トランプ優位、ヘイリー撤退
3月5日、米大統領選挙の予備選挙が集中するスーパーチューズデーにおいて15州の予備選挙が行われた共和党の候補者指名争いでは、トランプ前大統領が14州で勝利しました。最有力の対抗候補だったニッキー・ヘイリー元国連大使は翌6日、同党候補者争いからの徹底を表明しています。
先がけて1日のワシントンDC予備選で勝利して期待を高め始めたヘイリー候補でしたが、スーパーチューズデーでは勝利がバーモント州だけにとどまる惨敗でした(図表参照)。大方の各州でトランプ氏の勝利が伝えられていく段階でも「まだ撤退する気はない」と発言していたヘイリー氏も、最終結果を受けて心が折れたようで、翌6日には「「選挙戦中断の時がきた」と延べました。
今回のトランプ氏の大統領選出馬の動きについて「もしトラ=もしもトランプ氏が大統領になったら」との言葉で警戒感を示す複数メディアの論調が目につきました。かつてのベストセラー「もしドラ=もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の語呂を模してキャッチーなタイトルをつけたのでしょう。
さらに「もしトラ」から、「ほぼトラ=ほぼトランプ氏が大統領に」や、「確トラ=確実にトランプ氏が大統領に」などのフレーズを用いて話を進展させ、各局面で高まっていく警戒感を指摘する向きも散見されます。
トランプ人気で懸念される「Xリスク」
トランプ氏がここまでの勝負で人気を集めた大きな要因として、移民への不満があるようです。廃校校舎だけでなく公園をつぶして移民用のシェルターを急造する対処などが行われています。トランプ前政権時代より3倍以上とされる移民の増加へ対応が追いついておらず、治安の悪化も国民の現政権への不満を高めています。
こうした状況下とあって、かつて強硬な移民対策を提唱していたトランプ氏が人気を得やすくなっているようです。物価高や税金の使いすぎも、前政権を担っていたトランプ氏が支持を集めやすくする要因のようです。物価は現政権になって2割増で、税金についてもウクライナ支援など国外向けへ多額に注ぎ込まれていることが不満を高めています。
現政権への不満を後押しに、「ほぼトラ」 「確トラ」へと事態が進展すれば、金融マーケットでは以前のこのコラムでも指摘したように、前政権下でマーケットを揺さぶることのあった当時のトランプ大統領による「(旧)ツイッター」コメントで為替が上下するリスクの高まりが懸念されます。「ツイッターリスク」改め、「Xリスク」の高まりです。
「ほぼトラ」 「確トラ」局面の「Xリスク」の高まりに注意
ただ、共和党候補になることが「ほぼトラ」 「確トラ」となっても、大統領への復帰が「ほぼトラ」「確トラ」とうまく運ぶかはまだ不確かです。根強い支持者・岩盤層の存在は心強いのですが、トランプ氏は無党派層の支持の弱さが指摘されています。バイデン現大統領とトランプ前大統領の対決となった場合は接戦が予想され、その場合に鍵を握るのは無党派層の支持をいかに集めるかなのです。
とはいえ共和党候補としての「ほぼトラ」 「確トラ」、さらに大統領復帰の「ほぼトラ」 「確トラ」の見方が強まっていけば、トランプ氏による「Xリスク」の影響を金融マーケットが強めていく確率も高まっていくでしょう。株価最高値圏、ドル高のマーケットが反転するリスクも念頭に置いて臨むべきといえます。