FRBが最重要視するインフレ指標「PCEコアデフレーター」
今週末8月26日に7月米個人消費支出(PCE)・個人所得といった家計状況のデータとともに、個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)が発表となります。米連邦準備理事会(FRB)がインフレ動向を判断する上で重視する同指標の強弱が、今後の連邦公開市場委員会(FOMC)の金融政策の方向性を探る重要なヒントになるでしょう。
同デフレーターは個人消費出の増減が消費対象物の価格変動により増減する影響を取り除き、実質的な消費の変動を算出するために用いられるデータです。消費目線でのインフレ指標の代表的なデータの1つ消費者物価指数(CPI)より、幅広い品目・項目に及ぶデータが対象となっています。
なおかつ、消費関連のデータではありますが、消費者の購入品や利用するサービスの価格変動を調査したCPIと異なり、PCEデフレーターは企業や政府が負担して消費者が恩恵を受けるようなサービス全額の価格も対象に含んで調査した内容となります。(例;医療費などは、CPIが消費者の負担分の価格動向が対象。PCEデフレーターは政府などによる公的負担部分の価格変動も対象。)
調査地域についても、CPIが都市部の価格動向を調べたものであるに対して、PCEデフレーターは全国の動向が対象です。わかりやすくいえば、対象品目と地域の広さがPCEデフレーターの特徴といえます。
このような内容が、PCEデフレーターがより信頼度の高い物価指標と考えられる理由です。さらに価格の振れが大きな食品・エネルギーを除いたのがコア指数=「PCEコアデフレーター」です。FRBは、物価動向の判断において、この「PCEコアデフレーター」を最も重視しています。ただ、CPIと比べてPCEデフレーターは、その集計方法の煩雑さゆえ、発表がやや遅めとなります。
マーケットは「PCEコアデフレーター」の伸び鈍化を予想
CPIの月次データは、PCEデフレーターに先がけ翌月前半から半ばに発表されます。先行指標といえる同指標は10日に発表された7月分のエネルギーと食品を除くコア指数が前年同月比+5.9%と、市場予想の+6.1%より鈍化。大幅利上げの観測が足もとでいったん後退する要因となりました。
その後12日発表のミシガン大学調査による1年先のインフレ期待値も、8月速報分で5.0%と事前予想の5.1%や前回の5.2%を下回りました。5年先のインフレ期待が3.0%と予想の2.8%を上回り、前回7月の2.9%もやや上回った点は、やや警戒感を残しました。ただ、6月につけたピーク3.3%よりは弱まっています。
ソフトでータと呼ばれる聞き取り調査が、総じてインフレ期待の落ち着きを示したのに続き、実績値であるハードデータもその見方を裏付ける内容となるか、CPIと同様に、より信頼度が高いPCEデフレーターの結果が注目となります。
週末発表の7月PCEコアデフレーターは前年同月比+4.7%と、小幅に切り返した6月の+4.8%(図表1)より伸びがやや鈍化すると予想されています。前月との比較だけでなく、事前予想以上に弱まった場合、米金融引き締めに関する思惑は相当程度の後退となるでしょう。
インフレの落ち着きにより米利上げペースがそれまでの想定より後退するとの見方に傾きつつあったなか、今週FRB高官からタカ派な発言が相次いだのは、足もとのインフレ指標の鈍化を受けたマーケット心理が、金融引き締め効果を弱めるリスクへの予防線かもしれません。注目のハードデータ「PCEコアデフレーター」の結果を、マーケットは固唾を飲んで待つ状態にあります。