「利下げ議論」したFRB、ハト派姿勢でドル軟調
年内の主要中央銀行による金融政策発表が軒並み終了しました。年内最後の金融政策決定イベントで「利下げ議論」した米連邦準備理事会(FRB)と「利下げ議論」なしの欧州中央銀行(ECB)、この差異はドルとユーロの足もとでの足取りの違いにつながっています
まず米現地12月13日、FRBは金融政策決定イベントである連邦公開市場委員会(FOMC)で事前の見込み通り政策金利であるフェデラル・ファンド・レート(FF金利)の誘導目標レンジ5.25-5.50%の据え置きを決定しました。FOMC参加メンバーによる政策金利見通し(ドット・チャート)では2024年末時点の中央値を5.125%(5.00-5.25%)から4.625%(4.50-4.75%)に下方修正。来年3回の利下げを想定していることが示されています。
この決定発表後の記者会見でパウエルFRB議長は「インフレは緩和したものの、依然として高すぎ」「FOMCは適切であれば追加引き締めの用意」としながらも、「きょうの会合で『利下げのタイミングを議論』」「FOMCは現状維持が長すぎる場合のリスクを認識」などと語っていました。
FRBがハト派へ傾いたとの認識でマーケットはドル売りに反応。ドル円は145円台から一時141円割れへ下振れました(図表1)。
「利下げ議論」なしECB、タカ派傾向がユーロ下支え
一方で翌14日、ECBは金融政策決定理事会において2会合連続で政策金利4.50%の据え置きを決定。こちらもマーケットの予想通りでした。
ポイントは理事会後の記者会見でラガルド総裁が「利下げについて全く議論しなかった」と述べた点です。「利下げ議論」に対してFRBとまったく異なる見解。物価の上昇圧力は弱まっておらず「絶対に警戒を引き下げるべきではない」としています。
欧州の景気後退を理由に、利上げ打ち止めから利下げサイクルへ移行するとの見方も浮上していました。しかし、それが否定された格好です。
タカ派傾向と受け止められたこの内容を受け、ユーロは対ドルで上昇。前日13日のFOMC後のドル売りもあってすでに1.09ドル台までユーロ高・ドル安が進んでいたにもかかわらず、さらに1.1ドル台まで急伸しました(図表2)。
その後もFRB/ECBの「利下げ議論」なし/ありの影響は色濃く残りました。ドル円は日銀が思ったほどタカ派ではなかったとのマーケットの受け止めから145円目前まで戻す場面を挟みつつも時折142円割れとなる戻りが鈍い状態となっています。
他方、ユーロドルは欧・米「利下げ議論」の行方の差異を反映し、景気への懸念から下押しつつも8月10日以来、約4カ月半ぶりの高値1.1040ドルまでユーロ買い・ドル売りを進める底堅さを維持しています。当面はこの「利下げ議論」あり/なしを反映した地合いにより、ドルとユーロは異なる足取りをたどりやすいでしょう。