タカ派ボスティックが想定外のハト派発言
米連邦準備理事会(FRB)高官の発言に一喜一憂して、米金利が上下する事態となっています。ハト派(金融緩和支持派)な発言を受け、米金利は低下の流れへ転じました。しかし、その後はタカ派(金融引き締め支持派)な見解を背景に、金利水準が持ち直しています。
まず2日、従来タカ派とされるボスティック米アトランタ連銀総裁が、「米連邦準備理事会(FRB)による利上げの影響が本格的に発現するのは今春以降となる可能性がある」と述べたうえで、「この点が当面は0.25%の緩やかな利上げを行う根拠になる」と発言しました。
市場では「21-22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅が0.50%に拡大する」との観測が浮上していたこともあり、米10年債利回りは一時4.0893%前後と昨年11月10日以来の高水準まで上昇していました。しかし、タカ派なボスティック総裁から想定外のハト派な見解が飛び出すと、米金利低下の流れへ転じました(図表)。
米金利の低下は6日の3.89%台まで続き、為替はドル安となりました。ドル円は、一時135.37円まで下落。一方で米株は買われ、ダウは続伸してS&P500やハイテク株主体のナスダック総合指数は反発しました。
タカ派パウエル発言で米金利上昇へ転じる
しかし、7日のパウエルFRB議長によるタカ派な発言を受け、米長期金利は4%台を回復。ドル相場は持ち直し、米株は売り地合いへ反転しました。
パウエル議長は「最新の経済データは予想より強く、金利の最終到達水準(ターミナルレート)が従来想定より高くなる可能性が高いことを示唆」「経済データが全体として、より速い引き締めペースを正当化するのであれば、利上げペースを加速させる用意がある」と述べました。
米金利の上昇を受けたドル反発で、ドル円は138円回復をうかがう様相となりました。他方で米株は売り地合いを強めてダウは大幅反落。先んじて調整で頭打ちとなっていたナスダック総合指数も大幅に続落しました。
「FRB高官発言」受けた欲望刺激と恐怖が交錯
米金融政策の行方に不透明な部分を抱えるなか、マーケットは確信が持てずに目先の「FRB高官発言」に揺さぶられる状態です。ハト派な発言で米金利が低下すればドル安が進む一方で、株式市場では金利低下で生まれる投資資金の調達余力が利益追求の欲望を刺激します。
しかし、ひとたび金利が上昇すれば、ドル相場は持ち直しますが、株式市場では買いポジション維持への恐怖が強まり、調整が入りやすくなります。株価の上下にともなうリスクセントメントの変化が、為替相場のリスク選好・回避の状況にフィードバックして方向感の判断を難しくしたりもします。
欲望と恐怖が背中合わせの状態で、「FRB高官発言」を受けた一喜一憂は続きそうです。7日のタカ派なパウエル発言後、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループ公表のFF金利先物の動向からFOMC政策金利変更の実現確率を算出するツール「フェドウォッチ(FedWatch)」は、3月FOMCでの0.50%利上げ確率が前日の31%から70%に急上昇しました。「FRB高官発言」と米利上げ織り込み度をにらみ、欲望・恐怖を天秤に掛ける不安定な状況の継続が予想されます。