今月行われた日銀政策決定会合で、7月の国債購入の減額方針が示されたのにもかかわらず
円安基調は変わっていません。
むしろ、日銀が次回会合の手札を見せてしまったことで、余程のサプライズがない限りは
7月の政策決定会合でも円買いに動きにくくなってしまったと思われます。
円安の流れが続いているとはいえ、緩やかにしか円安は進行していません。
一部では「為替介入への警戒感」などとの言葉が出てきます。
しかし、本当にそこまで介入を警戒しなくてはいけないのでしょうか?
シーリングなんて言葉に騙されてはいけない
よく聞く言葉で「シーリング」という言葉があります。
直訳すると天井ですが、具体的にはある一定の水準が天井(上値)になるという意味です。
「榊原シーリング」「黒田シーリング」などという言葉があります。
当時の財務官、日銀総裁などが、ある一定の水準を意識し、その水準を守ろうとしている
などの憶測が流れます。
確かに、スイス中銀はある一定の水準でスイスフランの動きを阻止しようとしていました。
しかし、その防戦に失敗しフラッシュクラッシュが起こったことは有名です。
では本邦でも、本当にそのように一定水準を守ろうなどの意識があるのでしょうか?
もちろん、一度上値が抑えられた水準は抵抗として意識され、その水準手前には
売りオーダーが控えたり、オプションが設定されていたりすることで一定の抑えになります。
しかし、為替当局者がそのような水準を意識して防戦するのはあまりないと思われます。
これまでも鈴木財務相、神田財務官などは「為替の具体的な水準についてはコメントしない」
と発言しているだけではなく、「特定の水準を念頭に判断していない」とも発言しています。
おそらく、これは真意でしょう。
それはイエレン米財務長官が「為替介入は過剰な動きへの対処であるべき」と述べているように
水準ではないということです。(本音と建前は別として・・・)
それなのに、シーリングなどの言葉がもてはやされるのは、市場関係者からすると
それなりに都合の良い水準であるだけと言えます。
過度の介入警戒で中長期ビューを変えてはいけない
実際にシーリングを意識するたびに、それが無意味だったことはインターバンクの
為替ディーラーの多くは理解しています。
2022年9月に為替介入が行われると、その水準145.90円が神田財務官が守ろうとし
「神田シーリング」などと市場の一部では言われていました。
しかし、ご存じのように、そのようなシーリングなどは全くなく、あっさりと更新しました。
為替介入が起きる度にシーリングを連呼し、今度は4月29日介入の160.17円を「神田シーリング」
と呼んでいる人もいます。
しかし、4月29日の動きを見ても、157円台から160円台まで急上昇したわけで
あの時は過剰な動きであったのは明白でした。放置していれば、翌日には165・170円などと
更に急騰した可能性もあり、水準よりもスピードが異常だったと言えます。
このようなシーリングと呼ばれる水準には上述のように、売りオーダー等が集まることもあり
水準として意識するのは良いでしょう。
しかしながら、この水準で為替介入が行われると思ってしまうのは危険です。
特にドル円が上昇すると思っているのに、シーリングという言葉を意識して
160円に近い水準だとドル円を買うことをためらうことは最もよくないことです。
実際に、今の水準では145円といわれが神田シーリングでドルを買うチャンスがあれば買いたいことでしょう。
同じように180円にドル円が上がった時に、160円などという水準がシーリングでも何でもなかったと
後々思う可能性もあるでしょう。
あまりにも過度の介入警戒やシーリングを意識しすぎると、相場観が狂うので、ドルブルであるのならば
介入警戒やシーリングを意識してはいけないと思います。