言葉からひも解くマーケット

第79回「フィボナッチ61.8%水準」で底堅さ示すドル円

昨年後半は円高・ドル安、年明けから巻き返しへ

 

ドル円は昨年後半の下落の巻き返しで、下落幅の61.8%戻し前後の振れとなっています。同水準近辺のテクニカルな動きを注視しつつ、取り巻く材料も吟味して臨みたいところです。

 

ドル円は昨年、米連邦準備理事会(FRB)が高水準の金利を継続するとの見方が根強い一方、日銀の緩和継続観測を背景とした日米金融政策の格差を後押しに、11月13日に151.91円まで同年高値を更新しました(図表参照)。その前年2022年10月21日につけた同年高値151.95円に迫る上昇でした。ちなみに2022年高値は1990年7月以来、当時約32年ぶりとなる高値でした。

 

 

 

その高値が抵抗となり頭打ちとなった後に戻りをうかがいつつあるなか、米経済指標の鈍化とFRB高官の利上げ継続に懐疑的な見解も散見され始めて調整が進行。次第に日銀が緩和解除へ動くとの思惑も強まっていきドル安・円高が進みました。

 

植田日銀総裁からマーケットの誤解を誘うような「チャレンジング発言」も飛び出し、年末12月28日には140.25円まで下値を探りました。実に11円66銭の下落を演じています。

 

しかし年明けから状況は一変。年初の能登半島地震により「日銀が地震被害の影響を考慮して緩和に動きにくくなったのではないか」との見方が円安を後押ししました。

 

 

「フィボイナッチ61.8%水準」絡みの動き注視、一方で注意点も

 

ドル円は昨年後半の大幅な円高の反動のような円売り・ドル買いを進めました。1月5日に12月米雇用統計で非農業部門雇用者数が前月比21.6万人増と予想の17.0万人増を上回り、失業率が3.7%と予想の3.8%より強い内容だったことが判明すると、米長期金利の上昇とともにドル買いが進行。平均時給が前月比0.4%上昇/前年比4.1%上昇と予想の前月比0.3%上昇/前年比3.9%上昇を上回ったことも支援材料となり、一時145.97円都146円目前まで上振れました。

 

上昇はいったん落ち着きかけましたが、FRB高官から昨年後半の利上げ継続に懐疑的で早期利下げの見方にもつながっていた見解とやや異なり、早急な利下げに否定的な発言が目立ってきました。ウォラーFRB理事は16日、講演で「インフレが再燃しなければ、今年利下げは可能」としながらも、「インフレ率の低下が持続すると明確になるまで利下げを急ぐべきでない」「利下げは秩序立った慎重なペースで進めるべき」などと述べました。

 

その後もFRB高官からタカ派寄りの発言が相次ぎ、米雇用統計後の上振れでも抜けなかった昨年後半の下落幅に対する半値水準146.08円を突破。勢いづき同「61.8%水準」147.46円も攻略しています。

 

下押し場面を挟みつつも148円台へ上伸しました。ちなみに「61.8%水準」というのは「フィボイナッチ」数列という動植物など自然界の様々な比率(例;巻貝やDNA鎖の螺旋構造、植物の花弁の数など)にも呼応することが多いとされる水準から割り出した数値群です。61.8%や、同数値を100から引いた38.2%などが、反発や反落の値幅を推察する重要なめどとして多く用いられています。

 

148円台へ達した後の下押し局面で「フィボイナッチ61.8%水準」を割り込むこともあって、必ずしもガチガチで強力なサポートではありません。しかし重要な節目を超えた勢いの余波もあってか、割り込んでも「フィボイナッチ61.8%水準」超えに戻す動きが目立ちます。

 

テクニカル面の重要な節目付近では、テクニカル分析を駆使して短期売買を仕掛けるCTA(Commodity Trading Advisor・商品投資顧問)筋の動きなどが見られることもあります。今回の「フィボイナッチ61.8%水準」絡みの売買でそうした具体的な動きが観測されているかどうかは不確かですが、「ある動きに対してテクニカル分析が当てはまる」というだけでなく、「テクニカル分析の状態が当てはまりそうだから、それに則した売買を仕掛ける」ことで、言ってみれば自己実現的にテクニカル分析に則した動きになることもあります。

 

足もとの動きは「フィボイナッチ61.8%水準」を意識したような推移となっています。18日に高値圏とあって本邦輸出企業が背景と思われる円買い・ドル売りや、22日にも日銀金融政策決定会合を控えた持ち高調整が先行した場面で148円半ばへ下押した際、「フィボイナッチ61.8%水準」付近から戻し、底堅さを示す長い下ひげをつけたローソク足を形成しました。

 

23日の日銀金融政策決定会合をやり過ごした後には、日銀の緩和解除観測もあって146円台へ下振れました。しかし、やはり「フィボイナッチ61.8%水準」超えに戻す底堅さを維持しています。

 

当面はこの「フィボイナッチ61.8%水準」を意識した上下が続く可能性を意識して臨むべきかもしれません。ただ、テクニカル以外の材料も吟味しつつ対応しなければなりません。

 

「フィボイナッチ」数列が動植物のつくりや体の比率に対応するある意味不思議な数字だとしても、動植物に奇形を生じさせるような要因もこの世には存在します。マーケットにも「フィボイナッチ」数列に沿った動きを乱すような、いわゆる「罫線破り」の要因となるような材料が無数にあるからです。

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為替情報部 アナリスト

関口 宗己

1987年商品取引会社に入社、市場業務を担当。1996年、シカゴにて商品投資顧問(CTA)のライセンスを取得。 市況サービス担当を経て、1999年より外国為替証拠金取引に携わり、為替ブローキングやIMM(国際通貨先物)市場での取引を経験した。 その後、外国為替証拠金取引会社で市況サービスを担当した後、2006年2月にマネーアンドマネー(現・DZHフィナンシャルリサーチ)記者となる。日本テクニカルアナリスト協会検定会員(CTMA2)。日本ファイナンシャルプランナー協会AFP。 その他、社会科教員免許、特許管理士、ボイラー技師、宅地建物取引主任試験合格証などを所持。趣味では2級小型船舶免許、オープンウォーター・スキューバダイビング免許を取得している。

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