米大統領選は共和党候補トランプ氏が勝利へ、上・下院の共和党優位トリプルレッドも視野にいれた動きとなり、「トランプトレード」とされる株高・米金利上昇・ドル高が進み始めました。しかし人工知能(AI)の先導もあったこの動きの継続性「トランプトレードの賞味期限」が、ここからの焦点となります。投資家心理が追いつかないような激しい反動にも留意して臨むべきかもしれません。
米トリプルレッドも視野に「トランプトレード」進展
現地5日投開票の米大統領選におけるトランプ共和党候補の優位が伝わり、6日東京タイムの為替市場では「トランプトレード」とされる減税や景気浮揚策が米経済へ恩恵をもたらすことを見越した米金利上昇・ドル高を織り込む動きが進み始めています(図表1)。
ドル円は、大統領選を控えたテレビ討論会において互いのマイナス点を非難し合った後の世論調査でハリス民主党候補が優位となった局面では140円割れまでドル安が進む場面もありました。しかし、足もとではその時期の水準を大きく上回り、7月末以来の154円台を回復しています(図表2)。
大統領選の勝利とともに、米上下院いずれも共和党優位となるトリプルレッドも視野に入れた状態となってきたことで、政策の実行性も高まると期待されています。「トランプトレード」が進みやすい状態でした。
ここからは「トランプトレードの賞味期限」を吟味
ただ、ここからの焦点は米株高・ドル高が続くかどうかの継続性、「トランプトレードの賞味期限」となります。政策実行の裏付けとなる財源確保のための国債発行が債券価格の低下(金利は上昇)につながるところは規定路線でしょう。
一方で、政策が一時的な景気浮揚を誘い株高につながっても、米金利の上昇は米株市場にとって重しになります。拡張的な財政状況がいき過ぎと認識されれば、ドルの価値低下を招くとして巻き戻しのドル安が進む可能性もあります。
トランプ政権後に想定できる状況を、感情なく短絡的に人口知能(AI)を駆使したアルゴリズム取引が織り込んだ動きに対して、今後のマイナス面がより意識される状況となれば反動の動きも相応に激しいものになりそうです。対中関税など対外的な措置がインフレにつながり圧迫要因になるとの懸念もあります。
大統領選へ向けた局面で選挙戦の過熱を演出したのは米メディアの報道姿勢によるものだった面も多分にあります。激戦による関連報道の過熱がビジネス的にも好ましいとするメディアが、ハリス氏の経歴やこれまでの職務内容についての報道は同氏にとって不利に働く可能性もあるとして接戦演出のために伝えるのを回避していたとの憶測もあります。
そうした米メディアが、空けてみればトランプ・共和圧勝の凡戦に終わった選挙を材料として食い尽くし、次のネタとして財政状況の悪化を取り上げれば、報道フレーズに反応したAIが激しい揺り戻しを後押しするといったリスクにも気をつけなければなりません。
このような背景を踏まえ「トランプトレードの賞味期限」を吟味する展開となってきそうです。投資家の感情が追いつかないようなAIによる激しい動きに翻弄される状況も念頭に置いて臨む必要があるでしょう。