「豪CPI」結果の受け止め方に注意必要
「豪消費者物価指数(CPI)」は市場予想を上回り、直後は豪ドルに買い戻しが入りました。しかしCPIの伸び鈍化が続く流れにあるため、豪ドルの持続的な買いにはつながりにくいとみます。
「豪CPI」の市場予想比の強弱への一次的な反応と、大きな流れへの影響を切り離して考えることが必要でしょう。あとは他国との金融政策の方向性によって、豪ドルの強弱が決まってきそうです。
28日午前発表の7月豪消費者物価指数(CPI)は前年同月比+3.5%と、+3.4%前後の伸びを見込んでいた市場予想より強い結果となりました。これを受け、豪ドルは対ドルで0.67ドル後半から一時0.68ドル前半へ、豪ドル円は97円後半の中段のもみ合い状態から98円前半へ上振れる動きとなっています(図表1、2)。
しかしCPIは、前月6月分の改定値+3.8%よりも伸びが鈍化。伸び鈍化は2カ月連続で、2022年12月につけた直近のピーク+8.3%からの鈍化の流れを再開しつつある状態といえます(図表3)。
豪準備銀行(RBA)のインフレ目標レンジ2-3%を上回る水準で、市場予想よりも強い結果となったことが目先的に買い戻しを誘った格好といえます。しかし必ずしも物価の持続的な強まりを感じさせる状況とはいえず、CPI発表後の上昇の勢いはほどなく落ち着きました。
日足ベースなどでみた中長期的な流れからみても、CPIを材料とした一段の相場の強まりは感じにくいといえます。対ドルではカンザスシティ連銀主催の年次経済シンポジウムいわゆるジャクソンホール会議でパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が利下げ開始を示唆したことによるドル売り・豪ドル買いを支援に底堅いものの、7月にいったん頭打ちとなった0.68ドル付近を上抜けきれない状態にまだとどまっています(図表4)。
対円では戻りがより鈍く、現状では97-98円レンジでもみ合っています(図表5)。8月初めに円買い戻しが急速に進んだ場面で90円割れをどうにか回避したところから戻した流れが停滞している感があります。
金融政策の方向性から対ドルで底堅く、対円で重いか
8月6日のRBA理事会後の会見でブロック総裁が「利上げを検討した」と述べたこともマーケットの地合いを神経質にして、今回の市場予想を上回った「豪CPI」発表直後における豪ドル買いの反応を強めた一因といえます。しかし予想を上回って一時的に買い戻しを誘ったとはいえ、持続的な物価上昇の強まりが確認できないなかでは、昨年11月以来となる利上げを再開するまでには至らないでしょう。
RBA総裁の利上げ検討発言は「金融市場が年内の利下げを織り込んできたことに対するけん制」(シンクタンク系エコノミークラス)との見方もあります。マーケットが利下げへの期待を前のめりに強め、物価再上昇の抑止力を弱めるリスクを懸念した議論が行われた可能性はあり、ブロック総裁がその点を強調してマーケットへ釘を刺しただけと考えられます。
RBAに物価再上昇けん制の意向があるとはいえ、実際に利上げ再開へ動くとは考えにくいでしょう。ただ、豪物価動向を材料とした豪ドル買いが進みにくくとも、9月の米利下げに対する地ならしが進むなか、対ドルで豪ドルが底堅く推移することは期待できます。
一方、対円では重い推移が想定できます。やはり金融政策の方向性が材料で、RBAが利下げ期待をけん制しなければならない状態である一方、日銀に関しては利上げの思惑が高まりやすくなっていることが豪ドル円の上値を抑えがちでしょう。