「ねじれ議会」でインフレ対応など米政策の立案困難に
現地8日投開票の米議会中間選挙を受け、バイデン政権は政策運営で今後より苦境を強いられそうです。民主党優位の議会勢力は現状以下へ転じる見込み。株安・債券安(金利上昇)・ドル安の米トリプル安のリスクを高めます。
不十分なインフレ対応が国民の不満を高めています。中間選挙における民主党苦戦もインフレ対策への批判が大きな要因となっています。議会の優位性を失い、金融マーケットの動向へ大きな影響を与えるインフレ対策ほか、景気対策など政策の立案が困難になるでしょう。
任期6年の上院は100議席のうち、2年ごとの3分の1議席改選に相当する35議席を対象に、州の代表2名を選出する戦いとなります。改選前の状況は民主党50議席・共和党50議席で拮抗。上院議長を兼任するハリス副大統領の票も含めて民主党優位となっていました。五分五分の情勢が続きそうで、50%以上の票を得た候補者がいない場合に決戦投票となる制度がある2州のうち、今回はジョージア州が激戦州となっています。
同州を含めて7州で激戦が予想されており、決着に時間がかかる可能性も高い状況です。集計に時間がかかりやすい郵便投票を民主党支持者が志向しやすく、共和党支持者が直接投票を好む傾向がある点も、結果判明を遅らせるとの指摘があります。
一方、下院は人口比率・動態に応じて区分された小選挙区の435議席すべてが改選対象です。こちらは政局の現状を即座に反映しやすく、現政権への不満を背景に共和党が多数を占めるとみられています(表1)。
対応遅れインフレ高進なら米株安・債券安・ドル安
仮に、上院で民主党がどうにか優位を維持できても、下院で共和党が優位となると、勢力のねじれ状態が生じます。民主党大統領のもと、上下両院とも共和党が優位となる場合よりは、ねじれの悪影響は軽減できるかもしれません。しかし、上院・下院がほぼ等しい権力を有する米議会では、下院だけでも共和党が優位を確保するとなれば、民主党政権による立法・立案は相当困難になります。
共和党が下院で優位となるだけにとどまっても、バイデン大統領の支持率が39%へ低下と、5・6月につけた就任後の最低水準36%に再び迫る落ち込みとなるなかでは、ねじれの逆境を克服するのは難しそうです。金融マーケットにとっては、景気対策やインフレ対策の遅れが圧迫材料となるリスクが気になるところです。
インフレ抑制が遅れれば、米金利の上昇がより鮮明となってくるでしょう。株価を押し下げる要因になりそうです。金利上昇はドル相場にとっては下支えになる面があると捉えることはできます。しかし、ドル円には株安によるリスク回避の円買いも入ると考えられ、ドル高圧力を相殺することになるでしょう。
それだけでなく、金利上昇が顕著ななかでは、債券売りにともなうドル資産売りの意識が高まりそうです。米株の売りと併せ、米債売りをともなうドル資産売りリスクの印象が強まれば、これまで底堅さを維持してきたドル相場のトレンドも転換しかねません。
米中間選挙での民主党不利は事前にある程度予想されており、金融マーケットでは結果をおおむね織り込んでいるとの声も聞かれます。しかし、下押しを挟みつつも歴史的にみればまだ高値圏といえる米株や、14年ぶりの高水準となった米長期金利、対円で32年ぶりの高値をつけたドル相場の巻き戻しのきっかけとなるリスクには留意しておくべきでしょう。