米賃金伸びインフレ示唆、「米利上げ軌道維持」
米賃金の伸びが「米利上げ軌道維持」を示唆する結果となりました。ただ、米金利水準にピーク感も生じ始めるなか、単月の米景況・インフレ指標の強弱に金融マーケットが振らされる流れが続きそうです。
7月7日発表の6月米雇用統計では雇用者数の伸びが予想より鈍化しました。一方、失業率は予想通り改善し、平均時給は予想以上の伸びを示しました。
同月の非農業部門雇用者数は20.9万人増加し、22.5万人程度を見込んでいたマーケット予想を下回りました。しかし失業率は予想通り3.6%と、前月5月の3.7%から低下しています。
単月での雇用の伸びは勢いがいったんは鈍化したものの増加継続により累積の雇用者数は増え続けています。失業率低下につながっており労働需給のひっ迫状態を示しています。
雇用ひっ迫で賃金が安定的に伸びていることも示されました。6月の米平均時給は前月比+0.4%、前年比+4.4%と、それぞれマーケット予想の+0.3%や+4.2%を上回り、5月分も+0.3%から+0.4%へ+4.3%から+4.4%へ上方修正されました。
賃金インフレは他のインフレ指標の高止まりを誘う要因となります。「米利上げ軌道維持」を意識したマーケットは7月の連邦公開市場委員会(FOMC)における0.25%利上げの織り込み度を直近のピークとなる93%まで高めました。
ちなみに同週、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出するフェドウォッチ(FedWatch)は、米独立記念日の休場明けから「米利上げ軌道維持」意識して織り込み度を高め続ける状態が続いていました。5日にはFOMC議事要旨で「ほぼ全ての当局者が年内の追加利上げを予想した」ことが明らかになり、6日にはADP報告による全米雇用者数や6月米ISM非製造業指数が予想を上回ったことが利上げ織り込みを後押ししました。
「米利上げ軌道維持」による景気減速で米株に悪影響も
もっとも、利上げ継続は先々の景気減速させるための措置でもあります。いったん10年債利回りが4%に達した米金利水準は「ピークに近い状態と考えられる」(シンクタンク系エコノミスト)との声も聞かれます。
7月の利上げに加えてFOMCが示唆する「さらにもう1回の利上げを、織り込みきっていないマーケットがそれを織り込みにいけば一時的に金利が上振れる場面はあるかもしれない」(同)との見方はできます。しかし、高水準に達した金利が局面ごとの景気・インフレ指標の強弱に振らされる不安定な状態といえるでしょう。
金利の上下にドル相場や米株も左右されそうです。米株は金利低下が金融相場的な側面で下支えになる場面もある一方、利上げによる景気減速が焦点になってくれば株安でも反応しそうです。
米金利やドル相場は利上げ織り込み度に連動しつつも頭打ち感が生じやすい状態。米株は金利水準と景況の行方にも振らされるといった、いずれのマーケットも不安定に振れる可能性を強めていく神経質な推移となりそうです。