原油相場のマーケットへの影響理解すること必須
原油価格の動向が、産油国・資源国通貨の動きを左右し、ドル相場を含む為替市場全体の振れにつながる場面がしばしば見受けられます。原油の高安が石油株を含む株式動向に与える影響も含め、原油相場の行方に金融マーケット参加者は注目しています。
足もとで「WTI原油先物」など原油価格は軟調。原油相場がリスクセンチメントに与える影響を理解した上で、マーケットの先行きを判断することが必須となります。
「WTI原油先物」世界の価格指標
世界の原油相場の指標価格となるのが「WTI原油先物」です。WTIとはウエスト・テキサス・インターミディエートの略で、米国テキサス州西部からニューメキシコ州南東部にまたがる地域を中心に産出される硫黄分が少ない良質な原油がWTI原油です。
WTI原油の先物がニューヨーク・マーカンタイル(商業)取引所(NYMEX、呼称ナイメックス)に上場されており、世界で最も盛んに取引されている原油先物です。世界の原油価格において最重要視される価格指標の1つとなります。
先物取引は、現物の受け渡しもできる取引の期限となる月「限月」ごとに区切られて売り買いされます。ニュースで扱われる「WTI原油先物」の価格は、各限月のうち最も取引が活発に行われる「中心限月」の価格です。「WTI原油先物」を含め海外の先物取引で中心限月となるのは、取引期限の近い「期近」限月となります。
「NY原油、11カ月ぶり安値」などとニュースのヘッドラインで取り上げられるのは、このNYMEXで取引されている「WTI原油先物」中心限月の価格です。単にNY原油先物、NY原油と呼ばれることも多くあります。
「WTI原油先物」軟調、産油国通通貨ほかドルなど為替相場に影響
「WTI原油先物」は3月には、史上最高値140ドル台をつけた2008年以来の水準となる130ドル台へ上振れ後、戻りを試す場面を挟みつつ次第に下落を強めています。11月後半から12月にかけ、昨年12月以来の安値73ドル台まで水準を下げる場面がありました(図表1)。
直近では石油輸出国機構(OPEC)およびOPEC以外の主要産油国を含む枠組み「OPECプラス」の減産継続や、中国のゼロコロナ政策緩和による需要回復への期待で「WTI原油先物」が戻すこともありました。カナダドルなど産油国や豪ドルなど資源国通貨の上昇にもつながり、アメリカドルが相対的に弱含む要因にもなりました。
しかし、原油相場の軟調な流れに大きな変化はありません。アメリカの金融引き締めが利上げペースを緩めながらも継続して需要を抑えるとの見方や、中国ほか原油など天然資源への世界的な需要の先行きに対する不透明感が依然として拭いきれない点が重しとなっています。欧州連合(EU)加盟国が、ロシア産原油の上限価格を1バレル=60ドルに設定することで合意したとのニュースが材料視されたりもしました。
NY株オープンにも影響、時間外取引の動向も注意
原油価格の上下自体も、原油価格下落=リスク回避、価格上昇=リスク選好と、金融マーケットのリスクセンチメントを先導する指標としてみられる部分あります。前述のように産油国・資源国通貨の振れにつながり、裏返しとして為替市場においてリスク回避のドル買い、リスク選好のドル売りが強まる要因となります。
株式市場でも、原油価格の上下が石油関連企業の株価に影響して、原油高とともに石油株が買われたりします。BP(ブリティッシュ・ペトロリアム)やロイヤルダッチシェルなど石油関連企業が大きなシェアを握るイギリスなど欧州株の地合いを方向づけ、その後にオープンするNY株式市場オープンに向けたムードを形成する材料となることもあります。NYMEXにおける日中のピット内での通常取引の値動きだけでなく、時間外に電子取引で行われる売買の価格動向が、マーケットへ影響を与える点にも注意しなければなりません。