やってはいけないこれだけの理由

第103回「円安を本当に止める気があるのか・・・何が信用できるかを確かめないでやってはいけない」

円安の進行が止まりません。1986年以来の円安ということは

プラザ合意以来ということになります。


FXを取引している投資家もプラザ合意後に生まれた方が多くいることもあり

プラザ合意自体を知らない世代が増えています。


簡潔にプラザ合意とは、1985年9月に先進5カ国(G5)財務大臣・中央銀行総裁会議で

主に日本の対米貿易黒字の削減をするために円高を進行させたことです。


それ以来の円安水準でもあることで、様々な弊害が出ています。

例を挙げると輸入物価が上がり、食料品価格も跳ね上がっています。

家計に与える影響は計り知れませんが、果たして政府・財務省は

この状況を改善する気があるのか、最近は疑問に感じています。


円安を阻止する手立てがない?


ここ最近も本邦通貨当局者は

「最近の急速な円安進行に関しては深刻な懸念を有する」

「物価高は、円安を通じた輸入物価上昇を起点としている」

「急速かつ一方的な円安は望ましくない」

など、円安に対してある程度の懸念を表明しています。


その円安の流れを変えるために、今年に入っても

4月29日と5月1日(日本時間では2日早朝)に円買い介入を行っています。

しかし、為替介入は短期的には特効薬となりますが、中長期的には効力を失います。


また、6月の日銀政策決定会合で7月の同会合で、

長期国債の買い入れの減額や短期金利の引き上げを示唆したのは円安に歯止めをかけるため

と捉えた人もいます。(実際は円安が進行してしまいましたが)


このように介入も行い、利上げまで示唆したのに円安が継続していることで

もうこれ以上、円安を止める手段に枯渇しています。

要するに手詰まり状態と言えます。


実は円安放置か?200円超える円安も?


上述のように短期的な特効薬の為替介入以外では円安が止められない状況ですが

円安を政府が本気で止めないのは、実は円安を許容しつつあるのではとの声もあります。


ただし、円安で苦しむ国民がいることで、円安対策を放置すると

選挙に受からないかもしれないので、形式上は円安対策を懸念している

としているだけとの穿(うが)った考えも出てきています。



そのような考えが出てくるのは、介入という特効薬以外の円安対策を政府が率先して行わないからです。

例えば、今年に入り円安が進行した理由の一つは、新NISA(少額投資非課税制度)が始まり

外国株式で運用する投信のための外貨買い・円売りが出ています。それも「兆」規模の大量な額です。

もし、新NISAの枠に外国株式への運用を除外すれば、その分の円売りは減少するでしょう。

また、一時噂されていたレパトリ減税策なども円安の流れを抑えることが出来るかもしれません。


しかし、それらの行動は一切行わないで、口先だけで円安を止めようとするのは無理があります。

よって、選挙への影響は避けたいが、本当は円安を放置している

そして、このまま円安が進み、200円を超える円安になっても構わないのではないか

と疑いの声が出ているようです。


信用されない内閣府


このように、一部では円安放置論まで出てきたのには、政府への信用が失っているからでもあります。

先週1日に1-3月期の実質国内総生産(GDP)が発表されましたが、その内容は目を疑うものでした。

結果は前期比で改定値の-0.5%から-0.7%。前年比で-1.8%から-2.9%へと大幅に修正さたのです。


実質GDPは速報値が5月16日に発表されています。前期比-0.5%、前年比-2.0%となり

それぞれ予想よりも悪い結果になりました。

そして、改定値が6月10日発表され、前期比は変わらなかったものの、前年比は-1.8%と上方修正されました。


速報値から改定値までの間に1カ月弱あったのにもかかわらず、更に確報値では大幅に下方修正されたことは

内閣府のデータが信用できないと言っているようなものです。

ここまでの、大幅な下方修正の要因は建設統計のミスとの話になっています。



しかし、このようなミス(改ざん?)は過去にもあり、厚生労働省が発表していた毎月勤労統計などは

データを書き換えていたことも判明しています。


しかも、GDPは改定値が発表されたのが6月10日で、

そのすぐ後の13-14日には日銀政策決定会合が行われています。

もし、GDPが-2.9%まで膨らんでいた場合、政策決定会合で次回の長期国債の買い入れの減額などが

議題にさえ乗っていなかった可能性もあり、恣意的に改定値では変えなかったのではとの噂すらあります。


更なる円安に備える必要も


実際に今後も円安が進むかは未知数です。米大統領選挙でトランプ氏が返り咲けば

ドル高を阻止する可能性もあります。

ただし、このように根本的な円安対策をしない、政府発表の経済指標の信頼性が揺らいでいることもあり

更なる円安の可能性も捨てきれません。


今後は政府がどのような円安対策を行うかを見定め、本気で円安を止める気がある場合は円買いをすれば良し

これまで通り口先だけの円安懸念の場合は、更なる円安にも備える必要がありそうです。








この連載の一覧
第104回「自分が一番大事?・・・様々なことを勘繰らないでやってはいけない」
第103回「円安を本当に止める気があるのか・・・何が信用できるかを確かめないでやってはいけない」
第102回「クロス円をしっかり見ないでやってはいけない」
第101回「介入を過度に警戒してはいけない」
第100回「CPI後のFOMC、ドットプロントに織り込んだか吟味しないでやってはいけない」
第99回「南ア政局・・・これを知らないでランド取引はやってはいけない」
第98回「G7財務相・中央銀行総裁会議・・・結果を調べないでやってはいけない」
第97回「南ア総選挙、これを知らないでやってはいけない」
第96回「ラーメン3000円も高くない、自作自演の円安を知らないでやってはいけない」
第95回「利上げだけで円安が止まると思ってやってはいけない」
第94回「介入にも限界があることを知らないでやってはいけない」
第93回「スポーツ賭博もFXも①・・・バンプはやってはいけない」
第92回「毎回同じ理由で動くと思ってやってはいけない」
第91回「クロス通貨・・・どのように算出しているか知らないでやってはいけない」
第90回「FXの世界のギャンブル依存症・・・このような人はFXもやってはいけない」
第89回「カントリーリスク・・・混迷する世界情勢を知らないでやってはいけない?」
第88回「チャートポイントを信じますか?・・こんなチャート利用法はやってはいけない」
第87回「それって何の講演?・・・講演内容を知らないでやってはいけない」
第86回「タカ派ハト派を更新していますか?・・・最新の発言をアップデートしないでやってはいけない」
第84回「月のアノマリーはあるのか・・・その月の特徴を知らないでやってはいけない?」
第83回「中央銀行も変わる・・・マイナーチェンジを知らないでやってはいけない」
第82回「コンプライアンス・・・時代の移り変わりを知らずにやってはいけない」
第81回「こういう人はFXをやってはいけない③・・・利食えない人はやってはいけない」
第80回「こういう人はFXをやってはいけない②・・・損切りが遅い人はやってはいけない」
第79回「こういう人はFXをやってはいけない①・・・自分が正しいと思う人はやってはいけない」
第78回「なぜ年末は取引をやってはいけないのか・・・応当日の特殊事情」
第77回「今年1年は何をやったら儲かったか・・・反省せずに来年はやってはいけない」
第76回「昨年の値動きを忘れずにやってはいけない」
第75回「今年は今週でおしまい?・・・最後の2週間はやってはいけないこと」
第74回「実弾介入しか防げない・・・根強い円安基調でやってはいけないこと」
第73回「感謝祭相場・・・11月の特別事情を知らないでやっていけない」
第72回「要人発言を吟味しないでやってはいけないこと・・・介入は入らない?」
第71回「スイスフランの値動きを見ないで、やってはいけない」
第70回「10月の介入実績ゼロ、介入の噂だけを信じてやってはいけない」
第69回「下手な鉄砲は数撃っても当たるのか?・・・動かない相場の時は何をしてはいけないか」
第68回「中東紛争・・・過去とのFXの動きが違うことを考慮しなくてやってはいけない」
第67回「NZ総選挙を知らずにやるな・・・今日はNZドルに要注意」
第66回「米政治・次回は政府閉鎖も・・・FXも動く可能性あり」
第65回「月末は余裕がない人はやってはいけない」
第64回「ストライキ・・・舐めてはいけない経済への影響」
第63回「どうせなら格好よく言おう・・・こういえば通と思われる?」
第62回「NZ・10月総選挙・・・これを知らないでNZドルを取引してはいけない」
第61回「食料インフレ・・・国によって違うことを知らないでやってはいけない」
第60回「インフレ指標・・・これを知らずにやってはいけない」
第59回「夏枯れ相場でも手を出す3タイプのディーラー・・・やってはいけないのは?」
第58回「中銀は内容だけでなくスケジュールも異なる」
第57回「日銀?分からないときはやってはいけない・・・海外勢は理解不能」
第56回「ブラックアウト期間を知らないでやってはいけない…国によっても違う」
第54回「新聞を確かめずにやってはいけない」
第53回「スワップポイントを知らずにやってはいけない」
第52回「日銀の利上げ?・・・準備を怠らずにやってはいけない」
第51回「対ドル以外の取り引きを見ないでやってはいけない」
第50回「時間帯を知る②東京市場とは・・・これを知らずにやってはいけない」
第49回「時間帯を知る①月曜早朝取引・・・これを知らずにやってはいけない」
第48回「歴史は繰り返す・・・過去の動きを忘れてやってはいけない」
第47回「政治的な動きを知らなくてはやってはいけない」
第45回「経済指標での動きを50/50と思ってやってはいけない」
第46回「常に知識・情報をアップデートしないといけない」
第44回「銀行の融資状況を知らなくてFXをやってはいけない」
第43回「雇用・CPI等から、新たな視点に変えないでやってはいけない」
第42回「フェドウォッチを見ないでFXをやってはいけない・・・年末は95%利下げ予想」
第41回「高金利通貨は各国の状況を知らないとやってはいけない」
第40回「金融危機はまだ去っていない、最良のCEOの言葉を無視してはやってはいけない」
第39回「ドットプロットとフェドウォッチのずれを判断しないでやってはいけない」
第38回「若者こそFX取引を・・・その2、やってはいけないでなく、やってほしい」
第37回「銀行の救済問題、詳細を把握せず取引してはいけない」
第36回「若者こそFX取引を・・・その1、やってはいけないでなく、やってほしい」
第35回「肌感覚を大切にしないでやってはいけない」
第34回「タカ派・ハト派を知らずやってはいけない」
第33回「政治家の発言を吟味して取引しないといけない」
第32回「ポンドドル、ポンド円の取引をやってはいけない」
第31回「新たに注目される指標を無視してトレードをやってはいけない」
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第28回「中銀の独立性がない国の通貨はやって(買って)はいけない?」
第27回「昨年は何の通貨をやってはいけなかったか?」
第26回「提供されているヒントを無視することを、やってはいけない」
【やってはいけないこれだけの理由】第25回「重要イベント前にポジションを取ってはいけない」
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【やってはいけないこれだけの理由】第23回「スケジュールを見ないで取引をやってはいけない…先週なぜ大きく動いたか」
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【やってはいけないこれだけの理由】第13回「日銀介入に備える…その2」
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為替情報部 アナリスト

松井 隆

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットで活躍。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。 銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたって活躍。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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