BOE利上げ確実視も打ち止め観測台頭
今回のイングランド銀行(BOE、英国中央銀行)金融政策決定における利上げは確実視されているものの、ECB利上げ打ち止め観測の影響もあり「BOE利上げ打ち止め観測」が浮上。ポンドは売りが先行しそうですが、ユーロが急落後に下げ渋った動き同様に、徐々に買い戻しが入る展開も視野に入れつつ臨む局面かもしれません。
9月21日、BOEは金融政策発表を行い、政策金利を0.25%引き上げて、2008年以来、15年ぶり以上となる高水準(図表参照)5.50%にすることが確実視されています。前週の12日に発表された5-7月の「ボーナスを除く平均賃金」は、前年比で+7.8%となり、前回の4-6月期と比較して横ばいでしたが、水準的には2001年以来最も高い伸び率を維持していました。賃金インフレの抑制が必要であるとの判断が下されそうです。
15回の連続した会合での利上げが確定視されていますが、インフレ指標として重要視される消費者物価指数(CPI)は、原油高の影響が除かれたコア指数を中心に落ち着く傾向が見られます。ベイリーBOE総裁は6日に行われた英議会財務委員会の年次報告で、「インフレの低下がかなり顕著になる可能性がある」と述べ、インフレに対して楽観的な見方を示しました。
13日に発表された7月の英国内総生産(GDP)は、前月比で-0.5%となり、今年最大の落ち込みとなりました。これにより、従来の「来年第1四半期にも追加利上げ」との見方から、「今回の9月にBOE利上げが打ち止めになる」との見方に転じつつあります。ベイリーBOE総裁は前述の年次報告で、「金融引き締め政策はおそらく、サイクルの頂点付近にある」とも述べていました。
GDPの減速には、医療関係者や学校教員のストライキが大きく影響したとされています。BOEの想定以上に景気が悪化している一方で、悩ましいのは成長の落ち込みに依然として高水準なインフレも大きく影響している点です。BOEは、景気を考慮した利上げ打ち止めと、物価を考慮したインフレ期待抑制のための政策金利の方向性を示す難しい状況に迫られています。
ECB利上げ打ち止め観測もBOE見通しに影響
これらの状況の中で、欧州中央銀行(ECB)の利上げ打ち止め観測が台頭し、BOE利上げ打ち止めの思惑を後押ししています。ECBは14日、政策金利を0.25%引き上げて、政策金利を4.50%に決定しました。しかし、市場ではECBが利上げを打ち止めするとの見方が強まっています。
今回のECBの政策決定については、事前のマーケット予想が金利を据え置くか、4.50%に引き上げるかで拮抗していました。その中でECBは利上げを断行し、一時的に出尽くし感が生じました。声明では「現在の評価を踏まえ、理事会は政策金利が十分に長期間維持されれば、インフレ率が目標に適時に戻るのに十分に資する水準に達したと考えている」と指摘しました。
ECBは見通しで2023・24・25年の成長予想を0.7%・+1.0%・+1.5%と、前回の6月会合時のそれぞれ0.2%、0.5%、0.1%引き下げました。ラガルドECB総裁は理事会後の会見で、「景気は今後数カ月、低迷が続くだろう」「経済成長に対するリスクは下方に傾いている」と述べています。弱気な景気見通しもあって、市場では「現在の利上げサイクルが終了」との観測が強まりました。
インフレの落ち着きと景況の不透明感から、ECBの利上げ打ち止め観測が浮上しています。BOEも同様の判断のもと、利上げ打ち止めに傾くとの思いを市場が抱きやすい状態です。
ただし、通貨ユーロはECB利上げ打ち止めとの見方を受けて大きく売り込まれた翌日以降は下げ渋る傾向が続いています。15日、ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁は「利下げは議論していない」と述べたほか、「金利についてはデータ次第」と改めて強調したことなどが買い戻しを誘いました。もっとも、依然として大きく売り込まれた後の調整の域との見方もあります。
英国の通貨ポンドも利上げ打ち止めを示唆するような内容が示されれば、まずは売りが先行しそうです。その後はユーロのように調整の買い戻しのきっかけを探る展開でしょうか。ユーロ急落局面での連鎖安や、ECB同様に「BOE利上げ打ち止め」との連想で、すでに対ドルで6月以来、3カ月ぶりの安値圏1.23ドル台まで売り込まれているため、「BOE利上げ打ち止め観測」の強まりにもかかわらず、買い戻しがしっかりめに入る展開も想定すべき難しい反応を示すかもしれません。