にわかに高まった米利上げ織り込み
米利上げ継続観測がにわかに高まり出し始めています。前回5月2-3日の連邦公開市場委員会(FOMC)で予想通り0.25%の利上げが決定された直後、次回6月13-14日の会合における金利据え置きの予想確率は9割方、その後は一時100%近くまで高まっていました。1週間ほど前でも7割以上でしたが、5月30日時点で利上げ予想が6割を超える事態となっています(図表参照)。
前週5月26日、米連邦準備理事会(FRB)が金融政策の判断材料として最重要視するインフレ指標の4月個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)コア指数が前年比+4.7%と、3月並みの伸びを見込んでいた市場予想の+4.6%を上回ったほか、5月30日発表の5月米消費者信頼感指数が102.3と、99.0程度の数字を見込んでいた市場予想に反して節目の100を回復。4月分発表時点の101.3を上回る好結果となったことなどが利上げの思惑を高める一因となったようです。(※前回4月分の米消費者信頼感指数は5月分発表とともに103.7へ上方修正)
米利上げ観測の高まりでドル堅調、ダウ重い
米利上げ観測の高まりを背景に、ドル相場は堅調に推移しました。ドル円は140.90円台まで年初来高値を更新。昨年11月以来、約半年ぶりの水準に達していまし。ドル相場の総合的な強弱を示すドルインデックスも3カ月ぶりの高水準104ポイント台に乗せました。
一方、米株は利上げ観測の浮上に債務上限問題の不透明感も相まってダウ平均は5月25日まで5日続落。メモリアルデーを控えた週末26日は調整の買い戻しが入ったものの休場明けの30日には反落しています。ナスダックもエヌビディアの好決算に押し上げられ大幅反発するまでは、やはり重さが意識される動きでした。
金利引き上げ織り込んだ市場が「利上げスキップ」で巻き戻し余儀なくされるリスクも
ただ、素直に利上げの見方を受け入れてよいか迷いやすい状況であるのも確かです。24日公表の前回5月2-3日開催分のFOMC議事要旨では「追加利上げ支持に関して当局者の意見は分かれた」としつつも、「当局者らはインフレ率が依然として容認できないほど高いことに同意」と、インフレへの警戒感が強く示されました。その後、コアPCEデフレーターの伸び率が高まったことも確認できています。
議事要旨公表に先がけ24日、ウォラー理事も「今後のデータは6月の利上げを裏付ける可能性がある」と述べていいました。しかし「6月か7月の利上げを支持する可能性」と、時期について1回「利上げスキップ」の選択肢に言及していた点には留意が必要かもしれません。
今年のFOMC金融政策決定の投票権を有するミネアポリス連銀のカシュカリ総裁も「インフレ率が高止まりした場合、追加利上げが必要」としつながらも「経済に関するデータが、もう少し必要」と慎重さをにじませる発言をしていました。インフレへの警戒感を維持しつつも、指標内容を吟味して抑制のための利上げペースを決定すべきとの姿勢が伝わってきます。
今後の利上げを視野に入れておくべきインフレ状況といえますが、6月会合での「利上げスキップ」の可能性も念頭に置いて臨んだほうがよいでしょう。相応に政策金利の引き上げを織り込んだ金融マーケットが「利上げスキップ」による巻き戻しを余儀なくされるリスクがあります。
FRB高官の発言を注視するとともに、インフレ動向にも大きく影響を与える労働市場の動向を見定める上で、今週末の米5月雇用統計ほか関連の雇用関連指標がマーケットに与える影響が注目される局面といえます。