やってはいけないこれだけの理由

第77回「今年1年は何をやったら儲かったか・・・反省せずに来年はやってはいけない」

1年を通しての結果はどうだったか?


今年も残すところ1週間になりました。

今年はFXで儲かることはできたでしょうか?もしくは負けてしまったでしょうか?


金融機関の為替ディーラーは1年を通してどれだけ稼げたかが数字となって出てきます。

本邦勢は3月末が決算としているところが多いでしょうが、外資系は12月末が通常の決算です。

否が応でも、1年を通してどれだけ儲かったかが結果として出てきます。


損したディーラーは、おそらく翌年は契約してくれず、解雇されてしまいます。

為替ディーラー経験が一桁や十数年のディーラーは、ほぼ毎年儲かっていなかったと判断しても

間違いないと思われるほど、長い間稼ぎ続けるのは難しいものです。


このように為替ディーラーは結果がすぐに数字でも処遇でもわかりますが

個人で投資しているFXの結果は、ログを取っていない限り、証拠金の出し入れが激しければ

ざっくりとしかわからないかもしれません。


では、今年1年で一番利が乗った通貨は何だったのかを振り返ってみたいと思います。


今年1番儲かった通貨は?


今年1月3日に円から外貨に換えて、今月20日までで一番リターンが多かった通貨は下記のようになります。

ただし、通常取引ができない通貨は省いてあります。

アルゼンチンペソやハンガリアンフォリント、シンガポールドルなども除外しています。



1…メキシコペソ 24.03%

2…スイスフラン 18.89%

3…英ポンド 15.72%

4…スウェーデンクローナ 13.86%

5…ユーロ 13.67%

6…デンマーククローネ 13.38%

7…カナダドル 12.05%

8…オーストラリアドル 9.63%

9…米ドル 9.58%

10…NZドル 9.51%

がトップ10となっています。


新聞をはじめ報道は米ドル対円を報じることが多いですが、

ほかの通貨での円安がさらに進んでいました。

円安が色々な面で根強かったと言えます。


一方で、高金利として名高い

南アランドは 1.72%のリターンのみ、トルコリラは-29.59%となり、マイナスリターン。

要するにリラを買ったら3割近く損をしたわけです。


金利を加味して儲かった通貨は?


上述のリターンは為替のみのリターンですが、通常通貨を持つと金利(スワップポイント)が付きます。

この金利を含めた通貨順位は


1…メキシコペソ 39.34%

2…英ポンド 21.51%

3…スイスフラン 19.51%

4…スウェーデンクローナ 17.92%

5…ユーロ 17.47%

6…カナダドル 17.25%

7…デンマーククローネ 16.95%

8…NZドル 15.37%

9…米ドル 15.04%

10…オーストラリアドル 14.10%

が上位を占めます。



南アランドも通貨ではわずかなリターンでしたが、金利差が大きいことで10.42%のプラス。

マイナスリターンだったトルコリラも1.91%だけプラスリターンとなっています。


このように通貨のリターンと金利分を含めたリターンを比較すると

いかに日本の金利が異常に低い!ということも理解できるかと思います。


来年はどうなるか?


このような円独歩安となったと言っても過言でない1年でしたが、来年はどうなるのでしょうか?

主要国の多くはインフレが落ち着き、利下げ期待が台頭しています。

一方で、日本はインフレはとっくに2%以上を超えて進んでいます。

円安の巻き返しがあるのでしょうか?


ただし、日本の実質賃金は19カ月連続でマイナスとなっています。

給料は上がらない中で利上げをした場合は、国民はローンで苦しみ

企業も同様に資金繰りに苦しむ可能性もあります。


神田財務官は「一般論として日本に魅力がなければ(円は)下がるに決まっている」

と発言していますが、政権を担う自民党はキックバックの裏金問題が表面化するなど

政治不信も蔓延しています。


円がこの後どう動くか、円を売る・買うにしてもその相手となる通貨はどれにするのか

一年の計は元旦にあり、と言いますが

今年のこの結果を反省材料として生かして、

来年は自分も取引をしなくてはFXをやってはいけないでしょう。



この連載の一覧
第93回「スポーツ賭博もFXも①・・・バンプはやってはいけない」
第92回「毎回同じ理由で動くと思ってやってはいけない」
第91回「クロス通貨・・・どのように算出しているか知らないでやってはいけない」
第90回「FXの世界のギャンブル依存症・・・このような人はFXもやってはいけない」
第89回「カントリーリスク・・・混迷する世界情勢を知らないでやってはいけない?」
第88回「チャートポイントを信じますか?・・こんなチャート利用法はやってはいけない」
第87回「それって何の講演?・・・講演内容を知らないでやってはいけない」
第86回「タカ派ハト派を更新していますか?・・・最新の発言をアップデートしないでやってはいけない」
第84回「月のアノマリーはあるのか・・・その月の特徴を知らないでやってはいけない?」
第83回「中央銀行も変わる・・・マイナーチェンジを知らないでやってはいけない」
第82回「コンプライアンス・・・時代の移り変わりを知らずにやってはいけない」
第81回「こういう人はFXをやってはいけない③・・・利食えない人はやってはいけない」
第80回「こういう人はFXをやってはいけない②・・・損切りが遅い人はやってはいけない」
第79回「こういう人はFXをやってはいけない①・・・自分が正しいと思う人はやってはいけない」
第78回「なぜ年末は取引をやってはいけないのか・・・応当日の特殊事情」
第77回「今年1年は何をやったら儲かったか・・・反省せずに来年はやってはいけない」
第76回「昨年の値動きを忘れずにやってはいけない」
第75回「今年は今週でおしまい?・・・最後の2週間はやってはいけないこと」
第74回「実弾介入しか防げない・・・根強い円安基調でやってはいけないこと」
第73回「感謝祭相場・・・11月の特別事情を知らないでやっていけない」
第72回「要人発言を吟味しないでやってはいけないこと・・・介入は入らない?」
第71回「スイスフランの値動きを見ないで、やってはいけない」
第70回「10月の介入実績ゼロ、介入の噂だけを信じてやってはいけない」
第69回「下手な鉄砲は数撃っても当たるのか?・・・動かない相場の時は何をしてはいけないか」
第68回「中東紛争・・・過去とのFXの動きが違うことを考慮しなくてやってはいけない」
第67回「NZ総選挙を知らずにやるな・・・今日はNZドルに要注意」
第66回「米政治・次回は政府閉鎖も・・・FXも動く可能性あり」
第65回「月末は余裕がない人はやってはいけない」
第64回「ストライキ・・・舐めてはいけない経済への影響」
第63回「どうせなら格好よく言おう・・・こういえば通と思われる?」
第62回「NZ・10月総選挙・・・これを知らないでNZドルを取引してはいけない」
第61回「食料インフレ・・・国によって違うことを知らないでやってはいけない」
第60回「インフレ指標・・・これを知らずにやってはいけない」
第59回「夏枯れ相場でも手を出す3タイプのディーラー・・・やってはいけないのは?」
第58回「中銀は内容だけでなくスケジュールも異なる」
第57回「日銀?分からないときはやってはいけない・・・海外勢は理解不能」
第56回「ブラックアウト期間を知らないでやってはいけない…国によっても違う」
第54回「新聞を確かめずにやってはいけない」
第53回「スワップポイントを知らずにやってはいけない」
第52回「日銀の利上げ?・・・準備を怠らずにやってはいけない」
第51回「対ドル以外の取り引きを見ないでやってはいけない」
第50回「時間帯を知る②東京市場とは・・・これを知らずにやってはいけない」
第49回「時間帯を知る①月曜早朝取引・・・これを知らずにやってはいけない」
第48回「歴史は繰り返す・・・過去の動きを忘れてやってはいけない」
第47回「政治的な動きを知らなくてはやってはいけない」
第45回「経済指標での動きを50/50と思ってやってはいけない」
第46回「常に知識・情報をアップデートしないといけない」
第44回「銀行の融資状況を知らなくてFXをやってはいけない」
第43回「雇用・CPI等から、新たな視点に変えないでやってはいけない」
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第41回「高金利通貨は各国の状況を知らないとやってはいけない」
第40回「金融危機はまだ去っていない、最良のCEOの言葉を無視してはやってはいけない」
第39回「ドットプロットとフェドウォッチのずれを判断しないでやってはいけない」
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第36回「若者こそFX取引を・・・その1、やってはいけないでなく、やってほしい」
第35回「肌感覚を大切にしないでやってはいけない」
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第32回「ポンドドル、ポンド円の取引をやってはいけない」
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為替情報部 アナリスト

松井 隆

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットで活躍。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。 銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたって活躍。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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