成功体験から抜け出し、臨機応変に対応できるか?
ドルが今後上昇すると予想することをドル・ブル、逆に下落することをドル・ベアと呼びます。
私が大学卒業後に入行した時代は、プラザ合意からまだ数年しか経っていないこともあり、ドルは売っていれば儲かるという習慣に慣れたディーラーが多くいました。
そのドル・ベアにこだわり続けたディーラーは、その後は儲からなくなり市場から退場。
一方で臨機応変に考えを変えていったディーラーはその後も長きにわたってFXの世界にいました。
これと同じようなことが、ここ最近でも目立っています。
それはアベノミクス後は円キャリートレード(円を売って・外貨を買う)をやっていれば、だいたいは儲かっていた人が多かったことで、執拗な円売りを繰り返しているFX関係者もいまだにいます。
プラザ合意の円高、アベノミクスの円安で儲かった成功体験から抜け出せないでいる人が多くいるわけです。
もっとも、為替相場において中期的、長期的のトレンドがあることで、そのトレンドをフォローすることは決して間違えてはいないでしょう。
しかし、FX市場で儲けることが出来る人は、たとえ中長期的にドルブルであっても、臨機応変に短期的にはドルロングからドルショートに切り替えられるかがもっとも重要になります。
偏った考え(バイアス)を持たないで取引ができるかが最も重要なのです。
IMMがスクエアでも偏った考えになる
今回、バイアスがかかった考えがなぜ多いと感じているかは、8月相場で円高に動いていたのにも関わらず下記のようなコメントをする人があまりにも多かったことが理由です。
それは、7月末に日銀が利上げを開始し、今後も再利上げを検討し始めたことで
商品先物取引委員会(CFTC)が投機筋の先物ポジション状況(通称IMMポジションと呼んだりします)が、ほぼ円のポジションをニュートラル(ロングでもショートでもないスクエアの状態)にしました。
それまでは、長い間大量の円ショート(円キャリートレード)を解消したわけです。
この時に、「IMMがスクエアになったので、ここからまた円を売れる余地が出た」と複数の方がコメントしているのを見かけました。
普通に考えると、その時点でIMMはブルでもなく、ベアでもないニュートラル状態にしたにも関わらず、なぜ「円を売れる余地が出た」とコメントしたのでしょうか?
それはそのコメント主が、円ベア(円キャリートレード)が正しいと偏った考えを持っているからです。
逆に考えればIMMはスクエアなのだから、「円をまだ買う余地」もあるわけなのに、バイアスがかかり過ぎているわけです。
このような発言があまりにも多く、市場が円キャリートレードから抜け出せていないということが表されたわけです。
難しいが一度ニュートラルな思考に戻し、worst-case scenarioを頭に
私も「これは下がる(上がる)!」という偏った気持ちをもって作ったポジションをなかなか切ることが出来なかったことが何度もあります。
そうでもしないとポジションを持つことさえできなくなるでしょう。
よって、ある程度アイデアをもってポジションを持つのは間違えではないです。
ただ、儲かっていない相場が続いた場合は、一度どこかで冷静になる必要があります。
その時は自分がドルロングだったら最悪ドル売りのニュースが出たらどこまで下がるだろうか?などとワースト・ケイス・シナリオ(worst-case scenario)を頭に入れて危機管理をするのが良いでしょう。
いまだに、いろいろな方が偏った考え(バイアス)を吹聴しているFXの世界ですが、惑わされてはいけません。
常にニュートラルな思考も持ち、臨機応変に動けなければ、FXでは儲けることはできないでしょう。