インフレ率、全ての国をコア指数で見るのは間違いか?
市場の注目度が高い消費者物価指数(CPI)は総合指数が発表されますが、
他にも総合指数から、天候に左右されて振れの大きい生鮮食品を除くもの「コアインフレ率」
(酒類を除く)食料とエネルギーを除いて算出した指数を「コアコア」として発表されます。
日米などは、これらのコアやコアコアが注目度が高いですが
逆に除かれてしまう「(酒類を除く)食料インフレ率」についても注目する必要があります。
なぜならば、国によっては総消費支出のうち食料品支出の割合が全く違うからです。
国によっては総支出の半分が食品に消えていく
先日レポートで、世界105カ国の中で、総消費支出のうち食料品支出の順位が発表されました。
食料品支出が消費支出の中で少ない割合順になっていますが、下記がトップ10です。
1…米国、6.7%
2…シンガポール、8.4%
3…英国、8.7%
4…アイルランド、9.2%
5…スイス、9.9%
6…オーストラリア、10%
6…カナダ、10%
8…オーストリア、11.3%
9…フィンランド、12%
9…ドイツ、12%
他では
18…韓国、12.8%
21…台湾、13.3%
31…日本、16.7%
45…中国、20%
50…南ア、21.3%
56…メキシコ、26.2%
63…トルコ、27.3%
となっています。
なお、最下位はナイジェリアの59%です。
これを見ると、食料品価格が大幅に上昇しても米国では全体の支出の6.7%しか占めません。
多少の値上がりでも家計への痛手は限られるでしょう。
一方で、日本はその2.5倍近く家計には影響を受けるということになります。
FX取引が活発なランド(南ア)、ペソ(メキシコ)、リラ(トルコ)などの国は
米国とは比較にならないほど食料品価格の動向にインフレが影響を受けます。
もちろん、同じ国でも世帯によりエンゲル係数は違いますし
収入が高いほど食料品の支出の割合は、低く抑えることが出来るでしょう。
黒田前総裁が「家計の値上げ許容度が高まっている」と国会で発言したように
収入が高い世帯ほど食料品価格や光熱費などの上昇に無頓着なもので、インフレの痛みがわらかないでしょう。
食品インフレ上昇により他の経済指標にも影響を与える
食料品支出の割合が高いと、食品インフレが高まると他の経済指標にも大きな影響を与えます。
食品インフレが高まった場合は、国民は他のものに消費する余裕がなくなり
小売売上高などが落ち込むでしょう。
光熱費等も上昇していることで、住宅ローンを抱えている国民が
ローンを払えないリスク等も出てくるでしょう。
このように、インフレ指標を見るときには、国によっては食品支出の割合が違うことで
コアやコアコア指数では分からないこともあります。
食品支出の割合がどのような状況かを知らずに、すべての国をコアやコアコアでインフレを計るのは無理がありそうです。
インフレを比較するうえで、その国の食品インフレを知らず、コアやコアコアだけで
今後のインフレ進行や政策金利の変化を予想するのは難しく
食品支出の割合を知らずにトレードをやってはいけないと思われます。