言葉からひも解くマーケット

第132回「OCR」引き下げもNZドル底堅い、継続性は?

NZドルは、連続での大幅なオフィシャル・キャッシュ・レートOCR)引き下げを受けても底堅く推移しました。しかしオーストラリアの金融政策姿勢ほか、NZドルに対して圧迫的な外部要因が上値を重くするリスクには注意が必要でしょう。

 

OCR」引き下げも、対ドル0.56ドル後半から0.57ドル前半へ反転上昇

 

19日の日本時間午前、ニュージーランド準備銀行(RBNZ、中銀)は政策金利である「OCR」を50bp(1bp=0.01%)引き下げ、3.75%にすることを発表しました。3会合連続となる0.50%の大幅な利下げで、利下げ自体は4会合連続です。

 

利下げ発表直後のNZドルは、0.57ドル付近から0.56ドル後半へ下振れが先行。利下げや金融政策声明で示された「第2四半期に政策金利の更なる引き下げを予想」「経済状況が予測どおりに推移すれば、2025年を通じて政策金利をさらに引き下げる余地がある」などの見解を反映した結果としては順当だったかもしれません。

 

しかし今回の大幅な利下げを相当程度織り込んでいたほか、「OCR」見通しで「4月と5月に25bpの引き下げ」との想定が示されたことが、「今後の利下げがこれまでより小幅になる」との意識を高める結果につながったようです。NZドルは対ドルで0.57ドル前半へ反転上昇する底堅さを示しました。

 

 

豪金融政策姿勢ほか圧迫的な外部要因が多い

 

問題は今後のNZドルの底堅さの継続性となりますが、これまでより小幅とはいえ「OCR」引き下げはまだ続くことが前提となっています。オアNZ準備銀行(中央銀行、RBNZ)総裁から「年末までに政策金利は3%程度になると予想」と、4月、5月の利下げ以降も追加利下げがあることが示唆されています。

 

「信頼感が回復すれば、NZ成長率が加速する可能性がある」との見解も示されていますが、まだ総じて低位にあるNZドルを大きく押し上げるような原動力になるかどうか不確かであり、外部要因もNZドルを重くしやすい状況といえます。

 

まずは「トランプ関税」が米国を中心にインフレ押し上げ・ドル高につながるとの見方。ほかにも、前日18日にオーストラリア準備銀行(RBA)が25bpの利下げを行ったオーストラリアの通貨である豪ドルとの対比も気になるところです。

 

RBAは先進国の中では高めに維持していた4.35%の政策金利をようやく25bp小幅に引き下げ、4.10%としました。前回12月会合で「ハト派(金融緩和的)」姿勢へ転じたことを反映した結果といえます。

 

しかし今回会合は利下げに動いたものの、「見通しに対して慎重な姿勢」との姿勢を維持しており、「今回の利下げ後も引き締め的な状態が続く」としています。ブロックRBA総裁も「市場が示唆する追加利下げは保証されていない」と述べるなど、「タカ派的な利下げ」と受け止められました。

 

豪ドル/NZドルは、現水準付近で頭打ち感が生じる可能性もありそうですが、緩やかな豪ドル高・NZドル安基調を維持しています(図表参照)。タカ派的なRBAを背景とした豪ドルとのコントラストは、NZドルの上値を重くする一因となりそうです。

 

 

 

対円でも利上げに動き始めた日銀の姿勢を反映した円買い圧力に圧迫されそうです。これら外的状況も踏まえ、NZドルの上値が重くなるリスクも念頭に置いて臨むべきでしょう。

この連載の一覧
第132回「OCR」引き下げもNZドル底堅い、継続性は?
第131回「鉄鋼関税」や「相互関税」、「米投資拡大」でドル高・円安方向へ巻き戻し
第130回「トランプ関税」アメリカが仕掛けるディール、中国の逆ディール余力にも注意
第129回「ディープシーク・ショック」長続きしない中国ネタと異なる展開警戒も
第128回「大統領令」による米輸入関税いったん見送りもやがて発令へ、荒っぽく振れるか
第127回「英債券安」金利上昇もポンド買いにつながらず
第126回「豪物価の落ち着き」ハト派の思惑を高める
第124回「植田ショック予防線」が生むミスコミュニケーション
第123回「中国景気支援策」再び、リスク選好の継続性は?
第122回「オントラック」日銀判断にらみマーケット上下
第122回「Xリスク再発」為替・日本株はトランプトレード巻き戻し
第121回「新政権の介入能力」日銀利上げとパッケージで効果発揮か
第120回「対中関税」米新政権の引き上げで金融市場圧迫
第119回「トランプトレードの賞味期限」財政悪化を焦点とした反動リスクも
第118回「与党過半数割れ」金融政策の舵取り困難に
第117回「日米新政権の親和性」に不安、金融混乱を懸念
第116回「英利下げ観測」の意識が強まりポンド安に
第115回「政治ショック」前言撤回で株安・円高再燃も
第114回「中国景気支援策」でリスク選好、国慶節連休明け以降も続くか注視
第113回「揺らぐ日銀」与党の責任ない場当たり的な圧力が市場を乱す
第112回「米大統領選挙・テレビ討論会」民主優位に沿うドル安先行、共和勝利ならドル高も不安定か
第111回「サームルール」米利下げ意識を高める
第110回「デュアルマンデート」FRBインフレから雇用へシフト
第109回「豪CPI」予想を上回るも伸び鈍化、豪ドル買い続きにくいか
第108回「日米中銀トップ発言」がマーケット左右
第107回「IMM円ショート取り崩し」一巡、動き落ち着くか?
第106回「ハト派←→タカ派転身」日銀高官発言で乱高下
第105回「金利引き上げペース」日銀、次回利上げ10月か
第104回「トランプトレード」に巻き戻し、次期米政権下でドル重いか
第103回「日銀当座預金見通し」で介入動向推察
第102回「仏左派躍進」サプライズの決戦投票結果
第101回「英政局への期待」ユーロ圏とのコントラストでユーロ安・ポンド高か
第100回「監視リスト」入りで介入しにくくなった?
第98回「欧州政局不安」極右台頭がユーロを不安定に
第97回「メキシコ初の女性大統領」新政権下のマーケット・為替は不安定か
第96回「終幕は視野」日銀デフレ・ゼロ金利との闘い
第95回「2%到達の確信」有無が米金利・ドルの行方左右
第94回「イエレン発言」で釘刺され円買い介入しづらい
第93回「介入余力」残り7-8回分、介入以外の円安抑制措置が必要
第92回「日米韓共同声明」為替介入の可能性は?
第91回「なんちゃって介入」挟みつつドル高・円安の流れ追う展開
第90回「RBNZ vs マーケット」利下げ時期を探るNZドル
第89回「粘着性」しつこいインフレ、底堅い他指標の合わせ技でドル堅調か
第88回「為替介入実績」区切りの28日以降の動き注視
第87回「噂で買って事実で売る」 地で行った円相場  日銀 異次元緩和の転換局面
第85回「もしトラ」から「ほぼトラ」「確トラ」へ  トランプ氏スーパーチューズデー圧勝
第84回「日経平均株価が最高値更新」も、ドル円の上攻めもう一押し支援必要か
第83回「テクニカルリセッション」も円買い介入のため異次元緩和解除へ
第82回「日米労働市況格差」が示す円安・ドル高
第81回「FOMC投票権」メンバーのタカ・ハト変遷注視
第80回「IMF世界経済見通し」ドル>ユーロ>円 示唆か
第79回「フィボナッチ61.8%水準」で底堅さ示すドル円
第78回「Xリスク」トランプ復活が歪なマーケット急襲
第77回「地震の影響」「『異次元』解除」見極めつつ、足もとの「米CPI・PPI」も注目
第76回「利下げ議論」したFRB/しないECB差異でドル・ユーロに明暗
第75回「チャレンジングな状況」肩透かし、日銀マイナス金利解除を急がず?
第74回「チャレンジングな状況」日銀マイナス金利解除を後押しか
第73回「HICP」鈍化、ECB目標達成の前倒しも
第72回「コスト構造の変化」ユーロ圏経済を圧迫
第71回「引き締め効果」金利低下で後退、米政策金利は高止まりか
第70回「制約的スタンス」達成可否に注目
第69回「原油安」豪ドルなど資源国通貨は重い動きに
第68回「第1の力」→「第2の力」バトンタッチ確認できない日銀、円安も止まらず
第67回「悪い金利上昇」米長期金利5%、高位も安定欠きドル円は重いまま
第66回「リスクセンチメント悪化」NZドル圧迫、政権交代後への期待も支えとならず
第65回「中東リスク」日米休場マーケット急襲、複雑で問題長期化へ
第64回「JOLTS好結果」→「米金利上昇/ドル高・円安」vs『覆面介入?』に続く、三つ巴「米雇用統計」×「米金利・為替動向」×『介入有無』注視
第63回「原油高」1.5倍のドル買い・円売りインパクト
第62回「BOE利上げ打ち止め観測」→ECBの動向も影響
第61回「RBA(豪準備銀行)悪手」打つリスク
第60回「ファンダメンタルズから乖離」と主張しにくい円安
第59回「ジャクソンホール・キーワード」日米金融政策格差
第58回「前年度効果」はく落の影響が不透明、ジャクソンホールのインフレ終息宣言は難しいか
第57回「アメリカ経済ソフトランディング期待」も当局とマーケットの金利観ギャップではく落か
第56回「フィッチ・ショック」はショック?
第55回「サプライズ必至」だった日銀YCC修正を7月会合で決定も為替は円安、日銀緩和継続観測による円安続くか
第54回「サプライズ必至」の日銀YCC修正、7月は回避?
第53回「7月FOMC以降の追加利上げ」の有無を見据えて動き出すマーケット
第52回「米利上げ軌道維持」も単月の景気・インフレ指標に振らされマーケット不安定
第51回「元安」当局下支えも下落リスク継続 連れて円安加速も
第50回「行き過ぎた動きには適切に対応」円安への対処 口先から実弾へ移行するか
第49回「FEDピボット」と個別要因の複合判断が必須
第48回「3者会合ライン」140.93円 仕掛けたい投機筋
第47回「インフレ期待低下」ECB政策・ユーロ相場は神経質な局面
第46回「米利上げスキップ」の有無
第45回「フリーダム・コーカス」共和党強硬派が米債務上限交渉をかく乱
第44回「Xデー」前に米与野党にらみ合い
第43回「KBW地方銀行株指数」が鳴らす警鐘
第42回「新日銀総裁・初会合」改めて緩和継続を示唆し株高・円安か
第41回「米景気先行指数」で米株高なら日本株に好影響
第40回「YCC・マイナス金利継続」日銀・出口まだ、為替は米金融政策との兼ね合いもありCPIに注意
第39回「JOLTS」米雇用統計へ準ずる注目指標に
第38回「VIX」恐怖指数で金融不安のマーケットへの影響を判断
第37回「欧・米金融政策格差」ユーロ底堅いか
第36回「米銀破綻」金融政策への影響予想どっちつかずで不透明
第35回「FRB高官発言」欲望と恐怖の往復ビンタ
第34回「米利上げ長期化観測」根拠となった米経済指標の行方注視
第33回「FOMC投票メンバー」強いデータでタカ派へ傾斜
【言葉からひも解くマーケット】第32回「日銀新人事」確定目前、巻き戻しの円安
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為替情報部 アナリスト

関口 宗己

1987年商品取引会社に入社、市場業務を担当。1996年、シカゴにて商品投資顧問(CTA)のライセンスを取得。 市況サービス担当を経て、1999年より外国為替証拠金取引に携わり、為替ブローキングやIMM(国際通貨先物)市場での取引を経験した。 その後、外国為替証拠金取引会社で市況サービスを担当した後、2006年2月にマネーアンドマネー(現・DZHフィナンシャルリサーチ)記者となる。日本テクニカルアナリスト協会検定会員(CTMA2)。日本ファイナンシャルプランナー協会AFP。 その他、社会科教員免許、特許管理士、ボイラー技師、宅地建物取引主任試験合格証などを所持。趣味では2級小型船舶免許、オープンウォーター・スキューバダイビング免許を取得している。

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