先月、3月の最終週は月末・期末・年度末ということもあり、為替市場は神経質な動きになりました。
その中で、一番のサプライズとなったのが南ア・ランドの上昇です。
南アでは2月の消費者物価指数(CPI)が7.0%まで再び上がり、インフレが収まらない状況でした。
市場予想もインフレ抑制のために南アフリカ準備銀行(SARB)が、25ベーシスポイント(bp)
の利上げ(7.25%から7.50%)との予想が優勢でした。
しかし、結果は予想を上回る50bpの大幅利上げとなり、政策金利は7.25%から7.75%になりました。
この決定後にランドは大きく買われました。
金利高は通貨高が基本
円のようにほとんど金利が付かない通貨を預金しておくよりも
為替レートが動かなければ
金利がつく通貨で預金をしておく方が利益を得ることはできます。
景気が良く、インフレが進むような状況であれば
金利高が通貨高になるのが基本です。
しかし、南アの国内情勢は、どのような状況なのでしょうか?
金利高だが国内情勢も知っておく
好景気が原因でインフレが起こる(よって利上げをする)場合もありますが
南アのインフレ状況が、どのような理由でインフレになっているかを知る必要があります。
結論から書きますと、南アは景気が決して良いわけではないのに、インフレになっているのが現状です。
例えば、食品とノンアルコール飲料のインフレ率(いわゆる食品インフレ)は前年比で、1月の13.4%を上回る13.6%に達しました。
貧困層が多い南ア国民にとっては、食品の高騰はまさに死活問題です。
しかも、好景気で食品価格が高騰しているわけではありません。
食品価格の原因の一つは、輸入価格の上昇があげられます。
また、南アでは電力不足で停電が繰り返されることで、冷蔵・冷凍を保つことに企業は余計な出費がかかることも食品の高騰要因です。
一般家庭は、毎日停電することで、冷凍食品などの保持が厳しくなっています。
他にも原油高・ランド安により、南アのエネルギー基準価格の上昇
物流が壊滅的な状況に陥っていることも、インフレ圧力を高めています。
また、インフレだけではありません。
失業率は若干低下したとはいえ全体で32.7%、若年層に至っては59.6%となっています。
仕事もない、食べ物も高騰、このような状況下で恐れなくてはならないのは暴動です。
実際に2021年の7月には大きな暴動が起きました。治安の乱れが懸念されます。
政治的にも、クリーンなイメージで当選したラマポーザ大統領ですが、最近はスキャンダルも取り上げられています。
圧倒的に支持率が高かった与党アフリカ民族会議(ANC)も地方では過半数を割り込む状況です。
このように、経済・治安・政治と、どれも非常に不安定な状況です。
(ほかにも細かな問題点がありますが、今回は割愛します)
そのような状況ですので、政策金利の引き上げの1週間後には、ランドの上げ幅をすべて吐き出してしまいました。
高金利通貨は各国事情をよく見て取引を
南アだけを見ても、これだけの問題を抱えています。
高金利だからその通貨を買おう、とすることには危険が孕みます。
トルコリラやメキシコペソも各国の事情が様々あります。
それぞれの国の現地情報を毎日調べるのは、よほど時間と語学力などが無いと難しいでしょう。
ただし、外国為替の情報発信のニュースサイトなどには、それらの要約したニュースの配信されます。
高金利通貨に手を付ける前に、まずは当該国の事情を調べてから取引をしないといけないと思います。