「ドイツ総選挙」は与党が惨敗も、極右が政権へ関わる事態は回避できそうなようです。次期政権の政策運営への期待もあって、週明けはユーロ買いが先行しました。まだ不安定な為替推移ですが、マイナス成長脱出を目指すドイツ次期政権の姿がしっかり見えてくれば安定性も出てくるでしょう。
「ドイツ総選挙」政権への極右かかわり回避へ
2月23日の「ドイツ総選挙」では、最大野党会派の中道右派・キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が議席倍増となる28.5%の得票を集めて第1党となりました。そして極右・ドイツのための選択肢(AfD)が得票率20.8%となり、第2党の座についています。
ショルツ首相率いる現与党の中道左派・社会党(SPD)は第2次世界大戦以降で最低となる得票率16.4%にとどまりました。ただ、CDU党首で次期首相候補メルツ氏は、政策の方向性が大きく異なる極右AfDとの連立や閣外協力に後ろ向きであり、SPDとの連立で4月下旬のイースター前をめどに政権を発足させるとの意向のようです。
極右が政権に絡んでこないことへの安心感も生じ、週明けのアジア為替市場では早々にユーロ買いが先行。ユーロドルは1.05ドル前半へ上昇しました(図表参照)。
ドイツ経済回復期待もユーロ買い先行要因
CDU/CSUとSPDが組むとされる連立政権は、金融マーケットの動向に影響を及ぼす経済政策においては、CDU/CSUが公約で主張した法人税減税や規制緩和などを進めて、2030年をめどに2%の経済成長確保を目指す方向で動くと考えられます。
足かせとなりうる財政支出を抑える規定「債務ブレーキ」に関してCDU/CSUは堅持すると述べていたものの、「債務ブレーキ」見直しに前向きだったSPDが政権運営にかかわる見込みであることが歳出拡大への期待を高めています。
極右勢力が政権に関わる可能性が後退したということだけでなく、経済面の政策運営にとってCDU/CSUとSPDの連立が、より好ましい組み合わせだとの見方もユーロ買いを先行させた一因のようです。
ドイツはマイナス成長からの立ち上がり局面、為替まだ不安定
ただ、一本調子でユーロ買いが進む流れでもありません。週初に1.05ドル前半まで上昇したものの、すぐさま1.04ドル半ばへ下押す不安定な推移です。2年連続でマイナス成長を記録しているドイツ経済の先行きについて懸念はくすぶったままであるほか、トランプ関税がユーロ圏も含む世界経済へ悪影響を与える可能性への不安も拭いきれません。
ユーロ圏経済をけん引する主要国・ドイツに対する期待感は浮上しつつあるものの、まだ連立の姿が明確になっていないなかでは安定を欠く動きになりやすいのはしかたありません。トランプ関税が米国を中心としたインフレの押し上げにつながり、対ドルでのユーロ押し下げ要因になりやすい点など外部要因も重しとなります。
まだ不安定な動きは続きそうです。しかし、ドイツの連立体制が経済政策ほか政局運営をしっかり推し進める姿勢を確立し、フランスやイタリアなど他のユーロ圏主要国に成長面で後れを取っているギャップを埋めてくれば、通貨ユーロの推移もより安定してくると考えられます。