言葉からひも解くマーケット

第65回「中東リスク」日米休場マーケット急襲、複雑で問題長期化へ

ハマスのイスラエル攻撃で「中東リスク」炎上、マーケットでは回避行動が強まる

 

イスラム組織ハマスのイスラエル攻撃を受けたリスク回避でドル円は米債買い・金利低下などから下値を探る動き。解決困難な「中東リスク」炎上がマーケットを圧迫する地合いが続きそうです。

 

週明け10月9日、東京市場はスポーツの日で休場でした。NYやカナダなど北米市場の休場も控えていたため金融市場も動意の鈍いスタートが想定されていました。

 

しかし現地7日にパレスチナ自治区ガザ地区を支配するハマスがイスラエルに大規模な攻撃を仕掛けたとの「中東リスク」報道が週末に伝わりました。週明けのマーケットはリスク回避姿勢を強めて始まりました。

 

地理的に遠い「中東リスク」のニュースとあってアジアの反応はやや切迫さを欠くようにも思えました。とはいえドル円はリスク回避の円買いから下方へややギャップを空けて取引を開始。アジアタイムに一時149円割れまで下値を探っています。

 

当初はリスク回避のドル買いも出ていたことがドル円の下落幅拡大を抑制していた面もありました。しかし欧米タイムに入るとリスク回避目的の債券買いによる米金利低下を見越すようにドルが軟化し始めました。

 

ドル売りの動きが目立ち始めると対ドルでユーロなど他通貨が買われました。実際に東京・NY休場明けの翌10日、時間外取引で米債が動意を再開すると前週末4.8%台で推移していた米10年債利回りは4.62%割れへ下振れてスタート(図表参照)。ユーロ円などクロス円も米金利低下を支援とした対ドルでの各通貨上昇に連れ高となり上昇へ転じました。


 

9日に米連邦準備理事会(FRB)高官のハト派な発言が伝わったことも米金利低下を誘いました。米連邦公開市場委員会(FOMC)における今年の金融政策決定の投票権を有するローガン・ダラス連銀総裁は「米長期債利回りの急上昇は金融当局による追加利上げの必要性を減らす可能性がある」と述べ、米連邦準備理事会(FRB)理事のジェファーソン副議長も「利回り上昇の引き締めへの影響に留意」「リスクバランスが改善する中、FRBは慎重に進むことが可能」と発言しています。

 

米・日金融政策の方向性の状況変化に敏感なドル円は、クロス円の他通貨高・円安に連動できませんでした。リスク回避の円買いが尾を引くなか、他のドル売り材料も重なる格好となりドル円は一時148円前半まで下落が進みました。

 

宗教も絡む中東情勢は常に問題が複雑です。今回もイランがハマスのイスラエル攻撃への関与を否定する一方でイラン最高指導者ハメネイ師がハマスの攻撃を称賛するなど対立構造は多層的。「中東リスク」解決の糸口は見出しにくいでしょう。

 

 

原油高を受け産油国・資源国通貨など他通貨高・ドル安も

 

「中東リスク」には原油相場の動向が金融マーケットへ与える影響もつきものです。NY原油先物は前週の下げ幅をほぼ1日で戻す87ドル台まで急上昇しました。

 

紛争地域に主要な産油地帯が含まれていないこともあり原油高には早々に一服感も生じています。しかしイランやハマスは、対立するイスラエルと関係正常化へ動いている主要産油国サウジアラビアにも反感を抱いています。サウジの油田施設や石油関連の物流に対するテロへの警戒感がくすぶっています。

 

「中東リスク」が強まったなかでも前述のように対ドルで各通貨が上昇した背景には、原油高にともないカナダドルなど産油国通貨ほか資源国通貨が買い戻され、他の通貨が連れ高となりドルが圧迫された面もありました。

 

対立構造が複雑で終結が容易ではない「中東リスク」。問題が長引きリスク回避圧力が残存する状態にしばらく悩まされそうです。

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第117回「日米新政権の親和性」に不安、金融混乱を懸念
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為替情報部 アナリスト

関口 宗己

1987年商品取引会社に入社、市場業務を担当。1996年、シカゴにて商品投資顧問(CTA)のライセンスを取得。 市況サービス担当を経て、1999年より外国為替証拠金取引に携わり、為替ブローキングやIMM(国際通貨先物)市場での取引を経験した。 その後、外国為替証拠金取引会社で市況サービスを担当した後、2006年2月にマネーアンドマネー(現・DZHフィナンシャルリサーチ)記者となる。日本テクニカルアナリスト協会検定会員(CTMA2)。日本ファイナンシャルプランナー協会AFP。 その他、社会科教員免許、特許管理士、ボイラー技師、宅地建物取引主任試験合格証などを所持。趣味では2級小型船舶免許、オープンウォーター・スキューバダイビング免許を取得している。

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