景況の先行きに対する見方が米利下げに対する思惑を左右しています。米リセッション(景気後退)入り・大幅利下げの思惑を抱く弱気派は、「サームルール」を意識しているようです。
景況の見方で分かれる米利下げの行方
9月17-18日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では昨年7月に政策金利であるフェデラル・ファンド・レート(FF金利)の誘導目標レンジを5.25-5.50%に引き上げて以降に据え置いていた状態から、利下げへ動くことが見込まれています。
米10年債利回りが昨年6月以来、約1年3カ月ぶりの低水準3.63%台へ低下するなど利下げを織り込む動きになっています。相応に利下げを織り込めば米金利やドル相場は低位ながら安定してよさそうですが、直近では来週の利下げ幅が0.25%にとどまるか、リセッション入りを見込んで0.50%になるか見方が揺れており、金融マーケットの動意を不安定にしているようです。
リセッションの思惑は「サームルール」に影響されていると思われます。「失業率の3カ月平均が過去1年の最低水準を0.5%上回るとリセッション入りの示唆」とするものです。元米連邦準備理事会(FRB)のエコノミストであったクローディア・サーム氏が考案した経験則で、1970年代以降の7回、同状態がいずれもリセッションの正確なシグナルになっていたといいます。
「サームルール」はリセッション示唆
足もとの状況を「サームルール」で照合してみると、セントルイス連銀により端数込みで算出された差異は7月に目安となる水準を上回る0.53%へ到達。8月の算出値はさらに0.57%に切り上がりました(図表参照)。「サームルール」を背景とした0.50%利下げの思惑と、現状の大方の見方を反映した0.25%利下げの予想が交錯しており、米経済指標の強弱やFRB高官の発言を受けて米金利が上下に振れています。
対ドルでの各通貨の動きは金利動向をにらんだ米株の推移も合わせて反映し、リスク回避のドル買い・他通貨売りも入るため一方的にドル安に振れたり、その巻き戻しが入ったりするような単純な動きではありません。しかしドル円は米金利動向に応じてドル安やその巻き戻しで荒っぽく上下する傾向が見て取れます。
6日発表の8月米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比14.2万人増と予想の16.0万人増を下回った一方、平均時給が前月比0.4%/前年比3.8%と予想の前月比0.3%/前年比3.7%を上回りました。失業率は4.2%と市場予想通りの結果。米金利が上昇してドル高・円安方向へ振れる場面を挟みつつも、その後は米金利低下とともにドル円は141円台へ下落しました。
その後も米金利の低下とともに今週に入って一時141円割れとなるなど下値を探る動きに。しかしFOMCまで主要データをつぶさに確認しなければ決め打ちはできないとして揺り戻しが生じるなど、0.25%利下げと0.50%利下げの思惑の振れで不安定に上下する局面が目立ちます。
9月FOMCまでに限らず、「サームルール」などを根拠としたリセッションへの懸念が折々の経済指標を反映して強まったり弱まったりと、不安定な動きがしばらく続くとみます。リセッション入りが米金利の大幅な低下・ドル安につながるとして動意を見込む向きと、「米景気は減速してもリセッションまでには至らないだろう」(シンクタンク系エコノミスト)との見方がぶつかり、先行きを不透明にすることを念頭に臨む必要があります。