SVB破綻、その他銀行の破綻も
相次ぐ米銀破綻による金融システム不安で、米金融政策の見通しは不透明感に包まれています。0.50%利上げから金利据え置きまで予想が振れる状態で、現在は0.25%利上げの見方がやや優位で、据え置きと拮抗しています。しかし、これまでの上下に振れた見通しの中程といったどっちつかずの予想ともいえます。先行きが見えない状態で米連邦準備理事会(FRB)など主要中央銀行の金融政策決定を待つ不安定な状態にあります。
米現地3月10日、米中堅銀行シリコンバレーバンク(SVB)が破綻しました。総資産が2090億ドル規模の同行の破綻は、米銀破綻として2008年のリーマンショックによる金融危機でのワシントン・ミューチュアル破綻に次ぐ、過去2番目の規模となります。
SVBは、預金引き出しに随時対応する必要がある短期資金で、金利は急激に上昇しにくいとの想定のもと長期運用を積極的に行っていました。FRBがインフレ対応で政策金利の引き上げに前向きな姿勢へ移行するなか、長期の債券運用に含み損が広がっていきました。一方で短期資金を集めるためのコストは上昇。預金集めと長期運用のミスマッチに圧迫される環境となっていました。
SVBの顧客の大半を占める新興テック企業にとっては、金利上昇により以前と同じような条件での資金調達も難しくなっていました。必要資金確保のため、預金の取り崩しもSVBの想定以上に加速しました。低金利が続くとの目論みの下でのSVBの収益構造が、金利上昇でワークしなくなってしまったのです。
SVB破綻に先がけ、8日には暗号資産関連企業との取引を主力とするシルバーゲートキャピタルが、大手暗号資産交換業者FTXトレーディング破綻の影響で事業閉鎖に追い込まれていました。10日にSVB、そして12日にはシルバーゲートキャピタルと同様に暗号資産関連企業を主要顧客とするシグネチャーバンクも事業停止に陥っています。
相次ぐ「米銀破綻」で金融システム不安が強まる
3つの銀行が1週間で破綻した特異な状況で、金融システムに関する懸念が一気に高まりました。背景がFRBの利上げということもあり、一時0.50%に引き上がっていた次回3月21-22日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)における利上げ予想は、金利据え置きを半ば織り込む状態に転じました(図表参照)。一時的に7割方も据え置きを織り込む場面もありました。
ただ、現時点で相対的に優位なのは、一時強まった0.50%利上げ予想でも、金融システム不安で大手金融機関から早々の鞍替えも出てきた据え置き予想でもなく、その中間の0.25%利上げ予想です。1カ月ほど前の予想水準に落ち着きかけました。
どっち付かずの米利上げ予想、不透明感の現れ
しかし、これは0.50%利上げから据え置きまで上下に大きく振れた予想レンジの単に真ん中を取っただけのようにも見えます。不透明でどっちつかずとなり、日々のニュースに振らされた成れの果てのような状態ともいえます。
米金融システムに関する懸念の高まりは、FRBだけでなく16日理事会で0.50%利上げが見込まれていた欧州中央銀行(ECB)の金融政策の見通しも不透明にしました。金融不安の連鎖により、利上げ幅が0.25%にとどまるとの見方も浮上しています。
「米銀破綻」を受け、金融システムリスクへの警戒が広がる中、株式市場では銀行株の売りが先行しました。米連邦預金保険公社(FDIC)は破綻対応の一環として、SVBの管財人となり、預金保護の措置を発動しています。バイデン米大統領は「銀行システムも預金も安全なことは確実。私たちは必要なことは何でもしていく」と表明し、不安の払しょくに腐心しています。
「米銀破綻」への当局の対応が金融マーケットを落ち着かせることができるか、各国中銀が金融システム不安の高まりつつあるなかどのような政策対応をとるか、マーケット参加者が固唾を飲んで見守る局面といえます。