やってはいけないこれだけの理由

第92回「毎回同じ理由で動くと思ってやってはいけない」

金利の値動きに連れることは当然だが・・・


為替の世界が金利動向に左右されるのは、おそらくどなたも理解していると思われます。

先週は米消費者物価指数(CPI)が予想を上振れたことがきっかけで

米連邦準備理事会(FRB)の利下げが遠のいたとの思惑から米金利が上昇。

ドル円もこの動きに連れて、ドル高・円売りに動きました。


しかし、日銀が先月17年ぶりに利上げに舵を切った時は、円買いにはなりませんでした。

これは、日銀がマスコミを使い、利上げを行うことを示唆していたことで

市場がすでに利上げを織り込んでしまいました。逆に利上げ発表後に円安に動いています。


神田財務官が、円安の動きは「反対方向という意味で強い違和感を持っている」

とも述べましたが、市場からすればすでに織り込んでいました。

また、日米金利差が縮小する傾向には程遠いことで、FXをやっている人からすれば

違和感や驚きを感じた人はいないでしょう。


織り込み済みを判断する


市場が織り込むか否かなどは、FXを見ているとだんだんと理解が進むと思いますが

もっとわかりやすいものでは、米金利はシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループが

発表している「フェドウオッチ」をホームページでも確認できます。



日々更新されるサイトですが、何月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で

利上げ・利下げ・据え置きなどの予想がパーセンテージであらわされます。

これ見ていると、市場が何月にどう動くか把握できます。


急に反応しなくなることもあるので要注意


上述のように日銀が利上げをしても円買いにならなかったのは、市場が織り込んでいたから

との理由で理解することが出来ます。


しかしながら、織り込んでいない場合でも、なぜか急に市場が反応しなくなることもあります。

例えば、これまでドルランドは米金利の動向に敏感に反応していました。


米金利が上昇すれば、ドル買い・ランド売りとなり、ドル円の上昇よりもドルランドの

上げ幅が大きくなる傾向があり、したがってランド円は弱含みました。

逆に米金利低下は、ドル売り・ランド買いでランド円も強含んでいました。



ところが、3月後半から米金利とドルランドの値動きが徐々に連れなくなっています。

要因の一つとしては、金先物価格が連日最高値を更新するように

南アが世界最大の生産となっているプラチナ価格も1月以来の水準まで上がったこともあります。


これまでは、ここまではプラチナ価格への反応が敏感ではなかったので

これだけが理由ではないでしょうが、米金利の動きに反応が鈍くなったのは事実です。


いつまでも同じ理由で動くわけではない


このように、相場がこれまで反応していたものが、あまり根拠もなく反応が鈍くこともあります。

その理由を問われて、様々なエコノミストや指南役がしたり顔で理由付けをするでしょう。

しかし、その方たちも本当に分かっているとは言えず、単にトレンドがそうなったということもあります。


ただ、知っておかなくてはいけないのはFXを取引するうえで

これまで動いていた理由をいつまでも信じて追いかけてはいけないということです。

FXの世界は刻々と状況が変わっていることで、これまで動いていたことで動かなくなることもあります。

逆に動かなかったのが急に敏感に反応し動くことがあります。


いつまでも同じ理由で、動くと思っているとFXでは損してしまうこともありますので

FXを同じ理由ばかりで動くと思ってやってはいけないでしょう。






この連載の一覧
第120回「いよいよ大統領選挙・・・この通貨の動向を知らないでやってはいけない」
第119回「円買いの流れを一瞬で止めた石破政権・・・今後の政局を知らないでやってはいけない」
第118回「想定為替レートを知らないでやってはいけない」
第117回「日銀には独立性がないことを知らないでやってはいけない」
第116回「ダブル石破ショック・・・今月は政治に翻弄されることを知らないでやってはいけない」
第114回「ディーラーは変わり身が早いのを知らないでやってはいけない」
第113回「FRBの2大責務…今は何を重要視しているかを知らないでやってはいけない」
第112回「バイアスがかかった考えをもってやってはいけない」
第111回「円相場を見るならアジア通貨の動きを見ないでやってはいけない」
第110回「7・8月の相場を振り返る・・・この反省を生かさないでやってはいけない」
第109回「日銀の政策決定会合の結果発表時間がなぜ定まらないのか」
第108回「日銀のパラダイムシフト2…正副総裁が市場流動性を破壊」
第107回「日銀のパラダイムシフト…これまで通りの考えでやってはいけない」
第105回「スポーツ賭博もFXも②・・・嘘が常態化する人はやってはいけない」
第104回「自分が一番大事?・・・様々なことを勘繰らないでやってはいけない」
第103回「円安を本当に止める気があるのか・・・何が信用できるかを確かめないでやってはいけない」
第102回「クロス円をしっかり見ないでやってはいけない」
第101回「介入を過度に警戒してはいけない」
第100回「CPI後のFOMC、ドットプロントに織り込んだか吟味しないでやってはいけない」
第99回「南ア政局・・・これを知らないでランド取引はやってはいけない」
第98回「G7財務相・中央銀行総裁会議・・・結果を調べないでやってはいけない」
第97回「南ア総選挙、これを知らないでやってはいけない」
第96回「ラーメン3000円も高くない、自作自演の円安を知らないでやってはいけない」
第95回「利上げだけで円安が止まると思ってやってはいけない」
第94回「介入にも限界があることを知らないでやってはいけない」
第93回「スポーツ賭博もFXも①・・・バンプはやってはいけない」
第92回「毎回同じ理由で動くと思ってやってはいけない」
第91回「クロス通貨・・・どのように算出しているか知らないでやってはいけない」
第90回「FXの世界のギャンブル依存症・・・このような人はFXもやってはいけない」
第89回「カントリーリスク・・・混迷する世界情勢を知らないでやってはいけない?」
第88回「チャートポイントを信じますか?・・こんなチャート利用法はやってはいけない」
第87回「それって何の講演?・・・講演内容を知らないでやってはいけない」
第86回「タカ派ハト派を更新していますか?・・・最新の発言をアップデートしないでやってはいけない」
第84回「月のアノマリーはあるのか・・・その月の特徴を知らないでやってはいけない?」
第83回「中央銀行も変わる・・・マイナーチェンジを知らないでやってはいけない」
第82回「コンプライアンス・・・時代の移り変わりを知らずにやってはいけない」
第81回「こういう人はFXをやってはいけない③・・・利食えない人はやってはいけない」
第80回「こういう人はFXをやってはいけない②・・・損切りが遅い人はやってはいけない」
第79回「こういう人はFXをやってはいけない①・・・自分が正しいと思う人はやってはいけない」
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第72回「要人発言を吟味しないでやってはいけないこと・・・介入は入らない?」
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第39回「ドットプロットとフェドウォッチのずれを判断しないでやってはいけない」
第38回「若者こそFX取引を・・・その2、やってはいけないでなく、やってほしい」
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第36回「若者こそFX取引を・・・その1、やってはいけないでなく、やってほしい」
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第34回「タカ派・ハト派を知らずやってはいけない」
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第32回「ポンドドル、ポンド円の取引をやってはいけない」
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為替情報部 アナリスト

松井 隆

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットで活躍。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。 銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたって活躍。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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