクソンホール会議)における講演で「インフレを抑え込むには家計や企業に何らかの痛みをもたらすことになるがそれは避けられないコスト」「物価の安定を取り戻すことに失敗すればもっと大きな痛みを伴うことになる」と述べ、金利引き上げによる痛みをともなっても、記録的な水準に達しているインフレを抑制する決意を表明しました。
9月FOMCを控えたブラックアウト期間(中銀高官の金融政策に関わる情報発信が禁止される期間)入りを前にした8日、パウエル議長は「インフレが低下するまで行動を維持する必要」「インフレの社会的コストを回避するために今すぐ行動する必要」として、改めてインフレ抑制を優先させる姿勢を強調しました。
CME「フェドウォッチ」は、21日結果公表のFOMCにおける利上げの織り込みを日々強める状態にあります(図表1)。
13日公表の8月米消費者物価指数(CPI)が前月比+0.1%と、物価の落ち着きを示していた7月の-0.1%から再び上昇へ転じたこともあり、同日時点のフェドウォッチは、0.75%利上げ(誘導目標レンジ3.00-3.25%へ)予想が66.0%、1.00%(同3.25-3.50%)の利上げ予想も34%織り込まれました。
前日までの0.50%予想(2.75-3.00%)9.0% / 0.75%予想 91.0%から、予想レンジを上方にシフトした格好です。
金利織り込みの流れ反映してドル円は145円目前
さらにさかのぼれば、1カ月前は0.50%利上げ予想が55.0%と、0.75%予想の45%を上回っている状態でした。ここから、ほぼ0.75%以上の利上げが確信される状態となり、足もとで1.00%の利上げも織り込まれ始める状態になったわけです。
タカ派なアメリカと、強力な金融緩和を維持する日本の金融政策格差に為替マーケット参加者は注目しています。金利織り込みの流れを反映して、ドル円相場は1カ月前の133円前後から1998年8月以来、24年ぶり以上となる145円乗せをうかがうドル高・円安となっています。
インフレをしっかり抑え込むまで金利の引き上げを続けるアメリカの金融政策の行方を把握するためにも、「フェドウォッチ」から目が離せない状態が続きます。