言葉からひも解くマーケット

【言葉からひも解くマーケット】第26回「ゼロコロナ崩壊」、足もとの楽観に危うさ

中国コロナ規制緩和で楽観的な反応先行

 

中国の新型コロナウイルス対策緩和が、金融マーケットのリスク選好要因となっています。しかし、感染状況の改善を十分にともなわない「ゼロコロナ崩壊」と評価する向きもあり、リスク要因に転じる可能性は無視できません。

 

中国政府は12月上旬、新型コロナウイルス感染封じ込めの厳しいゼロコロナ政策の大幅緩和を発表しました。経済活動の活発化を期待して、上海総合株価指数は緩和観測がささやかれ始めた11月初めから上昇へ転じ、12月に入って一時3200ポイント台まで上伸しました(図表)。

 

 

 

直近でも中国への入国者に義務づけてきた隔離の撤廃へ向けた動きを好感し、上海株は3100ポイント付近へリバウンド。10月に対ドルで一時は7.37元台で推移していたオフショア人民元は、12月に入り6.92元台まで人民元高が進みました。

 

中国経済活動の活発化による消費・エネルギーほか資源需要の回復を見越したポジティブな反応は、中国以外の資産市場にも及びました。日本ではインバウンド期待で小売・航空株が上昇。コモディティ相場の上昇を受けた資源国など新興国の株価・通貨も上昇。他通貨も対ドルで資源国通貨に連れ高となるなど、金融マーケットに幅広くリスク選好のムードが広がりました。

 

 

「ゼロコロナ崩壊」の状況、楽観が続くか不安も大きい

 

しかし、この動きが持続するのかどうか、大きな不安を抱えた状態といえます。中国の行動制限の緩和は、単にゼロコロナ政策が不必要な状態に改善してきたためではなく、主要都市で厳しすぎる規制対する抗議活動が強まったことへの配慮の一環といえます。抗議に屈した「ゼロコロナ崩壊」といえるでしょう。

 

「ゼロコロナ崩壊」の見方をうかがわせる一端として、首都・北京ほか中国本土で感染者が拡大していることが指摘されています。それにもかかわらず、中国政府は旅行需要喚起による景気てこ入れを意図して、北京で省や自治区を行き来する団体旅行の再開を発表しました。

 

1月下旬の春節(旧正月)連休による帰省・旅行増加に対応し、来月7日には特別輸送態勢「春運」も実施。コロナウイルス対策緩和により、旅客者数は2022年の約10億人から、1割以上も増加すると予想されています。一方で日本政府は、対中国の水際対策を再び強化する方針です。

 

春節の移動でコロナ感染がさらに拡大すれば、経済活動の活発化によるメリットより、感染が活動を再び停滞させ、経済に打撃を与えるデメリットが大きくなりそうです。中国政府はオミクロン株が重症化するリスクは比較的低い点などをアピールして、国民の不安を和らげる姿勢を採っています。しかし、感染拡大への対応が疎かになっているとのニュースが多く伝わってきます。国民が再び不満を高め、抗議行動に出ることが心配されます。

 

コロナ感染状況の改善が理由ではなく、「ゼロコロナ崩壊」の状態であることがより顕在化してくれば、中国だけでなく、楽観へ傾いてきた世界の金融マーケットにもネガティブな反動が強まるでしょう。エネルギー・資源需要への期待が後退すれば、資源国の株価・通貨や、連れ高となった他国の株・通貨にも期待はく落による売りが入るでしょう。

 

 

「ゼロコロナ崩壊」の不満、外交・軍事リスク高める可能性も

 

「ゼロコロナ崩壊」の行方の最悪なリスクシナリオは、各国にも影響を与える経済状況悪化にとどまらず、不満の高まりが抑えきれなくなった国民の目をそらすため外交面の問題を指摘して、最大の対立国・米国との軍事的な対立を強める事態などです。

 

台湾に関わる有事問題にでもなれば、地理的に日本が巻き込まれるリスクも高まります。1月の春節での感染拡大が関連することも意識してか、早ければ2月にも外交リスクが浮上するとの見方もあります。

 

何もなければ単なる陰謀論で片付けられるシナリオでしょうが、いずれにしろ現時点で楽観要因になっている中国のコロナ規制緩和が、「ゼロコロナ崩壊」によるリスク要因に転じる可能性に注意しなければなりません。

この連載の一覧
第98回「欧州政局不安」極右台頭がユーロを不安定に
第97回「メキシコ初の女性大統領」新政権下のマーケット・為替は不安定か
第96回「終幕は視野」日銀デフレ・ゼロ金利との闘い
第95回「2%到達の確信」有無が米金利・ドルの行方左右
第94回「イエレン発言」で釘刺され円買い介入しづらい
第93回「介入余力」残り7-8回分、介入以外の円安抑制措置が必要
第92回「日米韓共同声明」為替介入の可能性は?
第91回「なんちゃって介入」挟みつつドル高・円安の流れ追う展開
第90回「RBNZ vs マーケット」利下げ時期を探るNZドル
第89回「粘着性」しつこいインフレ、底堅い他指標の合わせ技でドル堅調か
第88回「為替介入実績」区切りの28日以降の動き注視
第87回「噂で買って事実で売る」 地で行った円相場  日銀 異次元緩和の転換局面
第85回「もしトラ」から「ほぼトラ」「確トラ」へ  トランプ氏スーパーチューズデー圧勝
第84回「日経平均株価が最高値更新」も、ドル円の上攻めもう一押し支援必要か
第83回「テクニカルリセッション」も円買い介入のため異次元緩和解除へ
第82回「日米労働市況格差」が示す円安・ドル高
第81回「FOMC投票権」メンバーのタカ・ハト変遷注視
第80回「IMF世界経済見通し」ドル>ユーロ>円 示唆か
第79回「フィボナッチ61.8%水準」で底堅さ示すドル円
第78回「Xリスク」トランプ復活が歪なマーケット急襲
第77回「地震の影響」「『異次元』解除」見極めつつ、足もとの「米CPI・PPI」も注目
第76回「利下げ議論」したFRB/しないECB差異でドル・ユーロに明暗
第75回「チャレンジングな状況」肩透かし、日銀マイナス金利解除を急がず?
第74回「チャレンジングな状況」日銀マイナス金利解除を後押しか
第73回「HICP」鈍化、ECB目標達成の前倒しも
第72回「コスト構造の変化」ユーロ圏経済を圧迫
第71回「引き締め効果」金利低下で後退、米政策金利は高止まりか
第70回「制約的スタンス」達成可否に注目
第69回「原油安」豪ドルなど資源国通貨は重い動きに
第68回「第1の力」→「第2の力」バトンタッチ確認できない日銀、円安も止まらず
第67回「悪い金利上昇」米長期金利5%、高位も安定欠きドル円は重いまま
第66回「リスクセンチメント悪化」NZドル圧迫、政権交代後への期待も支えとならず
第65回「中東リスク」日米休場マーケット急襲、複雑で問題長期化へ
第64回「JOLTS好結果」→「米金利上昇/ドル高・円安」vs『覆面介入?』に続く、三つ巴「米雇用統計」×「米金利・為替動向」×『介入有無』注視
第63回「原油高」1.5倍のドル買い・円売りインパクト
第62回「BOE利上げ打ち止め観測」→ECBの動向も影響
第61回「RBA(豪準備銀行)悪手」打つリスク
第60回「ファンダメンタルズから乖離」と主張しにくい円安
第59回「ジャクソンホール・キーワード」日米金融政策格差
第58回「前年度効果」はく落の影響が不透明、ジャクソンホールのインフレ終息宣言は難しいか
第57回「アメリカ経済ソフトランディング期待」も当局とマーケットの金利観ギャップではく落か
第56回「フィッチ・ショック」はショック?
第55回「サプライズ必至」だった日銀YCC修正を7月会合で決定も為替は円安、日銀緩和継続観測による円安続くか
第54回「サプライズ必至」の日銀YCC修正、7月は回避?
第53回「7月FOMC以降の追加利上げ」の有無を見据えて動き出すマーケット
第52回「米利上げ軌道維持」も単月の景気・インフレ指標に振らされマーケット不安定
第51回「元安」当局下支えも下落リスク継続 連れて円安加速も
第50回「行き過ぎた動きには適切に対応」円安への対処 口先から実弾へ移行するか
第49回「FEDピボット」と個別要因の複合判断が必須
第48回「3者会合ライン」140.93円 仕掛けたい投機筋
第47回「インフレ期待低下」ECB政策・ユーロ相場は神経質な局面
第46回「米利上げスキップ」の有無
第45回「フリーダム・コーカス」共和党強硬派が米債務上限交渉をかく乱
第44回「Xデー」前に米与野党にらみ合い
第43回「KBW地方銀行株指数」が鳴らす警鐘
第42回「新日銀総裁・初会合」改めて緩和継続を示唆し株高・円安か
第41回「米景気先行指数」で米株高なら日本株に好影響
第40回「YCC・マイナス金利継続」日銀・出口まだ、為替は米金融政策との兼ね合いもありCPIに注意
第39回「JOLTS」米雇用統計へ準ずる注目指標に
第38回「VIX」恐怖指数で金融不安のマーケットへの影響を判断
第37回「欧・米金融政策格差」ユーロ底堅いか
第36回「米銀破綻」金融政策への影響予想どっちつかずで不透明
第35回「FRB高官発言」欲望と恐怖の往復ビンタ
第34回「米利上げ長期化観測」根拠となった米経済指標の行方注視
第33回「FOMC投票メンバー」強いデータでタカ派へ傾斜
【言葉からひも解くマーケット】第32回「日銀新人事」確定目前、巻き戻しの円安
【言葉からひも解くマーケット】第31回「ECBタカ派姿勢」に揺らぎ
【言葉からひも解くマーケット】第30回「政府・日銀の共同声明」見直し、大幅な緩和後退とは限らず
【言葉からひも解くマーケット】第29回「次期日銀総裁」どう転んでも黒田総裁よりタカ派
【言葉からひも解くマーケット】第28回「日銀政策変更インパクト」0.25%でドル円は4円変動
【言葉からひも解くマーケット】第27回「インフレピークアウト」決め打ちはリスキー
【言葉からひも解くマーケット】第26回「ゼロコロナ崩壊」、足もとの楽観に危うさ
【言葉からひも解くマーケット】第25回「事実上の利上げ」日銀が市場を痛めつける
【言葉からひも解くマーケット】第24回「ドットチャート」FOMCの焦点
【言葉からひも解くマーケット】第23回「WTI原油先物」軟調、マーケットはリスク回避意識か
【言葉からひも解くマーケット】第22回「ゼロコロナ」八方塞がりでマーケット混乱が続くか
【言葉からひも解くマーケット】第21回「FOMC投票メンバー」からみる米金融政策の行方
【言葉からひも解くマーケット】第20回「逆CPIショック」でドル安が一気に進む?
【言葉からひも解くマーケット】第19回「ねじれ議会」米中間選挙でトリプル安リスク
【言葉からひも解くマーケット】第18回「ターミナルレート」ドル上昇持続性のヒント
【言葉からひも解くマーケット】第17回「インフレヘッジ」の為替取引
【言葉からひも解くマーケット】第16回「覆面介入」してる?
【言葉からひも解くマーケット】第15回「英国債」に振らされるマーケット
【言葉からひも解くマーケット】第14回「IMMポジション」円売り圧力 vs 本邦円買い介入
【言葉からひも解くマーケット】第13回「ポンド危機」再来?
【言葉からひも解くマーケット】第12回「日銀レートチェック」
【言葉からひも解くマーケット】第11回「フェドウォッチ」FOMC織り込み度
【言葉からひも解くマーケット】第10回 為替介入「断固たる措置」
【言葉からひも解くマーケット】第9回「天然ガス」が欧州経済やユーロ圏マーケットを荒らす
【言葉からひも解くマーケット】第8回「PCEコアデフレーター」インフレの落ち着き示すか
【言葉からひも解くマーケット】第7回「ソフトデータ」
【言葉からひも解くマーケット】第6回「タカ派・ハト派」のすう勢を注視
【言葉からひも解くマーケット】第5回「期待インフレ率」で市場は右往左往
【言葉からひも解くマーケット】第4回「逆イールド」は不安心理の現れ
【言葉からひも解くマーケット】第3回「織り込み度」
【言葉からひも解くマーケット】第2回「円安デメリット」
【言葉からひも解くマーケット】第1回「中立金利」

為替情報部 アナリスト

関口 宗己

1987年商品取引会社に入社、市場業務を担当。1996年、シカゴにて商品投資顧問(CTA)のライセンスを取得。 市況サービス担当を経て、1999年より外国為替証拠金取引に携わり、為替ブローキングやIMM(国際通貨先物)市場での取引を経験した。 その後、外国為替証拠金取引会社で市況サービスを担当した後、2006年2月にマネーアンドマネー(現・DZHフィナンシャルリサーチ)記者となる。日本テクニカルアナリスト協会検定会員(CTMA2)。日本ファイナンシャルプランナー協会AFP。 その他、社会科教員免許、特許管理士、ボイラー技師、宅地建物取引主任試験合格証などを所持。趣味では2級小型船舶免許、オープンウォーター・スキューバダイビング免許を取得している。

関口 宗己の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております